NO BASEBALL, NO LIFE

 しばらく見守った後、美鈴さんは元気を取り戻して僕と一緒に外にでた。

 春の夕焼けが空を赤く包んで、熱気がわずかに残っている。


「わぁ、綺麗……」

 さっきまでの悲しみが嘘みたいに、美鈴さんは赤い空に目を輝かせる。

「試合は負けちゃいましたけど、きょうはすごくいい日です」

「それはよかった」

 僕としては野球より激しい一日だったよ。だけど、最後の最後で逆転できたみたいだ。シゲオさんの送りバントがきいたかもな。

 僕が自転車にまたぐと、美鈴さんは指先を合わせてもじもじした。


「あの速水さん。今度スタジアムに行きませんか? 一緒に野球観戦したいです」

 なんと僥倖な!

 ガッツポーズしそうになるのを抑えて、ハンドルを強く握った。

「僕も行きたいです」

「でも、本拠地は遠いんですよね。どうしたらいいでしょう?」

「僕の好きな球団はホワイトライオンズです。首都圏なので、ライガーズとの試合の日にいきましょう」

「それはいいですね!」

 美鈴さんが子どもみたいにその場で跳ねる。

 僕も嬉しくて自転車のベルを連打したくなった。

 球場デートって最高。

 まぁ……強豪球団とは相手したくないけど。


「あの……速水さん。そのときはユニフォーム準備してもいいですか?」

「はい」

「メガホンもっていていいですか?」

「はい」

「ビジター席でもいいですか?」

 どんどん要求が激しくなっていくな!

 くー! 惚れた女の子なんだ。悔しいけど条件を飲むしかない。

「もうなんでもいってください。みんなで楽しみましょう!」

 やけくそ気味にいうと、美鈴さんが満面の笑みを浮かべた。


「シゲオさん、わいたつさん、楽しみですね」

「なまたつる見れるのか?(´・ω・`)」

 野球トークをしていたせいか、現れたぞ。意外に軽くでてくるなこいつら。

 美鈴さんは嬉しそうに微笑む。

「そうですよ、雨宮選手も見れます」

「わいのぉぉぉぉぉ♡」

 夕方の空に奇妙な雄叫びが響く。

 この先、美少女に潜む奇妙なおっさんたちと過ごすことになるのか。

 野球も人生も、表と裏があるんだな……。

 そうおもいながら、上げ下げする二つのペタルをこいで帰っていった。

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