※27※

「初めまして、お会いできて嬉しいです。僕はマサキ。ご主人様の業務補助及び守護を使命とする従業員です。どうぞよろしくお願いします」

 少年ぽさも残る透明感のあるいい声だった。勝手にしゃべって勝手に動くことが出来る…人形? これがスキルであるなんて思えないほどリアルだ。


「ちょっと…触ってみてもいい?」

「はい。ご自由にどうぞ」

 女の子タイプにしなくてよかったと思いながら、腕や手を触ってみる。


「ちゃんと温かいのか」

「はい。体温は36度に設定してあります」

 36度に設定…触った感じ、普通の人と変わらない感じだけど…やはり人間ではないということか。ちょっとだけ触ってそのリアル感を確認したところで手を放し、元の位置まで下がる。


「ご主人様。引き続き設定をお願いします」 


 は? まだ何かやることあったっけ? と思ったら…目の前に第2の設定画面が開いたよ。ステータス画面みたいだな。


「第2形態?」

「はい。僕は初回特典としてスキルレベルが5まで解放されています。…先に従業員のレベルについてご説明いたしましょうか?」

「…頼む」


「レベル1は基本機能のSA運営に関する業務の補助を行うことが可能です。マスターとの知識共用によりスムーズに代行業務が執り行えます。念話も可能ですので、遠隔地においても支援活動が可能です」


 念話…。


「レベル2になれば転身モードの機能が追加されます。転身モードとは接客対応時の人形形態だけでなく、マスターの心のケアを目的とする愛玩形態をとることが可能になります」


「愛玩…」


「はい。こちらは別名、癒しモードとも言いまして犬、猫、鳥、妖精、ミニドラゴンなど手乗りサイズから抱っこサイズ、騎乗サイズまでお好きなものを選ぶことが可能です」


「妖精! この世界に来た初日から気になっていたあれかー!」

 驚く俺ににこっと微笑み、マサキは説明を続けた。


「レベル3になれば先ほどの転身モードをさらにグレードアップした分身モードが利用可能になります。転身モードではどちらか片方のみの姿でしかマスターの側にいられませんが、分身モードになりますと人形形態と癒し形態の両方が同時に存在出来るようになります」


「分身…」

 同時に…って、増えるのか。


「レベル4はSA運営以外の業務。マスターの身の回りのお世話、家事サポートが行えるようになります」


「ん? ということは…料理を頼んだら、手料理が食べられたりする?」

「はい。レベル1の段階でマスターの好みと過去に食されてきた料理レシピに関する知識があります。完全に一致とまでは難しいかと思いますが、ご満足いただけるレベルのものをご提供できることと思います」


 おぉー。すごい!


「レベル5になればマスターの警護機能が追加されます。具体的には結界を張ることで何者からの攻撃も受けることがなく完全に安全な日々をご提供出来るようになりました」


「結界っ!」


「実のところ…マスターがお召しになっておられる制服には防刃、防水、防汚、耐衝撃、体感調整の機能がございますし、ブーツにも防刃、防水、防汚、防臭、耐衝撃、軽量、湿度調整機能がございますが…これまで頭部に関しては無防備でした」

「…………」

「制服の帽子をご提供出来ましたら安心できたのですが、この世界では帽子を被るという文化がまだございません。従って制服の帽子は実装が見送られることとなりました」

 えーと…制服とブーツのものすごさが分かったところで…頭だけ護られていなかったから、万が一のことがあったらとても危なかった…と?


「で、でも…もう安心、ということだね?」

 結界で守ってくれちゃうと?


