第2話:同接3万人、バグ配信始まりました
「……これ、売れるよな?」
手の中で輝く石――SSR魔石。
ゲームなら確定でレア。
現実でも当然、超高額アイテムだ。
震える手でスマホを操作する。
【鑑定結果】
高級魔石(SSR)
市場価格:3,200,000円
「……は?」
三度見した。
「320万!?!?!?」
コメント欄が爆発する。
『は?????』
『初手でそれは草』
『いや確率どうなってんだよ』
『運良すぎのレベルじゃねぇ』
視聴者数:2,843 → 5,102 → 9,877
「増えすぎだろ……」
さっきまで1人だったんだぞ?
意味がわからない。
だが――
「……まだ終わってないよな?」
ダンジョンの奥を見る。
暗い通路が、ずっと先まで続いている。
コメントが流れる。
『帰れw』
『今なら勝ち逃げできるぞ』
『欲張ると死ぬパターン』
「……いや」
俺は、ゆっくり首を振った。
「どうせ失うもの、もう無いしな」
その一言で、コメント欄の空気が変わる。
『こいつ覚悟決まってるな』
『嫌いじゃない』
『続行きたああああ』
視聴者数:1万突破
「よし、じゃあ――」
俺は一歩、さらに奥へ踏み出した。
その瞬間。
「ギギィ……」
嫌な音が響く。
通路の奥から、何かが“這ってくる”。
現れたのは――
人型の異形。
皮膚は黒く、関節が逆に曲がっている。
目は虚ろで、口元だけが異様に裂けていた。
『いやこれ初心者エリアじゃねぇだろ』
『中級モンスター混ざってる』
『逃げろって!!!!』
「……マジかよ」
さっきの狼より、明らかに強そうだ。
足が、震える。
本能が叫ぶ。
――逃げろ、と。
だが、その時。
また“アレ”が来た。
【スキル発動:《確率操作(バグ)》】
「……来た」
今度は、意識してみる。
“確率を操作する”ってことは――
「……当たる確率、上げられるか?」
半信半疑で、ナイフを構える。
相手は高速で突っ込んでくる。
普通なら、見えない速度。
だが――
「見える」
なぜか、タイミングが分かる。
“ここで振れば当たる”という確信。
「――っ!」
振る。
ズンッ
手応え。
ありえないほど綺麗に、
異形の胸を貫いた。
「……嘘だろ」
相手は、そのまま崩れ落ちた。
【レベルアップ】
【スキル進化条件を満たしました】
「……は?」
進化?
早すぎないか?
コメント欄、完全にお祭り状態。
『はあああああ!?!?』
『今の何!?チート!?』
『避け方おかしいだろ!!』
『命中率100%で草』
視聴者数:1万 → 1.8万 → 2.7万
「……やばいな、これ」
手が震える。
恐怖じゃない。
高揚だ。
その時、さらに画面が光る。
【スキル進化】
《確率操作(バグ)》→《確率支配(バグ)》に進化しました
「……名前、ヤバくなってない?」
“操作”から“支配”。
完全にアウトな響きだ。
すると、次の瞬間。
「ギィィィィィ!!」
通路の奥から、さらに複数の気配。
『群れきたああああ』
『詰んだwww』
『いやこれ無理だろ』
現れたのは、さっきの異形が――5体。
「……さすがにこれは」
普通なら、終わりだ。
だが。
俺は、ゆっくりと息を吐いた。
「……確率、支配できるんだよな?」
だったら。
やることは一つだ。
「――全部、当てればいい」
その瞬間。
【スキル発動:《確率支配(バグ)》】
世界が、スローモーションになる。
敵の動き。
自分の呼吸。
すべてが、手に取るように分かる。
「ここだ」
一歩。
二歩。
三歩。
すべての攻撃を、紙一重で回避。
ナイフが閃く。
一撃。
二撃。
三撃。
四撃。
五撃。
――すべて、急所。
数秒後。
そこには――
5体分の死体だけが残っていた。
静寂。
そして――
コメント欄、完全崩壊。
『意味わからん意味わからん意味わからん』
『チート確定』
『運じゃねぇだろこれwww』
『誰か運営呼べ』
視聴者数:3万突破
「……え、3万?」
画面を見て、固まる。
さっきまで無職だった男の配信に、
3万人が集まっている。
そのとき。
ひとつのコメントが流れた。
『大手配信者がこの配信取り上げたぞ』
「……は?」
さらに、
『トレンド1位きてる』
『#バグ配信』
『世界に見つかったな』
「……マジかよ」
現実感が、ない。
だが、確実に言えることがある。
「……引き返せなくなったな」
俺は、笑った。
視聴者数:3万 → 4.5万 → 7万
そしてその日。
世界中に、“一つの異常”が拡散された。
「確率を壊す配信者がいる」
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