※25※
ツーツーリ木工店で新商品の名前の報告と、密かに冒険者にテスト使用してもらうことになったこと、さらに…明日は来られないということを伝えてさっさと逃げ……帰れなかった。
方位計の方はとりあえず完成している。といってもいい。性能テストは残っているけれどね。
だが、新商品としてアイデアだけ投げ捨てて終わりだと思っていたパーテーション、扉付きのチェスト、蓋つきの机、折りたたみ椅子が商品化したということで「見てってくれ。アドバイスをくれ」と仕事場にしばらく監禁された。
それぞれプロである職人さんたちに対して俺が何かを言うなんておこがましいと言ったのだが、これまでなかった商品のアイデアを出した俺のアドバイスがどうしても欲しかったらしい。
そしてさらなる改良のアイデアももらえたら…という貪欲な姿勢と熱意に巻き込まれて…素人のくせについつい口を出してしまう。
「ここの角は落として丸くした方が安全ですよ~」とか「この空間をそのままにしておくより簡単に筋彫りしただけでも雰囲気が変わりますよ~」とか「持ちやすいように、ここに窪みをつけると良いかもしれませんね~」とか。何様だ、と思いつつもついついアドバイスしてしまった。
そしたらすっかり帰るのが遅くなって、腹時計で帰宅した。それから夕飯を食べて風呂に入って髪を乾かしたら…おやすみなさい、だ。
で、いま翌朝6時前。いつものように起きる癖がついているのでSAを再配置するべく待機中。よし、1分過ぎた。
「どぉーん!」 と口で言いながらSAを街道脇に出す。わざと人通りの少ない地点に出し、さらには入口をロックするという念の入れよう。ははははは、誰にも邪魔はさせないぜ。
「さー、今日は何かなー」
まずはドリンクから。水+緑茶+紅茶の3種類。リンゴ+フルーツオーレ+イチゴミルクの3種類。ココナツミルク、カフェオレの2種類。うん、今日もいいのが揃っているねー。
パンは白パン、ツナマヨパンの2種類。おにぎりは角煮としらすの2種類。スープはミネストローネ、味噌汁、ほうれん草の3種類。
「だいたい一巡した感じだなー」
目新しいものはなくなってきたが、まだ食べ飽きてはいない。
大人気だったイチゴミルクの入荷を待っていた感じで嬉しかったりする。
「今日は到着するまで店開きはできないだろうからイチゴミルクは先に大量買いしておこう」
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
「もういっちょ」
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
「まだまだ…」
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
カチャ。パタン。(ささっ)パタン。
大量買いも大変だ。まとめ買いできないかなー、けっこうメンドクサイ。
待ち合わせ時間に遅れないように気を付けないとなー。おにぎりを立ち食いしつつイチゴミルクをポッケナイナイしていく。
この他にも肩掛け鞄2つを馬車に持ち込む予定だ。ひとつには私物とジュース。もうひとつにパンとジュース。幌馬車一台に何人乗れるか分からないが、乗り合わせた冒険者相手の商売ができるように準備しておく。念のためね。
「そうだ、風呂敷を使えばスープを6つ縦に積み重ねて手持ちできるかも」
みんなも朝食は食べてきているだろうが、ミネストローネを昼ご飯用に持ってきたといったら喜んでくれるに違いない。
タイムリミットと決めていた7時の15分前に町の中に転移。急いでそこから待ち合わせ場所へ。怪力スキルと駆け足スキルのおかげで多めの荷物有、なおかつ速足での移動も苦にならない。
「あ、来た来たー」
「おはよーケンゴ」
「おはよーみんな」
優秀だな、全員集合していた。と思ったら、眠そうにしながらチャチャムが手を出してきた。
「ん?」
「ケンゴさんおなか、すいたー」
「私もーお願い…」
レアニにも小銭を渡された。あーはいはい。