「はい。ご安心ください。頭上から鳥の糞が落ちてきたとしても、ご主人様に触れる前に消滅させます」

「え? 結界って…バリアを張るイメージかと思っていたけれど違うの?」

「おおむねそのイメージで間違いはないかと。汚れ、穢れ、呪いに関しては消滅という対応となります」


「………この世界には呪いがあるのか?」

「ございます」

 …怖い。きっぱり応えられると余計に怖い。


「普通に過ごしていて普通に呪われることはありませんからどうぞご安心を」

「…………」

 コメントに困るが、とにかくマサキのおかげで今後は呪われることがなくなった。うん、そういう考え方でいいよね。

 

 あのう…という感じの上目遣いで設定画面へちらっと視線を送るマサキにはっとした。


「ああ、そうだったな。第2形態の設定を頼まれていたな」

 嬉しそうににっこり微笑まれて、対応が間違っていなかったとほっとした。


「えーと…」

 猫、犬、鳥、狐に狸にフェレットにカメ? トカゲに蛇にネズミにカピバラ? 何でもあるな。妖精やミニドラゴン、ミニフェンリル、ミニアラクネ? 選択肢がありすぎだけど…やっぱり…


「猫、だよな」

 思わず呟いたらマサキがぱぁっと嬉しそうな表情をした。がすぐに申し訳なさそうに申告してきた。

「ご主人様。その…性格や気性に関してはランダムで決まっていまして、僕の性格が反映されてしまうので【忠誠心が強く、懐き度が高く、寂しがりや】の猫になってしまいますが…よろしいですか?」

 

【忠誠心が強く、懐き度が高く、寂しがりや】の猫って…まるで犬みたいな猫ってことか? 


「最高じゃないか!」

 猫好きなのに、まったく猫に好かれずに近寄ってきてもらえなかった俺にとっては最高の組み合わせだよ。


 僕みたいな性格の猫でもいいんですか! とおめめキラキラモードのマサキはどこか犬っぽい。うん、性格は自己申告通りの様だ。


「そうとなったら猫一択で…えーと…」

 猫を選ぶと次の画面の切り替わって、いろいろな種類が選択できるようになった。黒、白、三毛、ミックス…んー迷うなー。


 アメリカンショートヘアの灰×白がいいかなぁ。マサキの髪色を銀灰にクリームホワイトのメッシュにしたから、この猫が一番近い組み合わせの気がする。うん、これにしよう。


 種類を決めたら基本サイズか。

「基本から10パーセントほど大きくなったり小さくなったり出来ますが、それ以上の変化はできません」


 生まれたての幼猫。手乗りサイズは可愛くても小さすぎて怖い。基本は抱っこサイズの成猫にするかな。…デブ猫サイズまで選べるけれど、こちらはさすがに…ね。


「愛称をつけることもできますがどうされますか?」

「確かマサキと分離、じゃないや分身して同時に俺の近くにいることも可能だったよな?」

「はい!」


 分身しても元は同じ、か。


「じゃあ、猫の姿の時はサキと呼ぶことにしよう」

 愛称のところにサキと登録。人型形態の時と違って設定するのはこれだけだった。


 にゃ~♪


 可愛らしい鳴き声にハッとすると、足元にアメショーの猫がいて脚に頭をすりすりしてくるではないか!


 目の前にはマサキがいて、でも足元には猫のサキがいる。猫のサキは額に前髪のようなものがあり、それがまたマサキそっくりのメッシュが入っていて可愛い。


「さ、触ったり…だ、抱っこしてもいいか?」

「もちろんです。マスターに抱き上げてもらえたら僕も嬉しいです」


 ヤバい! 生猫だ。本当に猫をなでなでしている。しゃがんでその背に触れても嫌がられない。逃げられない。しっぽが嬉しそうに動いてる。


 犬みたいな性格の猫? 最高のご褒美じゃないか!

 抱き上げてひとしきり滑らかな手触りのサキを堪能したところで、マサキに声を掛けられた。


「ご主人様。レベルアップに伴い他にも機能が追加していますので、そちらをご紹介します」

「あ…うん。よろしく」


「SAレベルが5になり、自販機が2種類追加されました。ホットスナックと瓶入り飲料が自販機エリアに増えています」


「ホットスナックに瓶飲料…具体的に分かる?」

「本日入荷されましたのは…ホットスナックが焼き鳥のねぎま、フライドポテト、あんまん。瓶飲料はコーラー、サイダー、レモンソーダのようです」

「マジかよ!」

 俺の好きなものばかりだ!


