※08※

 久しぶりに寝坊して、目を覚ましたら7時を過ぎていた。しかし、みんなとの待ち合わせは9時だ。まだまだ時間の余裕はある。


 ゆっくり身支度をして、ゆっくり朝食を済ませ、トイレもしっかり済ませてから管理人事務所を出る。

 その前に…外の景色がのぞけるスコープがドアにあることに気が付いた。

 スイング式でスコープに蓋ができるようになっていたから気が付くのが遅れたのだ。


「誰もいない…この隙に……」

 素早く町へ戻ると途端に喧騒に包まれた。


 そうか。隠しモードの管理人事務所にいると外の音は聞こえないようになっているのか。それはなかの音も外に漏れないということになるのだろう。ひと安心だ。


 遠くで馬車が走る、馬のひづめのカッポカッポという音。物売りの声。往来で話す人の声。生活感にあふれていた。

 後ろを振り返り、管理人事務所を撤収する。薄く見えていたドアノブが消え、存在感がなくなった。

 元通りの倉庫の壁沿いに少し歩くと、四辻だ。


 右へ折れると朝市通り。そこを次の角まで行ってから左へ折れると、道具類や雑貨を扱う店がいくつかある。昨夜の間に下調べは済ませておいた。


 四角く浅い箱。ザルまたは籠・紐・幅広の紐。小さい袋。長さ1メートル半ぐらいの棒。そういったものがないか探しながら歩く。露天売りの古着屋があり、思わず足が止まる。


「にぃちゃん、変わった服着てんな」

 にかっと笑いかけ、話してきた店主に俺も微笑み返して答える。

「特別製なんだ。素敵な彼女の手作りさ」

 女神さまは彼女なんかじゃないが、この場合はそういうことにしておいた。


「そりゃ特別に違いねぇな。感謝しなきゃ」

「まったくだ。…ちなみに、そっちのペパーミントグリーンのシャツはいくら?」

「ぺぱ…なんだって?」

「いや、そこの薄緑色の奴だ」

 指さすことでようやく分かってくれた。


「こっちの山の半袖は全部、4メレル。長袖が5。あっちのズボンは6で、向こうの上着は7だ。数は少ないがマントもある、8だ。分けてあるから探しやすいだろ?」

 山に重ねられている時点で探しやすいとは言えない気がしたが…店主の求めている返事ではないだろう。

「ああ、分かりやすいな」

「5枚以上買ってくれたら、1枚サービスするぜ」

「なるほど…小遣いが増えたらまた来るよ」

「たのむぜ、にぃちゃん」

 愛想よく片手をあげて合図をし、店頭から離れる。


 靴は別として、4400円ほどで上から下までセットが揃うのか。案外、この世界の衣類は安いんだな。とはいえ、今の俺には半袖シャツの1枚すら買う余裕はなかったりする。

 まずは商売の準備をしないとな。


 お、果物屋発見。テントタイプの店舗か…。ん? この果物を並べている箱いいな。


「おねぇさん、ちょっと聞きたいんだけど」

「いゃだわ、こんなおばさんを捕まえておねぇさんだなんて」

 おばちゃん…いや、50過ぎのお姉さんが嬉しそうに店の奥から出てきた。


「で、なんだい?」

「この箱は売ってる? 売り物なら欲しいんだけど、どこで買える?」

「箱? 箱ってこれのことかい?」

「そうそう」

 パンやおにぎりを並べて売るのにちょうどいい。大きさといい深さといい…買えないかな。


「変わったものが欲しいんだね。これはツーツーリって木工屋で売ってるよ。場所は分かるかい?」

「ああ、多分大丈夫。ありがとう、助かった」

「いいよう。またおいでね」

 スマイルゼロ円でお互い気持ちよく手を振って別れる。

 マップで確認すると町の端にその木工屋はあった。


 ここまで行って戻ってくるとみんなとの待ち合わせに遅れるかもしれない。残念だが後回しにして、近くの店を見てみることにした。

 途中パン屋を見つけて入ってみると、見事にハード系ばかり。しかもシンプルなパンばかりで白いふわふわパンなんてどこにもない。

 値段はひとつ1メレルと安いが、それに比べると俺のところの白パン2メレルは決して高すぎるとは言えない。

 3メレルでも買う人はいるかもしれないな。一度に持ち歩いて売れる数なんてそんなに多くない。2メレルだと労力に見合わないかもしれない。しかし、高すぎると…それはそれで売れない。試食販売ができれば絶対に売れる自信はあるんだが…。


