第40話『ただ一人、名を呼ばれて』
外縁宙域の防衛をめぐり、宇宙防衛軍と外縁宙域監理局(OROB)の交渉が続いていた。
軍は一地域を守る力を誇っていた。
だが、その規模は限られている。
対する監理局は銀河各地で異常現象の監視と封じ込めを担い、その権限と実績は揺るぎなかった。
均衡は最初から崩れていた。
やがて交渉は決着を迎え――軍の一方的な敗北に終わった。
ただ一つ、司令官は条件を突きつけた。
「我が兵の願う部署に配属を願う。兵の誇りを奪うことは許さん」
局はこれを受け入れ、隊員たちは解析部門や支援部門へと散っていった。
そして――ただ一人、名を呼ばれた。
OROB担当官が告げる。
「ギラン=カーン。あなたを中心に、観測部門に新たなチームを編成する。
その名はBeyond Tracker――局直属の観測チームだ」
静まり返る室内で、ギラン=カーンはただ淡々と敬礼した。
数日後。
観測艇〈アステロープ〉の格納庫。
新たな仲間たちが顔を合わせる。
副官ルル=サーンは通信と報告を担う。
観測員ボー=ネムマイは新卒の若手。
技術士コルブイは数値にすべてを託す無口な整備員。
彼らはいずれも監理局の各機関から選ばれてきた者たちだった。
そして、軍から唯一移籍してきたギラン=カーンが、彼らの中心に立つ。
「……これで全員だ。我々はBeyond Tracker。局の命で、外縁宙域の異常を観測する」
それだけを告げると、彼は背を向けた。
かつての仲間は散り散りとなり、代わりに集められたのは局の中からの選抜者たち。
だがこの瞬間、確かに新しいチームが生まれた。
“Beyond Tracker”――その名だけが、彼らを繋ぐ唯一のものだった。
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