「急いで再設置して見に行かなきゃ!」


「その件でお知らせがあります」

「…うん」


 浮足立った俺を引き留めるように、マサキの冷静な声がかかる。


「レベル5になりまして、バージョンアップが1件。追加設備が1件ございます」

 あ、はい。大人しく拝聴しましょう。


「これまで6時を過ぎてからの再設置でしか新商品の追加補充及び入れ替わりはされていませんでしたが、6時切り替えで新商品の追加補充及び入れ替わりにバージョンアップしました」

「えーと、それはつまり…再設置しなくてもいい? と」

「はい。管理人事務所内においても6時切り替えで自動更新となりました。ただしレベルアップに伴うSA設備の追加、改良につきましては今まで通り再設置の必要があります」


 つまり俺が寝ている間にも管理人事務所内はバージョンアップしたり設備が追加されたりしている、と?


「はい。今回の追加設備に関してご説明いたします…が、こちらは実際に見ていただきながらの方が理解しやすいかと思いますので、どうぞこちらへ」


 マサキの案内で寝室へ向かう。名残惜しいが、いったんサキを床に下ろしておく。


「あ、ドアが増えてる!」

「はい、ストックルームになります」


 保管庫っ! 期待を胸に寝室奥のドアを開けると、正面奥の壁面にコインロッカーのようなたくさんの扉が付いたスペースがあり、その手前に小さなテーブルセットが置いてあった。


「どうぞ、お座りください」

 すすめられて丸椅子に腰掛ける。右手側、机の端にタブレットが用意されていた。


「今後はこちらのタブレットで商品を注文したり、保管管理したりすることが出来ます」

 実際にやってみてということなのだろうと手渡されたタブレットを受け取り、電源を入れる。


「お、ここに出ているのは今日の自販機のメニュー?」

「はい。連動しております。SA内の自販機での残数は分かりませんでしたが、こちらのタブレット端末では残数も確認可能になりました」

「それは助かる。…この下に注文ってボタンがあるな」

「はい。一度につき最大30コまで注文でき、注文した商品は直接こちらのストックルームに届きます」


「おぉーー! 俺が今一番欲しかったやつだー!」

 大量仕入れ、大量保管が可能になった! 女神さま、俺の声を拾ってすぐに対応してくれたのかなー。ありがとうございます!


「ご主人様、実際に何かオーダーしていただいていいですか?」

「分かった。新商品は全部欲しい。30ずつオーダーしてみる」


 商品サンプル、というか写真そのものが掲載されているからとても分かりやすい。しかも商品説明まで書いてある。例えばネギまだと開封後の消費期限2日。未開封で1週間となっているのだ。これは販売時の説明にいい加減なことを言わずに済むから助かる。


 30と個数を入力し、注文となっているところをタップするだけなのであっという間に終わる。


「注文が終わりましたら、どうぞこちらへ」

 席を立って壁面にずらりと並んだ小扉の前へ移動する。


「まず、こちらの扉は赤、青、黄色の三色に色分けされています」

「…分かった。もしかして赤はホット、青はクール、黄色は常温?」

「その通りです。初期設定として今は同数、3×4の12の扉がありますがこれをこのように…切り替えることも可能です」


 マサキは色の横のタッチパネルを一度触れることで赤から青に切り替えて見せた。実際に俺もやってみると赤→青→黄→赤とタッチするたびに表示が変わる。

「これで中の温度設定も変わるのか」

 めちゃくちゃ簡単だ。

「でも、なんで温度管理が必要なんだ? ネギまの袋を開封しなくても1週間は温かいままなんだろ?」

 よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりにマサキの笑みが深くなる。

「こちらの保管庫から取り出さなければ…例えばここから1か月後に取り出した場合も、取り出した時から温かいまま一週間キープされるということです」

「…………」

 すげぇーな、それは…時間停止しているようなものじゃないか?

