第9話 英雄の影を追って
戦いが終わり、アルトはボロボロの体で座り込んでいた。
カイルとリアは、素材の回収が終わると、アルトに声をかけることもなく下山の準備を始めた。彼らにとって、今のアルトは「使い終わった道具」の点検以上の関心を引かない存在になりつつあった。
そこへ、隠れていたルカが飛び出してきた。
「アルトさん! お疲れ様です!」
「ルカ? どうしてここに……」
「見ててください。僕も、アルトさんみたいに戦えるって証明します!」
ルカの視線の先には、まだ息のあった『首狩り族』の生き残りがいた。
亜人は最後の手向けと言わんばかりに、隠し持っていた長剣を引き抜く。
「ルカ、やめろ! 君は僕とは違う!」
アルトが制止するが、高揚感に包まれたルカの耳には届かない。
「痛くない……痛くないんだ! 僕はアルトさんになるんだ!」
ルカは無防備に突っ込んだ。
亜人の長剣が、ルカの胸を深く、無情に貫いた。
「が……っ……!?」
ルカの口から溢れたのは、勇ましい叫びではなく、大量の鮮血だった。
一瞬の静寂。
ルカの脳を支配したのは、アルトが知るはずもない、焼けるような、そして命が零れ落ちるような「真実の激痛」だった。
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