第33話

   愛花


 テスト当日、芽衣の顔色は悪かった。

 上手く誤魔化しているように見えるけど、私には分かる。


 やっぱり昨日のこと……なんだと思う。


 昨日なぜか泣いていた芽衣。

 きっと瑠姫先生に何か言われたんだと思う。


 私も凄い心配になったけど、これは私が深く関わってはいけない問題なんだと思った。


 これは……私の問題だから。

 

 分かってほしいと思ってきたのか、それとも彼女の計画を修正するためか。


 それは私の付き合い方次第で決まるのだと思ったから、昨日は少し考える時間がほしかった。


 芽衣が私を使って葉矢川の家に何かしようというのは考えられない。


 瑠姫先生の勘繰りすぎだと思う。

 でも、否定が出来ない自分がいた。


 芽衣はダメな子が可愛いと言いつつ、家名に傷をつけるために私を利用しようとしてるのか。


 彼女は賢い子だから、そんなことが出来るかと言われたら……出来ないとは言いきれない。


 何より私が芽衣を信じきっているから。


 バスケの授業だって、誕生日だって、ファッションの時だって、彼女は私がほんの少し恥をかいたり、自分を責めるようなきっかけを作っていたのかもしれない。


 それでもなお、私は芽衣のことを疑いもしなかった。


 私は今、分岐点にいるんだ。


 彼女の望む「ダメな私」のままでいるか、それとも決別するか。


「ねぇ〜種ちゃん教えて〜!」

「またですか? ここはですね……」


 テスト前の時間、穏やかに勉強を教えてる芽衣。


 だけど私には顔色が悪く見える。


 麻里亜ちゃんも未来ちゃんも気付いてなさそうだけど、私には分かる。


 芽衣には元気でいてほしい。


 芽衣が私に何かを求めているのなら、全力でそれを遂行したい。


 けど……私に出来ることがあるのだろうか。


 彼女の求める私はきっと……ダメな私だ。


 それも積極的にダメになるような人間ではなくもっとこう……生き方的な。


 でもそれは私にコントロールできるものじゃない。


 私らしくあれ。そう言われても、私だって色んな人に影響を受けている。

 現に今は瑠姫先生の言葉に揺れている。


 あの背筋をピンとした、規範や手本を形にしたような素敵な大学生に「あなたは出来る子」と言われれば、それは否定することが出来ない。


 それに応えたい私もいる。


 どちらを選んだら良いのか分からない。


 芽衣はこちらを見てくれない。


「あれ? 愛ちゃん今回は復習しっかりしてるんだね」

「え?」


「あっ、本当だぁ。綺麗にノートがまとまってるぅ」

「あーうん! 今回はね、自信あるよ!」


 そう言うと、芽衣の瞼がピクリと動く。


 やっぱり瑠姫先生の教えで上手くいってるのが気に食わないのかな。

 瑠姫先生は芽衣を邪悪と言うけど、芽衣から瑠姫先生も同じように見えてたのかな。


 ……分からない。


 けど、やっぱりこの反応を見ると私を使って葉矢川の家を攻撃しようなんて思えない。


「今回は余裕そうだねぇー」

「羨ましー!」


「うん、やれるだけのことはやるつもりなんだ」


 結局それしかないんだろうな。


 そう思ったタイミングでチャイムが鳴り響く。


 そしてピリついた教室の雰囲気を割るようにテストは始まった、


 今回の期末テストは、今までのどの試験よりも簡単に解くことが出来た。

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