第25話「半妖の少年が、百鬼荘に、来た件」

木曜日の朝、悠真は、部屋を、片付けていた。


「おにいさん、こっちも、整える?」


ましろが、廊下から、覗いていた。


「お願いします」


「うん!」


(半妖の、少年を、迎えるための、準備)


(神代から、連絡が、あった。今日の、午後、来る)


(管理人が、客間を、空けてくれた)


(澪と紅が、お布団を、新しいものに、入れ替えてくれた)


(白音が、好きそうな、お菓子を、買ってきた)


(みつきが、年齢に合いそうな、本を、用意した)


(俺が、何を、するべきか、分からなくて、結局、廊下を、片付けることにした)


「おにいさん、緊張してる?」


「少し、緊張してます」


「なんで?」


「子どもの、世話、したことないので」


「ましろ、子どもじゃないの?」


「ましろさんは——子どもの姿の、座敷童で、たぶん、人間の子どもとは、違うので」


「ふーん」


(ましろさん、子どもの姿だが、座敷童としての、長い時間を、生きている)


(人間の半妖の、少年は、たぶん、もっと、人間らしい)


(俺、人間の、子どもの世話、本当に、したことがない)


(甥っ子も、姪っ子も、いない)


(フリーランスのエンジニアの、人生に、子どもとの、接点は、ない)


紅が、廊下を、通った。


「悠真くん、緊張してる?」


「……はい」


「ふふ」


「笑わないでください」


「可愛い」


「……」


(紅さん、こういうとき、揶揄ってくる)


(でも、楽しそうだから、まあ、いい)


澪が、玄関の方から、来た。


「……お茶、淹れた」


「ありがとうございます」


「……子ども、お茶、飲める?」


「お茶、飲めると、思います」


「……麦茶も、淹れる」


「気が利きますね」


「……念のため」


(澪さん、配慮してる)


(こういう、ところ、雪女らしくない、優しさ)


---


午後、神代が、少年を、連れて、来た。


玄関を、開けた。


神代の、隣に、男の子が、立っていた。


八歳くらい。少し、痩せていた。黒い、髪。目が、母親と同じ、猫の目。瞳孔が、縦に、細い。


男の子は、警戒した目で、悠真を、見ていた。


(警戒している)


(当然だ。知らない、家に、連れてこられて、警戒しないわけが、ない)


「岬さん」


「神代さん」


「こちら、田中、悠斗くん。八歳です」


(悠斗)


(俺と、似た、名前)


(偶然か)


「悠真です。よろしくお願いします」


悠斗が、ぷいっと、横を、向いた。


(即、無視された)


(八歳児の、洗礼)


神代が、苦笑した。


「すみません、警戒してます」


「無理もないです」


「……お母さんの、保護は、進んでいますか」


悠斗が、ぴくっと、反応した。


「お母さん、無事です」と神代が、悠斗に、言った。「大事に、保護されています」


「……いつ、会えるの」


「来週、面会ができる、予定です」


「……」


「悠斗くん、ここで、しばらく、預かってもらいます」


「……うん」


悠斗が、しぶしぶ、家の中に、入ってきた。


(声、聞けた)


("お母さん"と"うん"だけだが)


(前進だ)


---


リビングで、紅と、白音が、待っていた。


悠斗が、部屋に入った瞬間、ぴくっと、また、反応した。


「……強い」


「強い?」


「……二人とも、強い」


(半妖の、本能で、紅と白音の、強さを、感じ取っているらしい)


(八歳児が、九尾と白蛇の、強さを、見抜く)


(猫又の、感覚、すごい)


紅が、にこっと、笑った。


「悠斗くん、よろしくね」


「……」


悠斗が、後ずさった。


「……怖い」


「怖い?」


「……目」


(紅さん、目が、怖いか)


(確かに、九尾の、本気の目は、人間の子どもには、怖いかも)


「悠斗くん、紅さんは、優しい人ですよ」


「……」


「俺が、保証します」


悠斗が、悠真を、見た。


「……あなた、なんで、保証できるの」


「住んでいるから」


「……」


「ここは、安全な、家です」


悠斗が、しばらく、悠真を、見ていた。


「……うん」


(少し、落ち着いてくれた)