 通りをふらふら歩いていると待ち合わせの時間近くになっていた。俺は時計塔へと向かった。



「あ、来た来た」

 10分前集合したのに、すでにコルサ、ワウン、レアニの3人が揃っていた。

「おはようー」

「おはよう、ケンゴさん」

「おはよう、みんな。コルサ、昨夜はごちそうさま」

「あんなものでよかったら、いつでもどうぞ」

 ハンサム君だなコルサ。それとも、モテる男の余裕か?


「あ、来た来た」

 レアニの声に視線を追うと、水色髪兄妹が向こうから走ってくるところだった。

「おはよー」

「おまたせ、だろうが。わりぃ遅くなった」

「だぁって、髪型がなかなか決まらないんだもん」

 髪型が決まらないといっても、いつものツインポニテで変わったところはない。


「チャチャム、右側…少し歪んでいる」

「直して、直して」

 俺にはどこが歪んでいるのか分からなかったが、レアニに手直ししてもらったチャチャムは嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう、レアニ」

「どういたしまして。…自分じゃバランスが難しいよね」

「うんうん、難しい」

 可愛い女の子が楽しそうににこにこしているだけで、おじさんもにこにこしてしまいます。おっと、不審者にならないように…さりげなく視線を動かして……


「この時計台はこの町の観光名所?」

「そうそう。先代のマチェル男爵が建てたんだ」

「中にも入れるのよ」

「へーそうなのか」

「せっかくだから登ってみようぜ。上が展望フロアになっているんだ」

「展望フロアといってもかなり狭いけどね」

「3人ぐらいしかいっぺんに登れないの」

「だから、デートスポットになっているよね」

「なるほど…」

 彼と彼女とふたりきりになれる空間ということか。


 幸い入場料は必要なかった。男2人で登るのはなんだかな…ということで、チャチャムチームとレアニチームに分れた。階段をくの字に折れつつ登ると地上4階ほどの高さに展望フロアはあった。


「ね、見晴らしいいでしょ?」

「ホントだな。ここまで登る価値がある」

「あ、僕のいる孤児院はあっちの方です」

 俺はレアニとワウンの3人チームに入れてもらっていた。

「私の家は…えーと。向こうかな」

 違います。とは言えないから、そうなんだねーという緩い雰囲気で聞き流す。俺のマップさんによると別の方角を指さしていることになっています、レアニさん。


 景色をしばらく楽しみ、下でみんなと合流して。「どこへ行きたい?」とコルサに聞かれる。


「町の端の方になるんだが、ツーツーリって木工屋に行きたい」

「木工屋?」

「誰か、知ってる?」

「「知らないな」」コルサもチャウチも首を振った。


「あ、僕知ってます。孤児院の子で木工細工の仕事している子がいて…その辺に同じような店が何軒かあるって言ってたから、近くまで行って聞けばわかると思います」

 ワウン君グッジョブ! 俺が知っているとは言えなかったから助かったよ。

「へー、じゃあ案内はワウンに頼もう」

「こっちです」

 ワウン君を先頭に俺たちは歩きだす。


「ところで、ケンゴ。なにを探しているんだ?」

「パンやおにぎりを入れるための四角く浅い箱だよ。果物屋さんで使っているのを見て、聞いてみたら教えてもらえた」

「あぁ、なるほど」


「あ、ちょっと待ってくれ。そこの雑貨屋に気になるものがあった」

 何に使うのか分からないが、束になった紐が二つ折り状態でぶら下がっているのが見えた。

「あ、可愛い籠がある」

 そうだな、俺も籠は気になってた。パン箱が高くて買えなかったら、ここで籠を買ってもいいかもしれない。マッチ売りの少女じゃなく、パン売りのおっさんって…籠が少女以外は嫌だ、と泣かなきゃいいけど……。


 紐はいろいろな長さや色、太さや材質といった違いがあり、かなり迷ってしまった。だが、納得のいくいいものが買えたと思う。値段も1本2メレルから8本3メレルと太いの、細いの両方買った。

