第8話
当日、パンケーキを食べに行くために早速買った服を彼女のチョイスで合わせて出掛けるとなったわけだが……。
「それでいいのですね?」
「変?」
愛花の部屋で、最終確認として一回転。
くるりと回って全体を私に見せてそう聞く。
彼女がこの前買った奇抜な柄のセーターに合わせたのは、あまりにもシンプルすぎるブルーのデニム。
(……ダサいな)
サイズ感含めてあまりにもな仕上がりだった。
トップスは割とタイト目なのにボトムスは緩めなシルエット。
奇抜なセーターを中和するために、無難そうなデニムを選んだ結果のミスマッチ。
これでファッションのショーに行ったら、招待したブランドの担当者はきっとクビになる。
そんなコーデになっていた。
そんな愛花に私は、つい口角が緩む。
「いいですね。せっかくですので記念に撮影させてください」
「えっ? あーうん、いいよ」
〈パシャリ〉
スマホで全体を捉えて眺めても、ダサい。
斬新とか攻めてるとかでなく、シンプルにアイテム選びを間違えてる。
悪いルックのお手本を見るようだった
白いワンピースに麦わら帽子、それだけで十分絵になるビジュアルなのに。
変な部分にこだわって大事な部分がおろそか。
「それで、どうかな?」
私は服を少し摘んで、生地の質を確かめてみる。
大衆向けの服屋の素材だから、普段愛花の着ているものよりは劣っている。
けれど、服の質は中の人間の質を表さない。
良い素材の服でも、悪い素材の服でも、着てしまえば愛花らしさが表に出るのだ。
これは凄い。
考えようによっては誰よりもファッショナブルなのではないだろうか。
普段は恥をかくことがないように私が選んでいるけれど、今回は流石に恥をかいてしまうかも。
フフっと噴き出そうになったものを喉奥で抑える
「……可愛らしいですね」
「可愛いって……本当に言ってる? 本当に大丈夫?」
「えぇ、本当に愛花様は可愛らしいです」
「私より服について聞いてるんだけど」
「それを申し上げたらお嬢様が選んだことになりませんよ」
「ああ言えばこう言う……まぁいっか。芽衣に可愛いって言われるのは悪い気分じゃないし」
そうだね。と目で伝えるように彼女を見つめると、こちらの想いを読み取るように彼女は笑った。
「そうやって笑ってくれるなら大丈夫なんだよね」
「私の考えが分かるみたいな言い振りですね」
分からないくせに。
そういう部分にも鈍感で、ただ生きているだけの愛花にそんな芸当ができると思わない。
愛花はそういう女の子なんだから。
ただそれでもフフンと鼻を鳴らして自慢げに彼女はこちらを上目遣いで見つめている。
「分かるよー。爪を噛んでる時はイライラしてるとかね」
「それは……まぁ正解ですけど」
「ほらほらー!」
そして見抜いたりと言わんばかりに笑った。
トンチキな格好でアホみたいに両手の人差し指をこちらに向けながら。
「はぁ、まぁでも今回は集合時間に間に合いそうですね。行きましょうか」
「芽衣はその格好でいくの?」
「はい……いつも通りですよ」
白のカッターシャツにスラックス。
外でも中でも違和感の生まれない普通のスタイル。
「私はこんなキメてるのに?」
いや別にキマってはない。と言いたいところだけど、口にはしない。
「お嬢様を食ってしまったら申し訳ないので」
「……?」
「お嬢様と同じキメ方をしたら、身長が高い私の方が目立ちますよ」
「うわー高身長マウントだ。最悪」
150センチ前半の彼女は白けた視線をこちらに向けてくる。
意外と気にしてるんだな。
その辺は武器にしてるほうだと思っていた。
「まぁでもいっか。じゃあ行こう? 今日は車はあるの?」
「はい、もう玄関で待機しています」
「よーし! じゃあ行こー!」
そうして屋敷の整った廊下を、散らかった姿で歩く愛花。
そんな彼女の愛しい姿を私は後ろから見守った。
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