LOGS:イカロス1

─LOGS_DATA─

 

Time:西暦2209年9月5日

Recorder:キリアン・グラムス

Place:小惑星帯/ストーンマイナー駐屯地

 

─LOGS─


 俺は格納庫に駐機された新型機イカロスのコックピットに乗り込むと、通信ウィンドウを通して基地司令と副官の会話が聞こえてきた。

  

『基地司令、いいんですか!やつは……』

『構わん。経験も技術も申し分ない。カフェイン中毒でだらしないところが玉に瑕だが……』


 副官といい基地司令といい……ふざけんなよ!?せめて言い方ってものを考えやがれ。


 その時、突然別のウィンドウが立ち上がり報告が入る。


(発信者:ニコラ中尉)

  

『こちらA班。ニコラ・ヴァーリ中尉、出撃します!』


 ニコラ中尉。俺を信じてついてきた、数少ない後輩……そのニコラ中尉が出撃する。それを知った瞬間、俺は聞かずにはいられなかった。


「行けるのか……」

『キリアン中尉の機体が出撃できるようになるまでまだ時間があります。それまで誰かが時間を稼がないと』


 ニコラ中尉は何でもないことのようにそう言い切った。


『俺は信じてますよ、キリアン中尉。お先に戦場で、待ってます!』


……馬鹿野郎。


 とんでもねえ大馬鹿野郎だよ、お前は。


 俺は……俺はお前が命をかけるような人間じゃない。


 そう言いたかった。


 しかし言えなかった。


 口を開き、喉のところまででかかった言葉を、俺は歯を食いしばって噛み殺す。


 コックピットに向き直った俺は、ヘルメットをかぶったあと機体システムを起動する。


『オペレーティングシステム起動』

『サポートAIシステム【LAB】起動シークエンスを開始……終了』

『初めまして!私はLAB!サポートAIシステムとして、キリアン中尉を全力で支援します!よろしくね!』


 俺は、一瞬あっけにとられた。


 その合成音声は明らかに人間の女性の声を模していた。それもとても若くて、かわいらしさを強調した……アイドルのような声だった。

 

『……ヤマノ博士、あれは?』

『現場の士気を上げるマインドケアの一環です!』

『私には、あなたの趣味が行き過ぎているように見えるのだが……』


 基地司令も困惑している。


 そりゃそうだ。


 確かに今ではサポートAIの声色や性格などはパイロットの意向がある程度反映され、男性声・女性声などのオプションも選ぶことはできる。


 だがちょっと考えたらわかるように、その声と性格をアニメの中から飛び出してきたようなキャピキャピ声の女の子にしようなんてクレイジーなパイロットは俺の知る限りでは存在しない。


《クレイジー=この場面において最も適切な表現》


……とりあえず、一言だけ言わせてくれ。


 降りたい。


 俺は戦闘以前のところで早くも挫折しかけていた。

 

『キリアン中尉、君が乗るイカロスはまさにこのような小惑星帯で既存の機動兵器に対して絶対的優位性を発揮する機体だ。試験結果をもとにLABの調整ができないのが残念だが、ハードウェアとしてはすでに完成している。あとは君の技量次第だ』

「……パイロットとして可能な限りご期待に応えます」

『こちら整備班、全調整終わりました!いつでも出せます!』

『直ちに出撃シークエンスを開始しろ』


(格納庫のエレベーターが移動を始め、格納庫に直立していたイカロスはゆっくりと運ばれていく)

(機体はオート操縦で台から降り、カタパルトに固定される)


『こちらB班。キリアン・グラムス中尉、出撃します!』


(カタパルトに激しく電気がほとばしる)

(俺とイカロスは激しく火花を散らしながら宇宙空間へと飛び出していく)

(急速に近づいてくる宇宙空間)

(その先に見える一つの影)


『……中尉!キリアン中尉!』

「!その声は」

『よかった、間に合』


(爆発・閃光)


 俺は、その先の言葉を失った。


—META_DATA—

 

Logs:Mech Battler Crisis

Title:イカロス1

  

——

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