("あなた、なんで保証できるの"が、結構、論理的)


(八歳児、頭、いい)


白音が、ふっと、笑った。


「悠斗くん、お腹、空いた?」


「……」


「お菓子、用意したけど、食べる?」


「……食べる」


(白音さん、年上の、お姉さん力、発動)


(白蛇は、子ども、扱いがうまい)


(昔、社で、いろいろ、教えていた、と聞いた)


(その経験が、効いている)


白音が、お菓子の入った皿を、出した。


悠斗が、おそるおそる、手を、伸ばした。


「……いいの?」


「いいわよ」


悠斗が、お菓子を、口に、入れた。


しばらく、味わった。


「……おいしい」


「よかった」


(よかった)


(食べた)


(最初の、距離が、少し、縮んだ)


---


そのとき、ましろが、廊下から、入ってきた。


悠斗が、ましろを、見た。


しばらく、見ていた。


「……子ども」


「ましろです。座敷童」


悠斗が、ぴくっと、反応した。


「……座敷童」


「うん」


悠斗が、しばらく、ましろを、観察した。


「……ましろ、人間の子に、見えるけど、違う」


「分かるの?」


「うん。長い時間、生きてる」


「えへへ」


(半妖の、本能、すごい)


(ましろさんを、ちゃんと、見抜いた)


(八歳児、まじで、頭、いい)


ましろが、悠斗の、隣に、座った。


「悠斗くん、何歳?」


「八歳」


「ましろ、見た目は、七歳。中身は、もっと年上」


「……ましろの方が、年上?」


「うん。たぶん、何百年か」


「……」


「だから、敬語、使った方がいい?」


「……いい?」


「ふふ、冗談」


「……」


(ましろさん、冗談、上手くなってる)


(みつきさんから、感染してるかも)


悠斗が、少し、表情を、緩めた。


「ましろ、座敷童って、何、するの?」


「家を、守る。運を、コントロールする。家にいる人を、ちゃんと、見守る」


「……すごい」


「すごくないよ。ただ、ここに、いるだけ」


「いるだけで、すごい」


(悠斗くん、優しいことを、言う)


(八歳児の、純粋さ)


(ましろさん、嬉しそう)


「悠斗くんも、ここで、ましろみたいに、ここにいるだけで、いいんだよ」


「……いいの?」


「いい」


(ましろさんが、悠斗くんを、受け入れた)


(座敷童が、半妖の少年を、受け入れた)


(よかった)


---


夕方、悠斗が、緊張して、ぐったり、していた。


八歳児に、新しい家、新しい人、新しい妖怪、いろいろ、一気に、来た。


無理もない。


「悠斗くん、少し、休む?」


「……うん」


悠斗を、客間に、案内した。


白音が、用意してくれた、布団。


「……新しい」


「澪さんが、洗濯してくれました」


「……」


「ご飯の前まで、寝てていいですよ」


「……うん」


悠斗が、布団に、入った。


悠真が、部屋を、出ようとしたとき。


「……岬、おじさん」


(おじさん)


(俺、二十六歳で、おじさん、扱いされた)


(仕方ない、八歳児から、見れば、おじさんだ)


「はい」


「……ここ、いつまで、いられるの」


「お母さんが、戻ってくるまで」


「……お母さん、戻ってくる?」


「神代さんが、保護してくれてます。必ず、戻ってきます」


「……」


「悠斗くん、お母さん、心配?」


「……うん」


「俺も、心配です」


「……岬、おじさんも?」


「家族、ですから」


悠斗が、しばらく、悠真を、見ていた。


「……家族?」


「お母さんも、悠斗くんも、ここの、家族です」


「……まだ、来たばかり、だよ」


「来たばかりで、家族って、おかしいですか」


「……」


「俺も、来たときは、家族じゃ、なかった。でも、いつの間にか、家族になりました」


「……いつのまに?」


「分からないです」


悠斗が、少し、笑った。


(笑った)


