第19話:自分との戦いは、チートすぎる

「――行くぞ」


次の瞬間。


消えた。


「……っ!」


目の前から、“俺”が消える。


『速すぎる!?』

『見えねぇ!!』


「後ろだ」


声。


反射的に振り向く。


――ガキィン!!


ナイフ同士がぶつかる。


「……やっぱりな」


目の前にいるのは、“俺”。


「読めるだろ?」


そいつが笑う。


「お前の動きは、全部」


「……だろうな」


当然だ。


同じスキル。

同じ思考。


「つまり――」


距離を取る。


「普通にやったら、決着つかねぇな」


「正解」


そいつは楽しそうに言う。


「だから面白い」


『神バトルきたああああ』


一瞬の静寂。


そして同時に――


【スキル発動:《確率支配(バグ)》】

【《確率強化(バグ)》同時発動】


「……やっぱ使うか」


「当然だろ」


空気が変わる。


世界が、“確定”する。


だが――


「……おい」


違和感。


未来が、“二つある”。


「気づいたか?」


そいつが笑う。


「俺も同じことしてるからな」


「……なるほどな」


『どういうこと!?』

『未来が分岐してる!?』


「つまり」


俺は息を吐く。


「“どっちも当たる未来”が存在してる」


「そういうことだ」


そいつは軽く構える。


「だから――」


一瞬の間。


「運命の取り合いだ」


「……」


笑うしかない。


「ほんと、クソゲーだな」


「だろ?」


次の瞬間。


踏み込む。


同時。


回避。


攻撃。


――ガキィィン!!


完全に同時。


『互角すぎるwww』


「チッ」


「おっと」


再び衝突。


斬撃が交差する。


だが――


「……埒が明かねぇな」


「同感だ」


一瞬、距離を取る。


「なあ」


そいつが言う。


「一つ、聞いていいか?」


「なんだ」


「なんで、捨てない?」


「……何を」


「全部だ」


そいつの目が、鋭くなる。


「アカリも」


「セラも」


「全部捨てれば――」


「もっと強くなれる」


「……」


『またその話か』


「なんでだよ」


そいつは、本気で分からない顔をしている。


「邪魔だろ?」


「……」


少しだけ、考える。


そして。


「……邪魔じゃねぇよ」


「は?」


「むしろ逆だ」


ナイフを構える。


「いるから、強くなれる」


「……」


一瞬の沈黙。


そして。


「……くだらねぇな」


そいつは笑った。


「感情論か」


「そうだよ」


即答。


「それで十分だ」


「……」


そいつの目が、少しだけ細くなる。


「……やっぱり」


小さく呟く。


「気に入らねぇな」


「そりゃどうも」


次の瞬間。


「終わらせるぞ」


空気が変わる。


明らかに、今までと違う圧。


「……来るな」


直感が告げる。


「俺はもう――」


そいつが、笑う。


「その先に行ってる」


【スキル発動:《運命改変(バグ)》】


「……っ!?」


世界が、歪む。


「なっ……!?」


未来が――


“消えた”。


『え!?!?!?』

『どういうこと!?』


「これが」


そいつが、ゆっくり言う。


「“運命改変”だ」


「……」


理解する。


これは。


「……ズルすぎるだろ」


「だろ?」


笑う。


「だから勝つのは、俺だ」


その瞬間。


そいつが消えた。


「……っ!!」


見えない。


読めない。


未来が、ない。


「終わりだ」


声だけが聞こえる。


そして――

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