第10話 間違った模倣の代償

「あ……が、は……っ! い、痛い……痛いよぉ……っ!」

 ルカが地面に崩れ落ち、のたうち回る。

 アルトは咄嗟に駆け寄り、ルカを抱き上げた。だが、ルカの傷は致命的だった。肺まで貫かれ、呼吸をするたびに血の泡が弾ける。

「ルカ! しっかりしろ、今リアが……!」

「嫌だ……痛い……熱いよぉ……アルト、さん……」

 ルカの瞳から光が消えていく。

 憧れていた英雄の腕の中で、少年は最期まで激痛に震え、涙を流し続けていた。

 アルトは、震える手でルカの体を揺さぶった。

「どうして……どうして、痛がるんだ? これくらい、すぐに治る……痛くないはずだろう?」

 アルトには分からない。

 なぜ、自分と同じように振る舞った少年が、こんなにも無残に壊れてしまったのか。

 なぜ、自分にはない「痛み」という感情が、これほどまでに人を絶望させるのか。

 背後から歩み寄ってきたリアが、冷ややかに言い放った。

「……当然でしょ。あの子は、人間だったんだから」

 リアの言葉は、鋭い刃となってアルトの「心」に突き刺さった。

 初めての感覚。

 体はどこも痛くないのに、胸の奥が、焼け付くように苦しい。

「アルト。お前があの子に『毒』を教えたんだ」

 カイルもまた、ルカの遺体を見下ろしながら、感情の消えた声で言った。

「お前のその『無痛』が、あの子の感覚を狂わせ、殺したんだよ」

 アルトは初めて、自分の特性を「呪い」だと感じた。

 ルカを殺したのは、亜人ではない。

 痛みを教えず、ただ「大丈夫だ」と笑い続けた自分自身だった。

 雪の上に横たわる少年の遺体と、血まみれで立ち尽くす「無痛の怪物」。

 アルトに憧れた少年の人生は最悪の形で幕を閉じた。

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