「ちなみに、保管庫内に保管できる期限は?」

 さぁ、というようにマサキも首を傾げている。

「おいおい、大丈夫か?」

「新たな情報が届きましたらお知らせしたいと思います。ですが現状でも数か月や半年ほどは大丈夫ではないでしょうか」

「…………」

「袋やカップに賞味期限が刻印されていますので、心配な時はそちらを定期的に確認すればよいかと思います」

「確かに。期限が刻印されているから、それを確認するか」

 期限切れで破棄、なんて無駄にならないように気を付けていればいいか。


「試しにねぎまを取り出してみていいか? どこに届いている?」

「中身を確認するときは、こちらを…」

 マサキが扉の模様に見えた六芒星の先端に触れると…ネギま30、の文字が中央に表示された。


「色付きになっていない場所は空きスペースということになります」

「つまり、このホット専用のロッカーには6種類が保管可能ということか」

「はい。同じ商品は同じスペースに追加されますので、一度場所を覚えてしまえば探すのも大変ではなくなると思います」

「保管の上限数はどうなっている?」

「現在は1カ所に300個になります」

「もしかして、レベル6になれば増える?」

「はい」

 1カ所で300個もあれば充分だろう。それがまだ増える可能性があるなんて…いや、すごすぎる。


「この扉の向こうに6種類、最大1800個が保管できるってことだろ。しかも、同じ仕組みの扉が12あるんだ。恐ろしい数になるな」

 思わずぶるっと身震いしたというのにマサキはどこか意味深な笑みを浮かべている。

「レベルが上がった時のお楽しみ、ですね」

「………」

 その時が楽しみでもあり…どういうことになるか予想が付かなくて怖くもあり、だ。



 なぁ~う♪

 脚にサキがすりすりしてきた。一瞬で怖さが消えたよ。


「可愛いなーサキ♪」

 思わず抱き上げてすりすり。生猫ならすかさず引っかかれるし暴れられるし、逃げていくだろうが…サキは嬉しそうにごろごろ喉を鳴らしてくれる。


 あー最高。猫の癒しで心が軽くなったよ。


 「新商品だけでなく、他にも保管したいものがありましたらタブレットでご注文下さい」

 ああ、そうだ。ひととおりストックしておきたい。


 「また、ご主人様に変わって僕が代行することも可能です。SA内で出来る業務代行はどうぞお任せ下さい」

「あーそれはすごく助かるかも。任せてもいいか?」

「はい。これまでの売れ行きデーターおよび嗜好傾向も把握済みですので人気商品は多めに、癖の強い商品はそれなりに、ストックしておきますね」


 んーさすがだ。俺と知識共有しているというありがたみを強く感じる。いちいち細かいことを言わずに任せられるのって、ホント助かるなー。


「ご主人様はどうぞお昼ご飯にしてください。まだお済みでなかったでしょう?」

 そうだった、そうだった。

 腹減ったなーと思いながら管理人事務所に戻ってきて…ランクアップに気が付いて…そこから驚くあれこれがあったんだ。


「まだ食ってなかったと思い出したら、すげー腹減ってきた」

 俺はストックルームからネギま、フライドポテトのおかずといつものおにぎり2つ、緑茶、デザート代わりのあんまんひとつを取り出して隣の寝室から…さらに隣のメインルームに移動した。


 レベルアップしたことで以前より少し広くなった管理事務所内。食後はソファに寝転がったまま猫のサキをナデナデ。

 ふわりふわりと時折猫しっぽが俺の手を撫でていく。気持ちいい。あー幸せ~。

 そんな幸せ時間を過ごしていると、マサキが戻ってきた。


 あ、ごめん。大量のストック作業を押し付けて自分だけくつろいでいた。横になっていた姿勢から座りなおす姿勢に変わると、するりとマサキが横に座ってきた。お? こっちも甘えモードか?

