神無朔夜様の企画『【夏休み特別企画】書き出し縛り!「これが約束のブツだ」から始めろ!!』
約束のブツ
神無朔夜様の企画に参加させていただきました!
【夏休み特別企画】書き出し縛り!「これが約束のブツだ」から始めろ!!
https://kakuyomu.jp/user_events/2912051604790104962?order=published_at#enteredWorks
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「これが約束のブツだ」
そんな言葉と共に、ブーッブブッというLINEの着信バイブ。
目の前の男から共有された画像を確認し、わたしは重々しくうなずいた。
「確かに」
「今回もいい働きだった」
「そういう契約だったからな。当然だ」
——ふふっ、ふふふっ。
——はははっ。
どちらからともなく笑いが漏れた。
夜の倉庫でも、雨に濡れる灰色の埠頭でもない。
日曜、晴天、真っ昼間の八景島シーパラダイス。ダブルデートの真っ最中。
わたしたちは「フリーフォールで腰が抜けた」だの「歩きすぎて足が」だの色々と軟弱な理由をつけてお互いのパートナーをジュースの買い出しに行かせ、ベンチで休憩するふりをして、こうして画像の取り引きをしていた。よく考えなくても、だいぶひどい。
わたしは送ってもらったばかりの画像を開き、あらためてじっくり眺めた。
石垣島、海に立つ一本のマングローブ。凪いだ
気づいたら、ほう、と熱い吐息が一つ、漏れていた。
「この写真、大好き」
「今回もシルエットやな」
「シルエットの方が何倍も想像力が刺激されるんですよ」
「かっこよく言うとるけど、結局のところ妄想力やろ」
「そうとも言うね」
軽口を叩き合う。我が従兄殿に親友として目の前の彼を紹介されたときから、わたしたちはこんな感じだ。「高校受験頑張れ」とこっそり従兄殿の写真を共有してくれてからというもの、彼はわたしの推し活の最大の理解者であり、推し写真の専属サプライヤーだった。
『一学期の成績が学年五十位以内だったら、好きな写真を一枚』。
サプライヤー氏からは定期的に、こんな感じの指令が来た。
その瞬間、わたしの中のわたしたちが色めき立ち、ガタガタと音を立てて立ち上がる。ボヤボヤしている場合じゃないぞ
止まないシュプレヒコール。こうなるともう、だらだらしてはいられなかった。
「——僕の写真が、何だって?」
真後ろからの声に、わたしたちは飛び上がった。いつの間にか従兄殿がわたしの手元を覗き込んでいた。笑いを含んだ低い声。従兄殿は普段は菩薩のような御人だけれど、柔和な顔のまま発言が修羅になることがあるのでまったくもって油断ならない。サプライヤー氏の彼女殿も、ジュースとスナックを手に、ちょっぴりジト目でこちらを見ている。しまった、挟み撃ちだ!
「これは、その、学習支援です」
「う、うん、そう、学習支援です」
「学習支援? じゃあ次は学年二十五位以内だね」
「そ、そんな無茶な……!」
ふふふと意味深に微笑むと、二人はわたしたちを挟んでどさっとベンチに腰かける。わたしたちはさながら、特捜班と現行犯。トンカツ代わりの軽食にありつけるのは、一体いつになるだろう。
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