第25話:ダンジョンは、終わらせてくれない

「今すぐ帰るぞ」


俺の声に、迷いはなかった。


「え……?」


アカリが戸惑う。


「どうしたの、急に」


「説明は後だ」


「とにかく、ここはヤバい」


セラもすぐに察した。


「……何か見えたのね?」


「……ああ」


短く答える。


『また嫌な予感』

『絶対やばいやつ』


三人で、来た道を戻る。


だが――


「……おい」


「……え?」


通路の先。


「……出口、こんな遠かったか?」


明らかに、長い。


「おかしい」


セラが低く言う。


「空間が変わってる」


「……は?」


『ダンジョンあるあるきた』


「構造が書き換えられてる」


アカリの声も緊張している。


「そんなの、あり得るの?」


「普通はない」


一瞬の間。


「でも、ここは普通じゃない」


「……だよな」


その時。


――ゴゴゴゴゴ


地面が、揺れる。


「またかよ……!」


振り返る。


そこにいたのは――


さっき消えたはずの魔物。


だが。


「……なんだ、それ」


姿が、違う。


黒い霧に包まれた体。

歪んだ形。


そして――


「……目、増えてるぞ」


『キモすぎるwww』

『進化してる!?』


「……あれ、同一個体じゃない」


セラが分析する。


「変質してる」


「つまり?」


「“進化”」


「……は?」


最悪だ。


「しかも」


セラが続ける。


「あれ、さっきより強い」


「……マジかよ」


『詰みでは?』


その時。


「――見つけた」


声。


「……っ!」


魔物の口が、動く。


「お前だ」


「……は?」


『しゃべった!?!?』


「お前だ」


繰り返す。


「……誰に言ってる」


分かってる。


だが、聞かずにいられない。


「お前だ」


魔物の全ての目が、俺を見る。


「……っ!」


嫌な感覚。


「やっと、見つけた」


「……何をだ」


「器」


「……は?」


理解できない。


「お前」


一歩、近づいてくる。


「それ、持ってるだろ」


「……」


“それ”。


思い当たるのは、一つ。


「……《運命改変》か」


その瞬間。


「――それだ」


魔物が、笑った。


『うわあああああ』

『完全に狙われてる』


「……やっぱりか」


セラが低く言う。


「ただの魔物じゃない」


「何だよ、あれ」


「……多分」


一瞬の間。


「“ダンジョンそのもの”に近い存在」


「……は?」


「この空間の意思みたいなものよ」


「……」


理解が追いつかない。


だが。


「つまり」


ナイフを握る。


「倒さないと、出られないってことだな」


「……そうなるわね」


アカリも構える。


「やるしかない」


「私も」


セラも並ぶ。


だが――


「……いや」


俺は、一歩前に出る。


「今回は、俺がやる」


「ちょっと!?」


アカリが止める。


「さっきの状態で!?」


「分かってる」


だが。


「こいつ、“俺狙い”だ」


「……」


確かに。


「なら、俺が引き受ける」


「でも――」


「大丈夫だ」


少しだけ笑う。


「今度は、ちゃんとやる」


「……」


アカリが、少しだけ迷う。


そして。


「……無茶したら止める」


「頼む」


セラも頷く。


「死なないで」


「善処する」


『軽すぎるwww』


魔物が、口を開く。


「来い」


「……行くぞ」


構える。


だが――


その瞬間。


【警告】


「……?」


初めての表示。


【ダンジョン異常進化】


【ボス個体:変異進行中】


「……おい」


嫌な予感しかしない。


魔物の体が、膨れ上がる。


「まだ強くなるのかよ」


『やばすぎるだろwww』


そして――


「――歓迎する」


低い声。


「運命を持つ者」


完全に、“敵”として認識された。


「……上等だ」


ナイフを構える。


「ぶっ壊してやる」


次の瞬間。


戦いが、始まった。

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