「そんなふたりに朗報だ。白パンとイチゴミルクがあるぞ」
イチゴミルクと聞いたふたりの目がぱっちり開いた。ええ、劇的なほどぱっちりと。ささっと動く気配に「ん?」と思ったら彼女たちの後ろにワウンが、その後ろにチャウチ、コルサと列を作っているではないか。
「ケンゴさん、早く。早くー」
はいはい。即席の販売会スタートだね。素早く、手早く代金を受け取ってパンとジュースを渡していく。
うふふふ、とご機嫌になった彼らの後方から「時間になったぞー順番に乗れよー」と御者たちの声かけが始まった。
「ケンゴ、俺たちも急ごう」
慌ただしく移動する彼らの後ろに俺も続く。コルサが代表して6人だ、と引換券のようなものを係りの男に渡している。その様子を見ていると…こっち、というようにレアニに手を引かれて俺は素直に馬車の中へ。
入ってみると真ん中に通路があり対面式になった細長い座席がある。背中側は背の中ほどまでの高さの背もたれになっていて、幌は巻き上げられた状態だ。外から見て何人、大体どんな奴が乗っているのか分かる。
隣と隣の座席が区切られているわけではない。みんなと俺を含めた6人が横並びに座ると、小柄なワウンと女の子2人が含まれるこちらは余裕があるが、対面に座っている6人組はいい年をした大人ばかりで…やや窮屈そうだ。
俺にとっては初対面の彼らであるが、コルサ達にとっては馴染みのあるよく見知った相手だったのだろう。コルサとチャウチを中心に気安い感じにあいさつを交わしていた。
さて、ここで質問です。馬車に乗ったらまずすることはなんでしょう?
答え、速やかに鞄からクッションを出し、魔力を流して膨らませ尻の下に敷くことです。
俺は2つクッションを買ったので、1つは尻の下。もうひとつは背もたれと背の間にセットした。あとは魔力を流して…お、膨らんだ膨らんだ。
「ケンゴさんもクラルーブのクッション?」
「そうだよ」
「私とレアニのはピンクなんだよ。レアなの」
「可愛いでしょ」
うん、可愛い可愛い。この世界でもピンクは女の子の好きな色なんだな。
「レアとノーマルだと何か違うの?」
「うぅん。可愛いだけ~」
「そ、それは重要だね」
それだけ、なんて言ってはいけない。可愛いは女の子にとって正義なのだ。可愛くないものは悪、とまではいかなくても価値が下がる。
幌馬車はゆっくり動き出し、門を通り過ぎる際に減速したものの呼び止められることなくそのまま素通りする。街から出ていくときは基本、ノーチェックの様だ。
町を離れてすぐに、みんながごそごそし始めた。リュックやカバンの中から取り出したのはそれぞれの朝食だ。
あー俺はもう食べてきたんだよなーと思いつつ、別腹でジュースでも飲むか。野菜ジュースを手にするとジーと向かい側から視線が飛んでくる。それはなに? と男3人組の視線が絡みつく。
あ、それ! と羨ましそうな女性3人組の視線も絡みついてくる。どうやら男女混合の6人組ではなく、男女別々の2チームだったみたいだ。
「ねぇ、そちらのひと。服は違うけれど…不思議な場所にいた人?」
俺のことをSAで見かけていたのか。そういや、3人組の中のなかの女性冒険者ひとりに見覚えがあるかも。髪の色が紺色だったので珍しいなと印象に残っていた。
「…はい。多分、そうだと思います」
冒険者ギルドで買ったローブを着ていたから最初は違和感がなかったのかも。でもコルサたちが一斉に袋入りのパンを食べて、紙パック入りのジュースを飲み始めたから…俺の正体に気が付いた、という流れかも。
「やっぱり! そうなんだ!」
「私たち、翌日も同じところに行ったのに、消えてなくなっていたから驚いたのよ」
うんうん。ごめんね。気まぐれ営業で。
男3人組だけ分かっていないが、余計は口は挟まずに聞いていることにしたのだろう。うん、分かる。わかる。女性が話しているところに割って入っていくのって勇気がいるよね。そしてコルサ達はせっせと朝食タイム続行中。急いで食べなくても、誰もとりはしないよ。…しないよ、ね?
