第5話:バズった代償、全部まとめて来ました

「……20万?」


ダンジョンの壁に寄りかかりながら、俺は呟いた。


同時視聴者数:203,481


「いや、多すぎだろ……」


つい数時間前まで無職だった男の配信に、

今や20万人以上が集まっている。


現実感が、完全にバグっていた。


『伝説の瞬間見てるわ』

『歴史に残るやつ』

『これリアルタイムで見れてるのやばい』


「……マジかよ」


苦笑しながらも、視線を横に向ける。


アカリは腕を組み、じっと俺を見ていた。


「納得した?」


「ええ」


彼女は小さく頷く。


「あなたが“普通じゃない”のは分かった」


「それ、褒めてる?」


「最大級にね」


『イチャついてて草』

『もう付き合え』


その時だった。


【通知:トレンド入り】


「……またか」


『#バグ配信』

『#確率支配』

『#ユウマ』


「名前まで入ってんのかよ……」


だが、その直後。


コメント欄の空気が、少し変わる。


『これチートじゃね?』

『さすがに不正だろ』

『運営調査しろ』


「……来たな」


アカリが小さく呟く。


「有名になると、必ず湧くのよ」


『アンチきたw』

『炎上開始』


「別にいいけどな」


俺は肩をすくめる。


「不正してないし」


「それが証明できないから面倒なのよ」


「……あー」


確かに。


俺のスキルは、どう見てもおかしい。


説明しろと言われても――


無理だ。


その時。


またひとつ、コメントが流れた。


『大手が反応したぞ』


「……また?」


『トップ配信者“レオ”が配信始めた』

『お前のこと話してる』

『完全に喧嘩売ってる』


「レオ?」


アカリの表情が、わずかに変わる。


「……Sランクの一人よ」


「またSランクかよ」


『最強格きたwww』

『終わったなユウマ』

『いや逆に神展開』


「見せて」


アカリが言う。


俺は画面を切り替え、もう一つの配信を表示する。


そこに映っていたのは――


金髪で、自信に満ちた笑みを浮かべる男。


「どうも、“本物”のトップ配信者だ」


『煽りwww』

『火ついたwww』


レオはカメラに向かって話し始める。


「最近、“面白い新人”がいるらしいな?」


「……俺のことだな」


「確率がどうとか、バグがどうとか」


レオは鼻で笑った。


「そんなの、あり得るわけがない」


コメント欄がざわつく。


「運がいい?違うな」


一瞬、間を置いて。


「“仕込み”だろ?」


「……」


『うわああああ』

『言ったwww』

『完全に不正扱い』


「新人がいきなりトップ?」


レオは肩をすくめる。


「そんな都合のいい話、あるわけねぇだろ」


そして――


「証明してみろよ」


挑発的に笑う。


「“本物”ならな」


配信が切り替わる。


「……面倒なことになったな」


俺が呟くと、アカリが小さく息を吐いた。


「でも、いい機会かもね」


「機会?」


「ええ」


彼女はまっすぐ俺を見る。


「あなたが“本物”だって、全員に見せつける機会」


コメント欄が盛り上がる。


『対決くる!?』

『これは神展開』

『ユウマやってくれ』


「……どうする?」


アカリの問い。


俺は少し考えて――


「……やるか」


「いいの?」


「どうせ逃げても言われるだろ」


だったら――


「ぶっ壊す方が早い」


その一言で、コメント欄が爆発した。


『きたあああああああ』

『宣戦布告www』

『主人公ムーブすぎる』


視聴者数:20万 → 28万 → 35万


そして掲示板では――


【開戦】バグ配信者 vs トップ配信者レオwww


世界が、注目している。


ただの無職だった俺の一言で。


「……面白くなってきたな」


笑いながら、俺は前を向く。


次に壊すのは――


“トップ”だ。

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