 他にも小銭入れに使えそうな袋も買えた。


「この辺みたいだな」

 店と工房兼用のところが多いのか、店先で木を削ったり細工をしている職人の姿も見られた。


「ツーツーリって木工屋、あったわ!」

 レアニが真っ先に気が付いた。

「どこ?」

「あっち! 看板が赤いの」

 レアニが指さす先には確かに赤い看板がある。しかし、文字は読めない。遠すぎて。


「あ、私にも見えたー」

 さすが、弓職というべきか。と思っていると。ワウンにも見えたらしい。彼も斥候だしな。弓に次いで目がいいみたいだ。俺? 俺は一番最後まで見えなかったよ。

 場所は一番早く知っていたんだけどね。【今いる場所】スキルさん、ありがとう。


「ああ、あった。これだ」

 店頭にいろいろなサイズの箱が無造作に積んである。値段が分からないから店の人に聞いてみようと店内に入ると、木のいい匂いがしている。


「ひとり、変わった服を着ているな。…客か?」

 暇そうに椅子に座っている爺さんがいた。


「はい。表にある箱が欲しくて…いくらですか?」

「箱か、どれのことだ? よっこらしょ」

 店番をしていたご隠居っぽい爺さんが表まで出て、応対してくれた。


「これです、これ」

「ああ、これか。3つで5メレルだ」

「3つですか」

「そう、3つだ」


 どうしよう…。かさばるものでないのなら3つ買ってもいいが、駅弁スタイルでパンを売り歩こうと思っているのだ。予備を含めても2つあればいい気がする。

「ケンゴ迷っているのか?」

「なんでしたら僕が1つ引き取りますよ? もちろんその分は僕もお金を払いますし…」

「うーん…。あ、そうだ!」

 俺は先に買っていた紐を取り出した。


「ご相談なのですが、この紐を箱に通して使いたいんです。穴を開ける加工賃を含めて、箱2つで5メレルではいかがでしょうか?」

「穴を開けるって?」

「はい。難しいですか?」

「穴ぐらい幾らでも開けてやるが…どこにどんな大きさの穴が欲しいんだ?」


 前世で見たことのある昔の映像を必死に思い出す。テレビか何かで見た映像だから、はっきりしないのだが…


「実はですね、この辺に紐を通して、その紐を首の後ろに引っ掛けて…こんな感じで物売りをしたいと思っていまして…」

「ほぅ、物売りかい」

「そうです、そうです。紐の角度は正直、どこがいいのか分からないのでご相談したいぐらいなのですが…」

「フンフンなるほどな。分かった、ちょっと待ってろ。道具をとってくる」


 爺さん自らが加工してくれるらしい。ご隠居だと思ったのは間違いではなく、やはり元職人だったのだろう。

「ケンゴ、しばらくかかりそうだから私たちその辺を見てきてもいい?」

「さっき、可愛い木彫りの人形があったの」

「あ、それなら俺も別の店に行きたい。可愛いブローチがあった」

「えっ、ブローチ? それどこにあったの?」

「いいよ、いいよ。みんな好きに見て回ってて」

 チャウチも気になるものを見つけていたのか、てんでばらばらの方角へ動き出した。この場に残ったのはワウン君だけだ。


「ワウン、君も好きな店を見に行っていいんだよ?」

「いえ…僕もケンゴさんの箱売りのことが気になるんです。もしかしたら孤児院の子たちにも出来る商売になるかもしれないし」

「ああ、なるほど…いいお兄ちゃんだ」

 売り物は何でもいい。孤児院の子たちが何を作っているのか知らないが、クッキーでも木彫りの飾りでも、箱に入るものなら何でもいいのだ。


「よし、待たせたな」

 戻ってきた爺さんは道具類を入れた前掛けをし、スツールを一つ手にしていた。