甘くて柔らかいパンに感動したとか、飲んだことのないジュースに感激したとか口々に褒めてくれるのは嬉しいけど、ドンドン圧が重くのしかかってくる。
コルサ達だけずるいわ…という感じの圧だ。
はいはい。こんなこともあろうかと、ちゃんと鞄にパンとジュースを多めに持ってきていますよ。
「えーと、みんなが食べているものと同じで…いいですか?」
「あるの?」
「あるのね!」
「ちょうだい!」
いやー素早いこと風のごとし。
気圧されるようにしながら彼女たちにパンとジュースを売りましたとも。スマイル0円付きで。
「ケンゴさぁん、まだある?」
俺の隣に座っていたレアニが左側から聞いてきた。
「まだあったら、私も欲しいなー」
レアニの向こうからチャチャムも可愛くおねだりしてくる。
はいはい。…袖口ツンツンって、右側に座っているワウンくんも可愛いおねだりかい。はいはい待ってねー。ちゃんと多めに持ってきたよー。
口を何度も挟みたそうにしながらもタイミングがつかめなかった男性3人組。ようやく流れが落ち着いたところで「あの…」と声を掛けてきた。
「お、俺たちにも売ってもらえませんか? すごく美味しそうで…食べたいです」
一番年若い男性がかわいく聞いてくる。いや、別に可愛い子にだけ販売しているわけじゃないですよ。ロリでもゲイでもないので。 コルサやチャウチにも売っていたの見ていたでしょ?
「すみません。パンが2つにジュースが4つしか残っていないのですが、かまわないですか?」
「かまいません!」
「おい、トルーヤ! 抜け駆けはずるいぞ!」
揉めないように分け分けしてね。 俺は代金さえきっちりもらえば…うん、だから揉めないでね。
チーム仲は良かったようで男3人はきっちりパンもジュースも3人で分け合っていた。良かった、よかった。トラブルにならなくて。
3時間走ったら15分休憩。その後12時まではこのまま走り続けるのかと思っていたら…ありましたよ、プチイベントが。時々あるというハグレの魔物が街道に出てきて荷馬車を襲うというフラグ回収。
ざわっとしたのは一瞬。コルサ達も女性3人組も動かず落ち着いている…と男3人組が背中側から身を乗り出して外へ飛び出し、そのまま駆けていって…はい、終わり。
あっという間の討伐でした。いやーすごいねぇ。躊躇なく飛び出して、ザシュッからのザクザク。必要な部分だけ手に入れたら後は仲間の一人が土地魔法使いだったのか、あっという間に遺骸を埋めて処分してしまった。
そしてそんなことをしている間も馬車は止まらずに走り続けている。えーいいのー? と慌てているのは俺だけ。さっさと用事を済ませた彼らが走って戻ってきて、ぴょーんと飛び乗ってきて戻ってくるまで5分とかかってないし。
いやぁ、すごいものを見せてもらったって感じた。
感動しているのは俺だけで、御者を含めた冒険者たちが当然のことのように落ち着いて座っていたのがまた印象的だった。
「…小腹空いてきたな」
座って馬車に揺られているだけだというのに、お腹は空くよね。
チャウチがぽつりと呟き、俺の足元を指さした。
「なーケンゴ。それ昼用?」
「そのつもりで持ってきたんだけど…今がいいか?」
俺とチャウチのやり取りにチャチャムとレアニが「え?」という顔をした。
「それ、お昼用なの? お昼には出してくれないの?」
SAを出せということだろうが…そんなことしてもいいのか?
「僕も、ケンゴさんがいるからって思って何も持ってきてないです」
そうなのか?
