第4話 404小隊戦闘開始!

ワタクシたちはマスターと別れ、出撃用の設備がある「第三出撃口」に向かっていた。


到着すると、整備兵さんたちが私たちの装備の準備を待っていた。その中の一人が私たちの存在を認識するやいなや、「早くしろ落ちこぼれども!!!」と呼びかけと共に罵声を浴びせてくる。ここに配備されて最初のころは、私たちも言われるたびに言い返していたのだが、最近は言われることに慣れてしまったので無視することにしている。


「ほらよ。さっさと装備してさっさと出撃しろ!お前らと同じ空気を吸ってると吐き気がする!」


「…チッ。」


あら?小さく舌打ちする音が聞こえてきたので、その音の方向を向いてみると今にも血管がはち切れそうなくらいにいら立っているニーミさんが魔装具を装備して立っていた。彼女はこの程度の罵倒も耐えられないのか。ぷぷぷ、お可愛いこと。


そんな彼女を横目に、私も自身の魔装具を身に纏う。ニーミさんのずんぐりむっくりの亀みたいな奴じゃなくて、もっと細身で美しくてエレガントな奴だ。

装備し終わった私は、二人に声をかける。二人とも準備が完了していそうなので、カタパルトのほうへと向かう。


向かった先には、大人一人が余裕で入れそうな大きさで、卵のような形状をした物が三つおいてあった。表面には取っ手のようなものが取り付けられている。

私たちはそれぞれ別の卵の横に立ち一斉に取っ手を引っ張る。すると、卵の前のほうが少しの重さと共に、上に開く。

中には、私たちの体を固定するためのアームといろんなコンピューターが備え付けられていた。

私たちは今から、この「射出ポッド」に搭乗し魔女がいるところへと急行するのだ。


三人で一度目を合わせてから、射出ポッドの中へと乗り込む。全員が乗り込めたことを確認し、私は中にあった一つのスイッチを押す。ユフィさんに出撃の準備が整ったことを伝えるためだ。


すると、私の頭の中へとが割り込んでくる。


「ユフィ?大丈夫?」


これはナナさんの声。


「大丈夫です!」


これはマスターの声。


「何やってる?早く出撃させろ!」


そしてこの無駄にデカい声はニーミさんの声。


隣にいないはずの人たちの声が、隣から聞こえてくる。

――リンクのせいだ。今、私たちの思考はマスターのリンク魔法で一つになっている。

リンクの始まり共に、戦闘の開始が足音を立てて近づいてくる気がした。

その足音を聞き、私は気を引き締める。


「第404特務小隊!出撃!!!」


ユフィさんのその一言が聞こえた直後、私たちの乗ったポッドはカタパルトのレールに沿って基地の外へと射出された。


―――――――――――――――――――――――――――


私が出撃の合図を出すと、彼女たちがのったポッドは一斉に出撃していく。カタパルトで射出した際の大きな衝撃が、私の体にも伝わってきた気がした。まぁ、実際に伝わっていたら今頃私はミンチになっていることだろう。


数十秒後、作戦域に到着したポッドは外装をパージして彼女たちを外へと放り出す。

さっきまで真っ暗だった彼女たちの視界に、太陽の光が入ってくる。下には広大な草原が広がっている。

彼女たちは空中で瞬きすらせずに、着地の準備を開始した。


装備のスラスターを吹かせ、ゆっくりと着地する。やがてスラスターの風圧が巻き上げた砂埃が晴れ、三人の姿を確認できるようになる。


純白と金色を基調とした軽量の鎧に、大型のランスと小型の盾。背中には変態的な機動を実現させる大型のブースターユニット。

全体的に騎士っぽいデザインをしているのがマルク。


銀色の武骨な鎧に、正面から見た際に体全体を覆うことができる程には大型な盾。そしてそれらとは対照的に比較的小型な連射式魔導銃サブマシンガン

まるで難攻不落の要塞のような印象を与えるのがニーミ。


背中から伸びる二門の大型の魔導砲とその反動を地面に逃がすために腰部背面に装備されたアンカー。そして小柄な体躯に似合わない(似合ってる)大型の重魔導機関砲マシンガン

ハリネズミみたいに体のどこを見ても何らかの武器がついているのがナナ。


装備をつけてない皆は可愛いだとか綺麗だとか、そんな感じのものが多かったのだが今の彼女たちは皆、カッコいいって感じがする。こんなカッコいいものが嫌いな男の子なんて存在しないでしょ。いやまぁ、私は18歳になったばっかのピチピチな女の子なんだけれども。

正直なところ、彼女たちの装備をじっくりと見たいところなのだが今は作戦行動中。そういうのは皆が帰ってきてからにしなければ。

私は気持ちを切り替えて、彼女たちに指示を出し始める。


「ナナ、とりあえず魔眼で索敵をおねがい!」


「りょーかいですっ。」


私がそう指示を出すと、ナナは自身の眼帯を外しを露出させる。


「えぇと。近接戦闘型の魔女が10、中距離支援型の魔女が5。みんな量産型っぽい。

北西のほうに1200m離れたとこから接近してきてるよ。今のところそれだけ。」


「なんか少なくない?」


「細かいことはどうでもいいですわ。どうせ私がボコボコにしますから。」


基地を襲撃するにしては、あまりにも少ない戦力に私は首をかしげる。その言葉にマルクが自信満々な声で反応してきた。マルクの声に私は「それなら安心だね」と返す。すると、ふふん、って意気揚々に鼻息を鳴らす音が耳に入ってきた。かわいい。


「じゃあ…。マルクは前衛で突っ込んで。ニーミはマルクを援護。ナナは後方支援と引き続き索敵をお願い!」


「「「了解。」」」


私が行った通り、彼女たちは一斉に動き始める。マルクとニーミは加速し、敵がいるほうへと突っ込んでいき、ナナはその場にとどまって索敵を開始する。


900…。


300…。


接敵!


