第2話 理想の未来はどこへ?

「このっ!死ね!カス!ゴミ!」


「あら?そんな遅い攻撃じゃ、私どころか魔女すらも倒せませんよ?」


「…(むしゃむしゃ)」


わたしがその場で突っ立ていると、彼女たちの喧嘩はどんどん激しくなっていった。私が最初に目にしたときに飛び交っていたのは汚い言葉だけだったけれど、今はそれに拳と蹴りと…その他たくさんが追加されている。

え、ここ第404特務小隊だよね?まちがってないよね?まちがっててほしいなぁ…。一縷の望みにかけて、扉の部隊名を確認しにいくのだが、そこにはしっかりと第404特務小隊と刻まれていた。

私が扉の前でがっかりしていると、部屋の中からガラスやらなんやらが割れたり壊れたりする音が聞こえてきた。そろそろ止めないとやばいかもしれない。

私は覚悟を決めて、もう一度部屋の中へと踏み込む。


「(すごい暴言)」


「(すごい暴言part2)」


「…(むしゃむしゃ(むしゃむしゃ))」


どかーんがしゃーんずばばばばーん(色々壊れる音)ばりーん(覚悟が砕け散る音)


私の覚悟は一瞬にして砕け散った。うわぁん。

覚悟の砕け散った私がその場に突っ立っていると、さっきまでむしゃむしゃしていた娘がおもむろに立ち上がり、こちらのほうへと歩いてくる。


「えぇと…。どちら様?」


「本日付けでこちらの部隊に配属されることになったユフィリア・アストライア、と申します。」


彼女、資料通りならこの娘がSeraphちゃんだろう。クリーム色の髪の毛を下のほうで結った、いわゆるアンダーツインテールと呼ばれる髪型をしている。かわいい。右目に黒色の眼帯をつけているのは、頭部に内蔵されている魔眼を保護するためだろうか?少し視線を左に移すと、アメジストのように透明感のある紫色をした瞳が輝いていた。すごくかわいい。服装は襟にたくさんのフリルがついたブラウスとショート丈の白色のスカートを着用している。首元には淡いピンク色のリボンが装着されており、すこし幼いようにも見えるのだが、下半身のほうを見るとスカートとニーソックスの間から絶対領域という名のふとももが顔を出しており凄いえっちなようにも感じられる。うんかわいいしえっち。尊い好き。


「あぁ、人形師ドールマスターの人かぁ。タイミング悪い時にきちゃったね。ボクは、77式火力支援型魔術人形Seraph。

…この様子だと終わるのは…1時間くらいかかるから。その間に基地内、案内したげるよ。」


私の予想は的中しており、この娘がSeraphちゃんで間違いなさそうだ。なんだかあの二人と違って、この娘はすごい穏やかな感じがする。

私はお言葉に甘えて基地内を案内されることにした。


二人でこの基地以外にも、404小隊についての話を聞いたりしながら歩くこと一時間弱。薄々分かってはいたが、話を聞いてみるとこの部隊は私が想像していたものとは全然違うらしい。もともとは別の部隊で運用されていた魔術人形の中から、何らかの問題がある個体たちを寄せ集めた部隊、それが第404特務小隊だ。結成の経緯がそのような感じだからか、周囲からは「おちこぼれ小隊」と蔑まれているとのこと。

私の様子を見て、「がっかりした?」とSeraphちゃんは聞いてきた。正直してないと言えば嘘になる。しかしそんなことよりも私は、私が管轄する部隊がおちこぼれと言われているのが許せなかったので、心の中で「おちこぼれから最強部隊になりあがってやる!」と意気込むのだった。