「でも、お昼に出していたら時間かかるんじゃないか? いいのか?」
御者や他の冒険者の方にも聞いてみないと…ご迷惑になるんじゃ…というか、昼休憩がどのくらいあるかも俺は分かってない。
「馬の休憩を兼ねているから30分ほど馬車は止まるぞ」
あーそうなんだ。コルサがSAを出している時間はある、と教えてくれる。
「それなら、スープは今飲んでしまってもいいかも」
急に馬車が揺れることになったらまずい、と脚の間に挟むようにしていた風呂敷をほどいてスープをチャウチに渡す。
「俺にも…」
はいはい、コルサにも渡す。この二人以外からは声が掛からなかったので再び風呂敷に包んで…
「あのー」
「あ、はい」
「余っているようでしたらそれも売ってもらえませんか?」
3人組の男性冒険者のひとりが身を乗り出していた。
「ひとつ3メレルですけれどいいですか?」
先ほどのパンやジュースより高いよ。
「もちろんです!」
俺も俺も! と途端に声がかかる。ひとり一つずつありますから、どうぞどうぞ…。
「美味い!」
「なんだこれ!」
「美味すぎ…」
男たちがうまいうまいと騒ぐものだから御者の男が何度も振り返って見てくる。
女性3人組はこの後の昼休憩中にSAが開店すると気が付いているからか、気にしつつも羨ましげに見ることはない。
「消えた!」
「これも消えるのか!」
「こっちも消えた!」
飲み食いした後の容器が消えるところまでがワンセット。驚くのは君たちだけじゃないよ。みんな一通り経験するんだ。
何だかんだで昼休憩になるまで退屈しなかった…気がする。
*
「ケンゴさん、早く早くー」
ハイハイ、トイレを我慢していたんだね。
どぉーん! さ、行ってらっしゃい。
女の子ふたりだけでなく、SA経験者は躊躇うことなく次々と中へと入っていく。
「えっ、え?」
激しく動揺して立ち往生しているのは男3人組に御者の男。
「みなさんもよろしかったら中へどうぞ。食べ物や飲み物を販売している他に、トイレやシャワーなどの設備もあります。御者のそちらの方には馬用の水飲み場もありますのでどうぞご利用ください」
俺の言葉を聞いて、入口の案内文を読んで、また俺の顔を見て…立ちすくんでいる男たち4人がそれぞれの顔を見合わせて…
しばらく彼らに付き合っていたが先に入るか、と俺が入口ゲートをくぐるとその後をついてくるように男3人組が入ってきた。恐る恐るというように御者の男も馬を引いて馬車ごと中に入ってきた。
「幻じゃない…」
どうぞ、遠慮なく頬をつねってくださいな。
「ケンゴさぁーん!」
自販機のところから叫ぶ声がする。お嬢さん方、もうトイレは済ませたのかい?
