第24話:消えたのは、“誰”だ

「やめろおおおおおお!!」


叫ぶ。


だが――


止まらない。


【《運命改変(バグ)》発動中】


視界が、歪む。


世界が、ねじれる。


「ユウマ!?」


目の前にいるのは――


アカリ。


「……っ!!」


“消えろ”


その命令が、現実になろうとする。


「――違う!!」


必死に、意識を叩き込む。


「消すな!!」


「止まれ!!」


「やめろ!!」


頭が割れるように痛む。


「ぐあああああああ!!」


『やばいやばいやばい』

『止まれ止まれ止まれ』


「ユウマ!!」


アカリが叫ぶ。


それでも、逃げない。


「……っ」


その姿が、視界に焼き付く。


「……なんで」


なんで、逃げない。


「ユウマ」


まっすぐ、見てくる。


「信じてるから」


「……っ!!」


その一言で。


何かが、弾けた。


「――止まれぇぇぇぇぇぇぇ!!」


意識を、ねじ込む。


その瞬間。


――パキン


何かが、壊れる音。


【スキル強制停止】


「……はぁ……はぁ……」


膝をつく。


「……っ」


顔を上げる。


「……アカリ」


そこには――


「……いる」


無事な姿。


「……よかった……」


全身の力が抜ける。


『セーフ!?!?』

『助かったあああああ』


「ユウマ……」


アカリが、震えた声で近づく。


だが。


ピタッと、止まった。


「……」


その距離。


ほんの少し。


でも――


決して近づかない距離。


「……大丈夫?」


「……ああ」


短く答える。


だが。


「……」


さっきまでと、違う。


明らかに。


「……ごめん」


思わず、口に出た。


「……」


アカリは、少しだけ目を伏せる。


「……怖かった」


小さな声。


「でも」


顔を上げる。


「止めてくれた」


「……」


「だから、大丈夫」


そう言って、少しだけ笑う。


だが――


その笑顔は。


前と同じじゃない。


「……」


胸が、痛む。


その時。


「……一つ、いいかしら」


セラが静かに言う。


「……なんだ」


「さっき、“何か壊れた”わよね?」


「……」


思い出す。


あの音。


「……ああ」


ステータスを開く。


【固有スキル:《運命改変(バグ)》】


その表示の下に。


【使用制限:大】


「……制限?」


『弱体化きた?』


「使いすぎた反動ね」


セラが分析する。


「完全な制御ができていない状態での発動」


「その結果――」


一瞬、間。


「スキルが“自分を守るために制限した”」


「……なるほどな」


納得する。


「しばらくは、連発できないってことか」


「ええ」


「むしろ、その方がいい」


セラは真剣な目で言う。


「今のあなたには、危険すぎる」


「……」


その通りだ。


「……帰るか」


小さく呟く。


「今日は、もう十分だろ」


「……そうね」


アカリも頷く。


だが。


帰るために、振り返った時。


「……あれ?」


セラが、違和感を口にする。


「どうした?」


「……一体、足りない」


「……は?」


振り返る。


さっきまで倒れていたはずの魔物。


その中の一体が――


「……消えてる?」


『え?』

『嫌な予感しかしない』


「……おい」


背筋が、ゾワッとする。


その瞬間。


――ピィィィン


あの感覚。


「……っ!」


“見えた”。


一瞬だけ。


影。


そして――


こちらを見て、笑う“何か”。


「……」


「ユウマ?」


「……帰るぞ」


「え?」


「今すぐだ」


直感が告げている。


「ここ、まだ終わってない」

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