底辺配信者の俺、隠しスキル『確率操作』で視聴者1000万人の神配信者になる

あっかんべー

底辺配信者潜ります

第1話:底辺配信者、人生詰んだのでダンジョンに潜ります

「……は?」


スマホに表示された通知を、俺は三度見した。


【あなたは会社を解雇されました】


いやいやいや、ちょっと待て。


「え、これメールで送る内容か……?」


ついさっきまで普通に働いてたんだぞ?

昼休憩明けに、いきなりこれ?


電話もなし。説明もなし。

あるのは、テンプレ文章だけ。


「……終わったな、俺」


思わず笑いがこぼれる。


貯金、ほぼゼロ。

スキル、特になし。

コネ、人脈、皆無。


――詰みである。


俺、小林悠真(こばやし ゆうま)、24歳。


本日、無事に人生終了。


……のはずだった。


「……あれ?」


ふと、街の様子に違和感を覚えた。


人がやたら多い。

しかも、全員同じ方向を見ている。


視線の先――


そこには、


黒い穴が、ぽっかりと空いていた。


「ダンジョン……?」


思わず口に出す。


そう、最近ニュースで散々やってるアレだ。


世界中に突如出現した謎の空間。

中にはモンスターがいて、倒せば金やアイテムが手に入る。


そして――


人生を一発逆転できる場所。


「……いや、無理だろ」


普通ならそう思う。


だが、今の俺は違う。


仕事なし。

金なし。

未来なし。


「逆に、行くしかなくね?」


自分でも引くくらい軽いノリで、俺はそう呟いた。


そのときだった。


スマホが、再び震える。


【新しいアプリがインストールされました】


「は?」


勝手に?


画面を見ると、見覚えのないアプリが追加されていた。


名前は――


《Dungeon Live》


「……配信アプリ?」


タップすると、すぐに画面が切り替わる。


【ダンジョン専用配信システムへようこそ】


【あなたは配信者に選ばれました】


「は???」


いやいやいや、意味わからん。


選ばれたって何に?


しかもその直後、


さらに意味不明な表示が現れた。


【初期スキルを付与します】


「おい待て」


拒否権は?


確認もなし?


だが、そんな俺の意思を無視して――


【スキル付与完了】


一行だけ、表示された。


《確率操作(バグ)》を獲得しました。


「……は?」


確率操作?


しかも“バグ”ってなんだよ。


ゲームかよ。


「いやいや、さすがに胡散臭すぎるだろ……」


そう思いながらも、俺はダンジョンの入口を見る。


人が吸い込まれるように入っていく。


中には、配信しながら入るやつもいる。


歓声。コメント。投げ銭。


――夢みたいな世界。


「……やるか」


どうせ、もう失うものはない。


だったら――


一発、狙うしかない。


俺はスマホを構え、震える指でボタンを押した。


【配信開始】


画面に表示される。


視聴者数:1


「……1人?」


誰だよ。


と思った瞬間、コメントが流れた。


『また初心者かw』

『即死配信きたw』

『こいつ装備ゴミすぎて草』


「……うるせぇな」


思わず苦笑する。


でも、不思議と嫌じゃなかった。


誰かに見られている。


それだけで、少しだけ――


世界に繋がってる気がした。


「よし……行くぞ」


俺は一歩、ダンジョンの中へ踏み込む。


空気が一変する。


冷たい。重い。異質。


そして――


「グルルル……」


目の前に現れたのは、


明らかに現実には存在しない生物。


牙をむき出しにした、狼型モンスター。


「……いきなりボス級じゃね?」


コメント欄が一気に加速する。


『終わったwww』

『初手デス確定』

『ご冥福w』


「はは……笑えねぇ」


武器は、安物のナイフ一本。


勝てるわけがない。


普通なら――


ここで終わりだ。


だが、その瞬間。


頭の奥で、何かが“弾けた”。


【スキル発動:《確率操作(バグ)》】


「……え?」


次の瞬間。


狼が、足を滑らせた。


「は?」


ありえない。


ダンジョンの床は、乾いている。


なのに、モンスターが転倒?


『は?今の何?』

『バグった?』

『ラグ?』


その隙を、俺は見逃さなかった。


無我夢中でナイフを振る。


――ザシュッ


信じられないほど、あっさりと。


モンスターの首が、落ちた。


【レベルアップ】

【ドロップ:高級魔石(SSR)】


「……え?」


手のひらに収まる、輝く石。


明らかに、ヤバいやつだ。


コメント欄が、爆発した。


『はあああああ!?』

『初手SSRは草』

『確率おかしいだろwww』

『こいつ何者!?』


視聴者数:1 → 127 → 2,843


「……は?」


一気に跳ね上がる数字。


理解が追いつかない。


だが、ひとつだけ分かることがある。


「……これ、人生変わるかもしれないな」


俺は、笑った。


初めて――


心の底から。


そしてこのとき、まだ誰も知らない。


この男のスキルが、


“世界の常識を壊すバグ”であることを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る