「今行くー!」
叫び返して、急いで自販機へ走る。
「先に買っておかないとなくなったら困るー」
「慌てなくても大丈夫だ。入荷数が以前より増えているから」
「そうなの?」
「保証する」
だったら先にトイレに行くか、とチャチャムとレアニが身体の向きを変えた。俺もトイレを済ませておくか、と管理人事務所へ向かう。
さっぱりして戻ってくると俺待ちの行列が出来ていた。いや、なんで女性3人組のお姉さま方も並んでいらっしゃるの? と思ったら俺のお涙頂戴の話をチャウチがしていたらしい。
つまり、俺に現金を渡して購入することでしか俺は収入がない…というあれだ。同情していただき、またご協力いただきありがとうございます。
「俺がいないときは気にしないでくださいね」
えーとレディファーストでいいのね。まずは3人のお姉さま方から。初めて見る商品もあるだろうと味を解説しつつ好みのものを聞いていく。パンも気になるけれどおにぎりも気になるということで迷っていらっしゃる。パンは未開封だと3日。おにぎりは2日と賞味期限を伝えると、それぞれおにぎり2つにパン4つ。スープ1つにジュースが6本、紅茶1本とまとめ買いをしてくださった。ひとり目がそれだったからか、右に倣えで、セット内容は変わっても種類と数は同じ注文が来た。
29メレルなので1メレルのおつりを3回繰り返したところでコルサ達の番、なのだが年齢順の列に組み替え直っていた。
チャチャムとレアニの順番が入れ替わることはあるけれど、まずはワウン君からだね。待っている間に決めていたのか、次々と指名が入りサクサクと商品を用意。それを5人分繰り返したところで何故か男性3人組も同じルーティンに突入。
御用聞きをして商品を取り揃えて代金をもらう。この流れが3人で止まってほっとした。
御者の人は…と思ったら馬のお世話中でした。
「ケンゴさんー早く食べようよー」
はいはい。待っててくれているのね、ありがとうな。
急いでおにぎり3つと味噌汁を購入。用意されていた席に座ってみんなでランチタイム。
「ねーねー。夜はどうするの?」
「どうするかなー」
現場を知らないから何とも言えない。
「ダンジョン前広場に出してもらえたら嬉しいけど…ダメかなぁ」
「行ってみないと分からないな」
「そうかー」
ダンジョンの近くは出せないような気もする。そもそもが街道を往来する人々に飲食やトイレなどのくつろぎ施設を提供するというのがSAだから。
食べ終わったタイミングでようやく馬の世話が終わったのか御者が自販機まで来た。振り返って俺の顔を見て、また自販機を見て、俺の顔を見ている。何か説明が必要だろうかと席を立って近寄ると「あんただったのか」と言われた。
「俺はダンジョン行きの定期便の御者をやっているから普段は冒険者ギルドにいないんだが、週に1度の頻度でギルド内の仕事もしている。一度だけ、不思議なパンとジュースを買っておいたと同僚からすすめられて食べたが…ありゃ美味かった。ホントに驚くほど美味かった」
「ありがとうございます」
「それに驚いたのはそのうまさと安さだけじゃない。入れ物が消えてしまうという不思議な現象を先に聞いていなかったら腰を抜かしていたかもしれない」
ふっと笑ってしまう。
「みんな驚いて、そうなるんですよ」
「ああ、そうらしい。…で、なかなか競争が激しくて買えないと聞いていたパンとジュースだが、どこに売っているのか誰も知らなかった。売りに来てくれる男がいるってことだったが…不思議なこともあるもんだ。何もなかったはずの場所に一瞬でこんなすげぇものが現れた。そしてギルド職員のみんなが目の色変えて購入していたものがここにたっぷりある」
「ギルドに持っていける数と種類はどうしても限られますから」
「そうみたいだ。パンとジュース以外のものがこんなにもあって、パンとジュースもこんなに種類があるなんて…驚いた」
「ダンジョン近くに出店できないか検討中です…が、どなたかに許可を得てからでないと駄目でしょうかね?」
「どうなんだろうな。俺はただの御者でしかないから、向こうへ着いたら他の職員にでも聞いてみてくれ。少なくとも俺よりは頼りになる奴がいるから」
分かりましたと応えることで役に立たないという謙遜を肯定しないかと躊躇った…ので軽く頷くだけにする。会話の相槌のようにしたことで彼はさらに笑みを深くした。
「俺としては近くにこれがあったら嬉しいな。馬の世話が楽になるし、食べるものにも飲むものにも困らないだろ。ありがたい、以外の言葉はないな」
驚きつつも受け入れてもらえたようで嬉しい。みんなこんな人ばかりだといいんだが…
この日の昼休憩は予定より長くなったらしいが、誰からも文句は出なかった。俺たちの前を走っていた馬車に乗っていたやつらが利用出来ないまま先に行っちまって可愛そうだな、と誰かが言ったが…俺は聞かないフリをしておいたよ。聞き耳スキルで拾った独り言だったからな。
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