 性別を女の子に設定していたらあたふたするところだっただろうが、弟が甘えてきたみたいでひたすらかわいい。


「ご主人様。2つほど確認したいことがございます」

「うん、なにかな?」

「ひとつめはSAの今後の運営についての再確認になります。現在の【ダンジョン近く】が本店になりますでしょうか?」

「本店?」

「あ、失礼しました。説明が足りておりませんでした。レベルアップに伴い、従業員だけでなく支店を1つ増やすことが可能になっています」

「支店!」

「はい。ご主人様が常にいらっしゃる場所が本店という考え方が一般的ですが、機能自体には本店も支店も違いはありませんので区分上、ただ名前を別にして分かりやすくするというだけのことになります」


「マサキが人形態と猫形態に分身しているように、SAも同時に2カ所設営できるってことか」

「イメージ的にはそれに近いかと。ちなみにレベル5以降は奇数で従業員が一人増え、偶数でSAを1つ増やすことが可能になります。つまり、従業員とSAが同時に増えるのはレベル5のみとなっています」

 レベル6になったらSAの設置が1つ追加可能になって3個所同時設置出来るが、2人目の従業員が増えるのはレベル7だということだ。


「設置したSAに管理人あるいは従業員がいなくても大丈夫か?」

「もちろんです。設備の損壊など不測の事態が発生しましたら、すぐに携帯端末に通知が届きます。それから対応してもいいですし、僕に任せていただいてもかまいません」


「万が一の時は俺も対処するよ。…で、同時設置出来るならそうしておいた方が来客数と売り上げが増えるから、同時設置した方がいいってことだな」

「はい。レベルアップのためにも基本は多くの来客を獲得した方がいいです」

「じゃあ、ダンジョン前に常時設置は決定だ。とりあえず、ここを本店にして支店は…町から30分ほど離れたところに…いや、近すぎると目立ちすぎて土地の利用がどうのこうのとややこしいことになるかな」

 どう思う? その辺は。


「可能性としてはありますね。どの街道も領主の管理領域ですので一時的とはいえ、無許可営業を咎められる可能性はあります」


 やっぱり、そうか。


「しかし、公共性の高い街道の利便性が向上することを歓迎する領主もいます。道の往来が増え安全性が高まるというSAの有用性を理解し、黙認する領主もいることと思います」

 こっちからSAを設置してもいいですか? なんて馬鹿正直にお伺いに行けば…めんどくさいことになりそうだし…黙認してくれないかなーと祈る方向でいよう。


「で、確認したいことのもうひとつは?」

「はい。移動販売についてになります。ご主人様は現在、冒険者ギルドでの移動販売に2回商品を搬入していらっしゃいますよね。僕の同行をお許しいただけるなら1回の搬入で済むと思うのですが…いかがでしょう?」


「…それには前提として背負子とパン箱があとひとり分必要になるな」

「はい」

 大した出費でもないし、ツーリ爺さんに頼めばどちらもあっという間に作ってくれるはず。問題ないと言えば問題はない。


「正直、ギルドのカギを預かるっていうのは気が重いんだよな。小部屋であっても部外者の俺がいつでも入れる状態っていうのは…思いがけないトラブルに巻き込まれるリスクも可能性としてはある。マサキが一緒に荷運びと販売を手伝ってくれたらすごく助かるよ」

「はいっ。ご主人様と一緒に、頑張りますね」


「そのご主人様というのは、ちょっと慣れなくてな。名前呼びの方でもいいか?」

「ケンゴ様?」

「様、んーそうだよな、様以外はないか」

 主人と従業員の関係だからなー呼び捨てというわけにもいかないし、さんというのもなんとなく違和感がある。俺が「マサキ」と呼び捨てにするのはいいとして…


「対外的にはケンゴ様で、管理人事務所内ではご主人様でもいいですか?」

「ご主人様…呼びたいの?」

「はい! ご主人様はご主人様なので♪」


「………分かった」

 マサキを男の子にしておいてよかったー。女の子にしていたらハーレムを作りたがる男の仲間に入れられていたかも。うん。次があったら次も少年にして、それから少女にして…構成比をどちらか一方だけに偏らないようにしよう。


「明日の搬入に間に合わせたいので、さっそく箱の注文に行ってもいいですか?」

「…そうだな。まだこんな時間だし行ってくるか」

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