(八歳児が、笑った)


(よかった)


「……岬おじさん、変な人」


「みんなにそう言われます」


「……」


「悠斗くん、寝る前に、何か、欲しいもの、ある?」


「……お母さん」


(…………)


「お母さんは、来週、面会できます」


「……うん」


「それまで、待てますか」


「……待てる」


「えらいですね」


「……えらい?」


「八歳で、お母さんと離れて、頑張ってるから」


「……」


悠斗が、布団の中で、目を、伏せた。


(涙、出てる)


(八歳児が、頑張って、こらえてる)


悠真が、悠斗の、頭に、そっと、手を、置いた。


「悠斗くん、頑張らなくて、いいですよ」


「……」


「お母さんが、いなくて、寂しいときは、寂しい、と言って、いいです」


「……」


「俺たち、家族なので、聞きます」


悠斗が、しばらく、じっと、して、いた。


そして、布団を、頭まで、引き上げた。


「……寂しい」


小さな声だった。


「……はい」


「……お母さんに、会いたい」


「会えます。来週」


「……」


しばらく、悠斗の、すすり泣く声が、聞こえた。


悠真は、隣に、座って、ただ、いた。


(白音さんに、教わった)


(聞いてあげる)


(聞くだけで、いい)


(八歳児にも、効く、教え)


---


夕食は、賑やかだった。


悠斗は、まだ、緊張していたが、お腹が、減っていたらしく、たくさん、食べた。


紅が、料理を、作っていた。子ども向けに、唐揚げと、コロッケ。


「悠斗くん、唐揚げ、食べる?」


「……食べる」


「いっぱい、食べていいわよ」


「……」


悠斗が、唐揚げを、ほおばった。


「……おいしい」


「よかった」


紅が、にっこり、笑った。


(紅さん、子ども、扱い、上手)


(怖がられていたのが、嘘みたい)


(料理で、心を、掴んだ)


澪も、お皿を、悠斗に、運んだ。


「……コロッケ」


「……ありがとう」


澪が、悠斗の、頭を、そっと、撫でた。


「……」


悠斗が、しばらく、固まっていた。


そして、少し、嬉しそうに、コロッケを、食べた。


(澪さん、子どもへの、接し方が、温かい)


(雪女、こういう面も、ある)


(半妖の、子どもへの、共感、もしれない)


みつきが、首を、伸ばしながら、悠斗に、話しかけた。


「悠斗くん、ご飯、おいしい?」


「……うん」


「あたし、みつき。ろくろ首」


「……ろくろ首」


「首、伸びる」


「……知ってる」


「あたしの、首、見たくない?」


「……怖くない?」


「怖くないよ」


みつきが、首を、するすると、伸ばした。


悠斗が、目を、見開いた。


「……おお」


「すごいでしょ」


「……すごい」


(みつきさん、子ども、つかんだ)


(首の、芸で)


(八歳児、結構、何でも、面白がる)


白音が、笑った。


「みつきちゃん、それ、子どもの前で、やる芸じゃ、ないわよ」


「あたし、子どもに、優しいから」


「……まあ、そうね」


(笑いの、種類が、豊富な、家)


(悠斗くん、馴染んできた)


管理人が、扇子を、開きながら、悠斗を、見ていた。


「……お前、悪くない」


「は?」


「俺の、評価だ」


「……ありがとうございます?」


「うむ」


(管理人さん、神代さんと、同じ、こと、言った)


("悪くない"が、合格の、印らしい)


---


夜、悠斗が、寝た後、悠真は、リビングに、残っていた。


紅が、お酒を、淹れてくれた。


「悠真くん、お疲れ」


「お疲れ様です」


「あの子、ちゃんと、馴染みそうね」


「ですね」


「あなた、子どもの世話、上手じゃない」


「……そうですか」


「白音に、教わったやり方、ちゃんと、応用してた」


(紅さん、見抜いてる)


("聞いてあげる"を、八歳児に、応用した)


