第39話『びわと営業努力』

初夏の風が商店街を吹き抜ける頃、世界は相変わらず少しだけ変です。


でも。ユーマにはいつもの日常。商店街もいつもと変わらず過ごしてる。


「へい、美味しい野菜、果物あるよ! 取れたて新鮮なやつだ!」


八百屋にはトマト、ナス、きゅうりが山積みになり、おやじは「今年も暑くなりそうだねえ」と声を張り上げていた。


果物では、びわとさくらんぼが並び、おやじは「今年のびわは甘いよ」と誰にともなく話しかけていた。


八百屋のおやじが店頭で張りきっている。


ユーマが八百屋の前に立つと「へい、頭の青いリンゴも良いけど、びわを乗せたら更に男前になるよユーマ!」とにこやかに言う。


ユーマは、ジッとびわを見つめる。


どうやら考えているようだ。


おやじも一つびわを取って皮をむきながら「味だって甘くて美味しいんだから!」びわをユーマに渡すと食べるように勧めた。


ユーマは、おやじを見つめながら食べた。


「・・・」


おやじの頬に汗が流れる。


「わたし、いつも男前です!」


沈黙が流れる。


おやじも焦ったのか、「なに冗談だよ! ユーマ君は男前だよ。ハハハハ」と空笑いする。


ユーマは種をおやじに渡すと、「そのかご、三つ頂こう」とまんざらでもない表情でおやじに言う。


おやじも笑顔で「まいど!」と袋に入れ会計する。


「おまけしといたからねー。ありがとねー」


帰り際、


「店主、なかなかやりますね」


ユーマは一言呟くと帰っていった。


ユーマが居なくなり、おやじは、


「ユーマってわからないな? びわを気に入ったのか、褒められたからなのか? でも、味にはうるさいと聞くし?」


おやじは首をかしげる。


奥から「あんたー、びわ売れたのー?」


「三かご売れたー」


おやじも返す。


奥からの返事はなかった。


まあ「売れたから良いかー」


おやじはまた声を張り上げ始めた。


「へい、美味しい野菜、果物あるよ! 取れたて新鮮なやつだ!」

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