 店先にあった作業台の近くにそれを置くと、箱を取りに行く。2つを手に戻ってくると、スツールにどっかりと座った。


「話を聞いているとだな…」

 L字の定規を箱の側面にあて、素早くラインを引いていく。ちゃっちゃっと手が素早く動く。

「調節できたほうがええと思うんだ」

 あっという間に炭筆のラインが引かれた。

「あんたに合わせるんなら首に紐をかけてもらって、一番バランスのいいところを探りゃいい」

 横に10センチほどのライン。それに沿って細くくり抜かれていく。

「だが、ワシはそれじゃあ、いかんと思う」

 蚤の使い方がまた迷いがなく素早い。穴を開けずに何してんだろ? と思いつつも手際の良さに見惚れる。

 両サイドに細長い線の穴が開いた。

「ここに、これをこうして…ほれ、紐はないのか?」


「あ、あります」

 買ってきたばかりの太い紐を差し出す。

「なんだずいぶん太い紐だな」

「首に重みが掛かるので、太い方がいいんです」

「ほう、なるほど。それなら、こっちのがいいか」

 爺さんの前掛けからは何種類ものパーツが出てくる。しかも、ここは木工屋のハズなのに、金属部品が次々出てくるのだから驚いた。


「お、驚いとるな。こいつは最近出始めたばかりでな。馴染みの爺が偉そうに講釈垂れやがって、便利だから使えと押し付けてきよるんだ」

 文句を言っているのか自慢しているのか…とにかくそのお馴染みさんとは仲がよさそうで何よりだ。


「ほら、出来た」

 完成してみればこれ以上ない出来だった。紐の支点の位置を変えることができるスライド式。ストッパー付きだから途中でズレる心配もない。

「すごいです! これなら商品の重みで位置の調整が出来ますよ」


「ホント、すごくいいですね、これ。僕も欲しいです!」

「お、そうかそうか。坊主の分も作ってやるぞ。紐はあるか?」

「あー持ってないです。でも、売っていた店は知っているので、あとで買いに行きます!」


「こんなにいいものを作っていただいたなら、加工賃と部品代が必要ですね。おいくらですか?」

「いらねぇよ」

「え…でも…」と言いかけた俺の言葉を爺さんはさえぎった。


「そこの坊主が欲しがったように、これは売れる。ワシはそう判断した。だから二人の分の箱は…試作品だ。金をとったらこっちが分が悪くなる」

「えっ?」

「ほら持ってけ。そんかわり、こいつを新商品として売るのはウチだ。いいな」

 爺さん、あんたいい人だな。黙ってアイデアを盗んで売ることだって出来るのに、それを良しとしない。

「他にもいいアイデアがあるならもらうぞ。遠慮なく言え」

 はっはっはっと豪快に笑ってる。


「それでは、もうひとつ作って欲しいものがあるんですが…」

「お? なんだなんだ? 言ってみろ」

「えーと、説明するのに書く物はないですか?」

 それなら…と爺さんはその辺に転がっていた木片と炭筆を渡してくれた。


「木は後で削りゃ消せる。好きに使え」

「はい、借ります」

 俺は前世の記憶を頼りに背負子のイラストを描いた。現代でも登山をする人やキャンプをする人が愛用している。


「ワウン、これ見たことあるか?」

「なんですか、これ? 僕は見たことないです」


 よし、それならここで作ってもらわなきゃ手に入らないということだ。

「これなんですが…」

 つくりは簡単だが、背負い子は結構役に立つ。カートや台車も運搬という意味では悪くないのだろうが…この世界は石畳みや地面を踏み固めただけというところもある。フローリングのような滑りのいい道でもないと摩擦の抵抗力がかかり、引く力が余分に必要となる。やはり人力で運んでしまう方が手っ取り早くなる。