そろそろ二人の喧嘩も収まってくる頃だろう。私たちは扉の前に立っていた。

Seraphちゃんからがんばれ、とエールを貰って私は再びその中へと足を踏み入れた。


「失礼しまぁぁぁす!!!!!」


恐怖心に打ち勝つため、バカでかい声を出しながら入室する。ぐちゃぐちゃになった部屋の中央でぐったりとしていた二人は、私の声に反応して飛び起きる。


「なんですの⁉」


「うわぁっ!?」


ぽかんとしている二人のことは気にせず、私はバカでかボイスで続ける。


「とりあえずぅぅ!!!せいれぇぇぇぇっつ!!!横一列にならヴぇげほっげほっ」


でかい声を出しすぎてむせてしまった。ただ、そのでかい声のおかげかは知らないけど、その二人は私の前に寄ってきて横一列に整列し始めた。あとから遅れて、Seraphちゃんもその列に加わってくる。


「こほん。えぇと、私は今日から人形師ドールマスターとしてこの部隊に配属されることになったユフィリア・アストライア、と申します。好きな食べ物は目玉焼きで嫌いな食べ物はグリンピース。趣味は――……。」


三人の整列が完了した後、私は軽く咳ばらいをして喉の調子を整えてから自己紹介を始めた。私の自己紹介が終わり、次は「あなた達は?」と問いかける。すでに書類の情報から何となく誰が誰なのかわかっているのだが、念のためにだ。


最初に口を開いたのは、金髪ポニーテールで高身長な娘だった。


ワタクシは09式少数量産型魔術人形Ritter/custom!最強の魔術人形ですのよ!。」


後頭部から伸びる髪の毛の束を、手で靡かせながら彼女はそう言う。なんだか薔薇が舞う幻覚が見えた気がした。


次に口を開いたのは赤髪ショートカットの、こりゃまた身長がデカい娘。


「…俺は23式試作型魔術人形Aegis。これでいいか?」


少し…いや、だいぶ気だるげな感じで話し始める。

…まってよく見るとコイツ…おっぱい!!!おっぱいが!!!でかい!!!!…いや、おっぱい"が"じゃなくておっぱい"も"と言った方が正確だろうか?身長も多分…2mはあるだろうし。

てな感じで、私がこのクソデカおっぱいを見つめていたら凄い嫌な顔をされた。うへへ。


そして最後は我らが天使(?)、Seraphちゃん!ちょーぜつかわいい!!!!


「ボクは Seraphだよ。フルネームはさっき言ったし割愛するね。」


か゛わ゛ぃ゛っ!!!

脳内に可愛いが溢れてしまい、居場所がなくなってしまった魂が口から出ていきそうになる。なんとか引っ張って体内に戻す事に成功したものの、気を抜けばすぐに出ていってしまいそうな気がした。


「09式…23式…77式…。うーん…。」


流石にこの子達を機体名で呼ぶのは気が引ける。だってそれってさ、人間に向けて「おい人間!」って言ってる様なものじゃん?機体名って、個人に与えられた物じゃなくて生産された機体全体を指すものだし。だから私は魂云々は取り敢えず置いといて、先にこの子達の名前を考えてあげることにした。

数十秒間考えた後、私は良い感じな奴が思いついたのでその名を、先程の自己紹介と同じ順番で彼女達に与える。


「マルク!」


「はい?」


「にーみ!」


「あ?」


「ナナ!」


「ん?」


「今日からコレが貴方達の名前。私のことはよかったらユフィ、って呼んでください!」


名前、と言われた瞬間彼女達は凄いぽかんってしていた。嫌だったのかな…?私が少し不安になっていると、ナナがこちらに一歩近づいてくる。


「名前なんて付けられるのは初めてだな…。ありがとね。大切にするよ。」


彼女は微笑みながらお礼を言ってきた。後ろの2人は、よくわからん。みたいな顔をしていたけど、嫌がってるわけでは無さそうだった。嫌がられたらこの場で首つって死ぬ自信がある。


――――――――――――――――――


最初はどうなるのか、と思ったけれど案外どうにかなるかもしれない。私の心にはまた、明るい希望が輝き始めていた。


うそ実はちょっと不安だったりする。

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