第3話:俺の配信、なんかスレ立ってるんだが

「……7万?」


ダンジョンの壁にもたれながら、俺は呆然と呟いた。


つい数分前まで無職だった男の配信に、

今――同時視聴者7万人。


意味が分からない。


『バケモンで草』

『もうトップ配信者やん』

『新人じゃねぇだろ絶対』


「いや、ほんとに今日始めたんだけど……」


思わずツッコむと、


『設定乙www』

『それで通るかw』

『逆に好き』


「信じろよ!」


初めての“配信者らしいやり取り”に、思わず苦笑する。


……なんだこれ。


ちょっと、楽しいじゃねぇか。


その時だった。


ひとつのコメントが目に入る。


『5chでスレ立ってるぞ』


「……は?」


『【速報】確率バグ配信者現るwww』

『勢いヤバい』

『まとめられるぞこれ』


「ちょっと待て」


いやいや、展開が早すぎる。


頭が追いつかない。


「……見るか」


俺は一瞬だけ配信画面を切り替え、

検索窓に打ち込む。


「バグ配信者」


すると、すぐにヒットした。


【速報】確率バグ配信者現るwww【SSR連発】


「……マジで立ってる」


恐る恐る開く。


【掲示板ログ】


1:名無しの探索者

なんかやべぇ新人出てきたんだがwww


12:名無しの探索者

初配信でSSR引いたやつだろ?見てるわ


25:名無しの探索者

運良すぎとかいうレベルじゃねぇぞ


47:名無しの探索者

回避率もおかしい

全部紙一重で避けてる


68:名無しの探索者

これチートじゃね?


72:名無しの探索者


68

現実でチートってなんだよwww


103:名無しの探索者

でも確率的にありえないのは事実


145:名無しの探索者

名前なんだっけ?


152:名無しの探索者

まだ名無し

配信タイトルも適当で草


201:名無しの探索者

逆にそれがリアルでいい


248:名無しの探索者

今同接どれくらい?


250:名無しの探索者

7万


252:名無しの探索者

バケモンで草


「……好き勝手言いやがって」


思わず笑う。


だが、不思議と悪い気はしない。


「……名無しは確かにアレか」


そう言って、俺は配信画面に戻る。


『戻ってきたw』

『スレ見てたろwww』

『名前つけろ』


「いや、見てねぇよ」


完全にバレている。


『配信名決めろ』

『バグ太郎でいいだろ』

『確率マン』

『SSRおじさん』


「どれも嫌だわ!」


コメント欄、完全におもちゃ状態である。


「……じゃあ」


少し考えて、俺は口を開く。


「ユウマ、でいい」


『普通で草』

『逆にいい』

『覚えやすい』


「本名だけどな」


『ガチで草』

『隠す気ゼロw』


その時。


画面の端に、ひとつの通知が現れた。


【コラボ申請が届いています】


「……は?」


『きたああああああ』

『誰!?』

『有名人か!?』


俺も驚きながら、確認する。


そこに表示されていた名前は――


『アカリ@Sランク探索者』


「……え?」


思わず固まる。


『は??????』

『Sランク!?!?!?』

『いきなりトップ来たwww』


コメント欄、再び爆発。


「いや待て待て待て」


Sランクって、

テレビにも出るレベルのトップ層だぞ?


そんなやつが、なんで俺に?


『受けろ受けろ受けろ』

『これは神回確定』

『断る理由ない』


「……だよな」


ここで逃げたら、終わりだ。


「……よし」


深呼吸して、ボタンに指をかける。


「受ける」


【コラボ接続中――】


次の瞬間。


画面が分割され、もう一人の配信が映る。


そこにいたのは――


長い黒髪を揺らし、冷静な目をした美女だった。


「初めまして」


落ち着いた声が響く。


「あなたが、“バグ配信者”?」


「……まあ、多分」


『美女きたあああああ』

『強そう(確信)』

『格差コラボwww』


彼女は、じっと俺を見つめる。


その視線は、鋭い。


まるで――


“値踏み”するように。


「単刀直入に聞くわ」


一瞬の沈黙。


「あなた、本当に“運だけ”なの?」


「……さあな」


俺は、少しだけ笑った。


「試してみるか?」


その瞬間。


コメント欄が、完全に沸騰した。


『うおおおおおおお』

『対決くる!?』

『神回確定』


そして掲示板では――


【速報】バグ配信者、Sランクとコラボwww

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