「ほぉほぉほぉ!」

「手持ちの紐はこれしかないので、これで試してもらえたら助かります」

「任せろ! すぐに作ってやるぞ!」

 だーっと店内に走って材料をかき集め、ウキウキわくわくで戻ってくると…爺さんの手はゴッドハンド張りに素早く動く。


「ケンゴさん、ケンゴさん」

 ワウン君にツンツンと袖を引かれた。なんだね、君。可愛いことするなぁ。

 親戚の子に懐かれてしまったようじゃないか。


「あれで本当に、荷物を軽く運搬出来るようになるんですか?」

「そうだよ。君たちもリュックを背負っていたよな? あれと原理は同じだよ」

「…あ! そうか。確かに肩掛けカバンに入れるよりリュックに入れて運んだ方が軽く感じます」

「だろう? そしてリュックにはリュックを超えた大きさのものは入れられない。だけど背負い子を使えば…リュックに入らない大きさのものでも運べるようになる」


「ケンゴさん…それって、狩りに行く僕たち向けの道具ってことですよね」

「冒険者だけじゃないぞ。例えば、重い石を運んだり…歩いて移動している行商人とか、とにかく重い荷物を運ぶ人には便利なアイテムだよ」

「ほぉほぉほぉ! それじゃあ、こいつはバカ売れ間違いなしだな! ほれ、出来たぞ。試してみろ」

 イラストと簡単な説明だけで、よくここまで出来たな。これがプロの職人か。


「ああ、もらった紐は結ぶのに使ったが、肩紐には心許なかったからな、手持ちの革ベルトを使ってやったぞ」

「ああ、すみません」

 確かに、あの紐では肩紐にはならない。ってか、木工屋なのにここには革のベルトもあるのか。

「革ベルトはたまたまだ。ばあさんに黙って持ってきたから、あとで謝っとく。…それより、どうだ?」


 早速背負ってみる。腕を振って動かし、軽く飛び跳ねてみた。

「ここが少しきついですね。他はいい感じです」

「おぉそうか、貸してみろ」

 細かい調節をしてもらって、無事完成した。


「ありがとうございました。期待以上の出来で驚きました」

「そうかそうか。喜んでくれりゃいい」

「それで…お願いがあるんですが」

「なんじゃ?」

「ここにいるワウン君の分と、他のメンバーたち4人の分の背負子も作っていただきたいのですが…お願いできないでしょうか? お金は払います」


「なんだそんなことか。いいぞ」

「ケンゴさん…」

「坊主の分というと、さっきのより少し小振りにした方がええな」

「3種類ほどのサイズ違いを作るといいかもしれませんね」

 大人の男用、女性用、子供用の3種類かな。


「ほぉほぉ。それはええな。そうするか」

 じいさんはワウンに確認した。

「あんたらは冒険者だったな?」

「はい、そうです。僕たち5人で『白星の矢』というパーティを組んで活動してます」

「そうか、そうか。残念だが材料がないから明日以降になるが、それでもええか?」

「ありがとうございます! お願いします!」


「ワウン、どうしたんだ…って、なんだこりゃ」

 チャウチが戻ってきた。背負子の説明をすると彼も目を輝かせた。次にリーダーのコルサも戻ってきて同じ説明をする。

「ケンゴ…俺たちの分も頼んでくれてありがとうな。金は俺たちで払う」

 分かった、とお金の支払いは任せることにした。


「しかし…重い荷物を軽く運べるようにできる道具か。すごいな」

「すごいのは俺の簡単な説明で立派な背負子を作ってくれた匠だよ」

「…匠? ワシのことか?」

「はい。素晴らしいモノづくりをしている職人の中の職人。一流の職人のことです」

「一流の職人か…はっはっはっ。そりゃええな。ワシは今後、匠と呼んでもらうことに決めたぞ」

 爺さんは上機嫌に笑った。


「「ありがとうございました」」

 最後に合流したチャウチとレアニも背負子のことを聞くと喜んだ。

 匠の爺さんは結局、俺の分も含めた6つの背負子を試作品として無料提供してくれると言ってくれた。その代わりアイデア料は払わないと言われたが…現物支給で十分だ。それほど難しいつくりではないし、爺さんの店で背負子がバカ売れし始めたらすぐに他の店でも真似をするだろう。

 人のよさそうな爺さんだから、その辺は気にしなさそうだが…。

 それに、実際に売れ始めたら一軒の生産だけでは追い付かなくなる可能性もある。


「無事買い物も終わったみたいだし、どこかで昼飯にしないか?」

「賛成。お腹すいたー」

「それだけど、良かったら町の外へ行かないか? もうしばらく我慢させてしまうけど…」

 俺がSAを設置すればランクアップした新メニューを提供できる。


「あ、いいわね!」

「ケンゴのパンやおにぎりが食えるなら、俺も我慢するぜ」

「それなら西門の方が近いし、こっちから出るか」

 入ったのとは違う門から町の外へ出る。街道をしばらく歩いて人や馬車の行き来が途切れるのを待ってからSAを設置する。


「……!」

「…相変わらずすごいよね」

「ホント、何度見てもびっくりするぜ」

「雰囲気変わったー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2026年6月9日 12:00
2026年6月10日 12:00
2026年6月11日 12:00

異世界SA ふぅみ @hitomi4

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