「白音さんの、教えは、汎用性が、高いです」


「ふふ、本人に、伝えとくわ」


「やめてください」


白音も、リビングに、入ってきた。


「悠真くん、お疲れ」


「お疲れ様です」


「あの子、いい子ね」


「ですね」


「悠真くん、あの子に、特別な、想い、あるでしょ」


「特別?」


「自分と、似てる、と思ってる?」


(…………)


(白音さん、また、見抜いてる)


(俺、悠斗くんに、自分を、重ねていた)


(フリーランスで、孤独で、家がなくて、百鬼荘に、来た俺)


(半妖で、家がなくて、百鬼荘に、来た悠斗)


(似ている)


「……はい。少し、自分と、重ねていました」


「だから、あなたが、受け入れる、と決めたのね」


「……はい」


「いい判断」


「ありがとうございます」


紅が、お酒を、口に、運んだ。


「悠真くん」


「はい」


「あなた、家主、っぽくなってきたわね」


「……前にも、言われましたね」


「うん。今日は、もっと、はっきり、感じた」


「……」


「住人を、受け入れる、判断ができる、家主」


「家主は、管理人ですよ」


「形式的には、ね」


(紅さん、こだわってる)


(俺が、家主、っぽくなってきた、ということに)


(管理人さんも、そう思っている、らしい)


(俺、いつのまに、そんな立場に)


---


深夜、悠斗の、部屋から、声が、聞こえた。


「……お母さん」


(寝言?)


(涙交じりの、寝言)


悠真は、そっと、悠斗の、部屋に、入った。


悠斗が、布団の中で、丸まって、寝ていた。涙が、頬に、流れていた。


(夢、見てる)


(お母さんの、夢)


悠真は、悠斗の、隣に、座った。


そっと、悠斗の、頭を、撫でた。


「……お母さん」


悠斗が、涙を、流しながら、寝言を、続けていた。


(八歳児が、泣きながら、寝てる)


(俺、何が、できる)


(夢を、止められない)


(でも、隣にいる)


(白音さんに、教わった、聞いてあげる、を、寝てる相手にも、適用する)


しばらく、悠真は、悠斗の、隣に、座って、いた。


悠斗の、表情が、少しずつ、穏やかに、なっていった。


(少し、落ち着いた)


(夢が、変わったか)


(いい夢、見てくれ)


悠真は、そっと、部屋を、出た。


廊下に、ましろが、立っていた。


「……おにいさん」


「ましろさん、起きてたんですか」


「悠斗くんの、声、聞こえた」


「……」


「ましろ、何か、できる?」


「ましろさん、悠斗くんに、いい夢、見せられますか」


「……できる、かも」


「お願いします」


ましろが、悠斗の部屋に、入っていった。


しばらくして、戻ってきた。


「……いい夢、流した」


「ありがとうございます」


「お母さんと、ピクニックしてる夢」


「……いい夢、ですね」


「明日、悠斗くん、起きたとき、機嫌、いいと思う」


「ましろさん、頼りになります」


「えへへ」


(ましろさん、座敷童として、活躍してる)


(運コントロールだけじゃ、なくて、夢にも、影響できる)


(座敷童、奥が、深い)


---


深夜、廊下に、冷気が、来た。


澪だ。


「……澪さん」


「……うん」


「今日のログ、いきますか」


「……驚き、と、温かい気持ち、と、複雑」


「複雑?」


「……悠斗くんを、見てて、考えてしまった」


「……何を?」


澪が、しばらく、沈黙した。


「……雪女の、半妖の、子どもの、こと」


(来た)


(澪さん、また、その、話を、出した)


(前回より、深く)


「……雪女の、半妖は、生きにくい?」


「……うん。母親が、感情を、抑える、訓練を、受けても、半妖の、子どもは、訓練できない。感情が、漏れて、力が、暴発する」


「……」


「だから、雪女の、半妖は、ほとんど、長く、生きられない」


「……」


「それを、知ってて、雪女が、人間と、子どもを、作るのは、難しい」


「……」


澪が、沈黙した。


「澪さん、無理に、答えなくて、いいですが」


「……うん」


「澪さんは、半妖の子どもを、作りたい、と思っていますか」


「……」


長い、沈黙。


「……分からない」


「分からない?」


「……作りたい、と思う、こともある。でも、子どもが、苦しむ、可能性を、考えると、躊躇する」


「……」


「でも、悠斗くんを、見て、思った」


「何を?」


「……苦しむ、半妖の子どもが、いても、それを、受け入れる、家、があれば、いいんだ、と」


(…………)