彼女たちの視界には、肌が真っ白で生気が抜けたような顔をしている女たちが移っている。これがだ。数十年前に確認されるようになった人類に敵対的な生命体。


マルクは手始めに、一番手前に立っていた近接戦闘型の魔女にランスを素早く突き出す。


「ひとつですわ。」


その魔女は手に持っている剣で、その攻撃を受け止めようとするのだがマルクの圧倒的なスピードに反応しきれずに胴体を貫かれた。


「はぁぁぁっ!!!」


つぎに魔女が突き刺さった槍をそのまま横に大きく振るい、近くにいた魔女二人を一気に薙ぎ払う。


「ふたつ、みっつ!」


しかし大型の武器をそんなに大きく振ってしまえば必ず隙が生まれる。後方にいた中距離支援型の魔女はその隙を狙って一斉に魔力の弾丸を放ってくる。一発一発の威力は高いわけではないが、マルクは軽装型の魔術人形。何発も食らってしまえば致命傷にもなりうるだろう。


「隙だらけだぞ、さん?」


飛んでくる魔法を、マルクに到達する直前でニーミが盾で受け止める。そしてもうすぐで死ぬところだったマルクに向けてからかうようなセリフを言って見せた。


しかしニーミの放った言葉の方向には、誰もいない。ニーミは?を張り付けたような顔のしている。すると、ニーミの視界が影に覆われる。後ろを急いで振り返るとそこには剣を構えて飛び上がった魔女が。急いで盾を構えようとするのだが、間に合わない。彼女はしかたない、と思い攻撃を受ける覚悟をする。しかしその攻撃はニーミに傷をつけることはなかった。


「あなたもでしてよ?」


ニーミの視線の先には、魔女ではなくマルクが立っている。そしてニーミを襲おうとした魔女はマルクのランスに横腹を貫かれて絶命していた。

本来ならニーミはありがとうとか、そういう感謝の気持ちを述べるべきなんだろうが彼女の口から出てきたのは「この!!」っていう怒声だった。そしてマルクもマルクでその怒声に乗っかろうとする。


「二人とも!今戦闘中!っ!」


二人の間でバチバチと火花が散り始めたので、私はそれを止めるために私もちょっとだけ怒鳴る。最近怒鳴ってなかった分の声も出たので、結構な声量になっているかもしれない。


「ナナ!」


私たち三人の怒号が飛び交っているうちに後方の魔女たちは次弾の装填を終えていたらしくて、魔法を放とうとしていた。その様子に気づき、私はナナに命令を出す。


「おっけ~。マルク、ニーミ!伏せて!」


私の命令に反応しナナがそう言った次の刹那、轟音と共に一筋の光が空間を切り裂いた。

その光は放物線を描き二人がいるところに着弾した。爆炎が上がり、もう一度轟音があたりをとどろかせた。


煙が晴れると、そこには五人の中距離支援型の魔女が倒れていた。そのうち一人が立ち上がろうとするのだが、ニーミの射撃により阻止される。


残りは近距離戦闘型が6名。彼女たちの技量ならすぐ倒せるだろう。


マルク達は態勢を立て直し、各々の武器を構える。

404小隊と、彼女らに向き合う魔女が六人。二つの集団の間には静寂が流れていた。

その静寂をぶっ壊すように、マルクが敵に向かって突っ込んだ。それを援護する為、ニーミも後方から射撃。


マルクと、ニーミ。さっきまで喧嘩していたとは思えない二人の、優れた連携で六人の魔女はあっさりと撃破された。


「周囲に敵影なし…うん、多分これで全部だね。」


ナナのその宣言に全員が安堵のため息を漏らす。戦場にさっきの緊迫した雰囲気の静寂とはまた違った静寂が流れ始める。


今度その静寂を破ったのは、ニーミではなく…


「今から回収部隊をそっちにおくるから」


私…


「まって!むこう…北方1からおっきい魔力反応がものすごい速度で接近してきてる!


識別コードは…unknown!?」


でもなく、ナナだった。彼女がいった方向を見ると、そこには何もいない。しかし彼女の魔眼を通してそこを視認すると、確かに何かがいる。


マルクとニーミが「どこだ?」と、それを探しているとそれは場所から姿を現した。


全高約5m、両手は銃のような形をした魔女。下半身はクモを彷彿とさせる八本脚で、それと同様に顔には沢山のギョロっとした目がついている。見た目と魔力反応の大きさからして少なくともVI等級、いやVII等級以上の魔女かもしれない。


王国軍内では、魔女の強さを分けるときIからIXの九段階の等級で表す。最上級であるIX等級になってくると数体集まるだけで大都市、或いは小国を一夜にして滅ぼせるほどだ。そしてその中でも7番目となればかなりの強さなのが分かるだろう。


しかし…あんな魔女、見たことがない。軍学校時代に、今まで確認された魔女について記されていた教本を何度も読み漁っていた私だからわかる。

念のためさらに記憶のなかを遡ってみるが、答えは見つからない。


もしや、と思い私は口を開く。


「敵の…新型!?」













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