(澪さん、深い、こと、言ってる)


("受け入れる、家、があれば、いい")


(百鬼荘の、こと、言ってる)


(俺、その家の、住人)


「……澪さん」


「……うん」


「俺、半妖の子ども、苦しんでも、ちゃんと、受け入れます」


「……」


「澪さんが、もし、いつか、そういう選択を、するなら、俺、応援します」


「……」


「答え、出してないのに、こんなこと、言うのは、卑怯ですが」


「……卑怯」


「すみません」


「……でも、嬉しい」


(澪さん、また、卑怯と、言いながら、嬉しい、と言う)


(雪女の、本音)


「……澪さん、おやすみなさい」


「……おやすみ」


「……ログ、ちゃんと、書いておきます」


「……うん」


澪が、廊下を、歩いていった。


(雪女との、未来の話、出てしまった)


(半年後の、答えに、また、近づいた)


(俺、答えを、出さないと、いけない)


(半年経つ前に)


---


翌朝、悠斗は、ましろの言った通り、機嫌よく、起きてきた。


「おはようございます!」


昨日とは、別人のように、元気だった。


「悠斗くん、よく眠れた?」


「……うん。お母さんの、夢、見た」


「いい夢?」


「……うん。ピクニックしてた」


(ましろさん、有言実行)


(悠斗くん、機嫌、いい)


朝食を、食べながら、悠斗は、住人と、いろいろ、話した。


澪に、コーヒーを、淹れてもらった。


紅に、料理を、教わった。


白音に、お菓子を、もらった。


みつきに、首を、見せてもらった。


ましろに、運をもらった。


管理人に、評価された。


(一日で、家族、だ)


(百鬼荘、染み込んで、くる、家)


(前にも、思ったが、本当に)


---


昼、神代から、連絡が、あった。


「岬さん、悠斗くん、馴染んでますか」


「馴染んでます」


「よかった」


「神代さん、お疲れ様です」


「……ありがとうございます」


「強硬派の、状況、どうですか」


「……三人、訴追されて、しばらく、動けません」


「よかった」


「ただ」


「ただ?」


「強硬派の、最高責任者、まだ、動いていません」


「最高責任者?」


「強硬派を、まとめている、上層部の、人物。今回の事件で、訴追されなかった」


「……」


「彼が、本格的に、動き出す、可能性が、あります」


(……)


(強硬派の、真の、ボス)


(まだ、動いていない)


(次の、戦いは、それと、になる)


「神代さん、最高責任者の、名前は」


「……まだ、お伝えできません」


「お伝えできない?」


「私の、立場上、名指しは、危険です。でも、必要なときは、伝えます」


「分かりました」


「悠真さん」


「はい」


「……今は、悠斗くんを、守ってください。それが、優先です」


「……はい」


「強硬派の、本格的な、攻撃は、当面、ない、と、思います。だから、しばらくは、平和に、過ごしてください」


「ありがとうございます」


(しばらく、平和に、過ごす)


(次の戦いの、前の、つかの間の、平和)


(よかった)


---


岬悠真、百鬼荘生活、二十五日目。


半妖の少年、悠斗が、来た。住人と、馴染んでいった。澪が、半妖の子どもについて、深い話を、してくれた。神代から、強硬派の最高責任者が、まだ動いている、と、警告された。しばらくは、平和、と、伝えられた。


それ以外は——


また、家族が、増えた。


そして、つかの間の、平和を、迎えた。


(百鬼荘、染み込んで、くる、家)


(住んでいると、家族が、増える、家)


(俺、もう、フリーランスのエンジニアだけじゃ、ないな)


(住人と、家族の、複合体)


---


*【第26話「強硬派の、最高責任者が、現れた件」に続く】*

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