第38話『惑星F-5130:マビノス』

ピップは観光ガイド片手に出かけている。


古いガイドブックらしく、紙の本だ。紙の本は懐かしく感じるらしい。


「だいぶ古いけど、まだあるかな? 滝」


今回の目的地は惑星F-5130、通称「マビノス」。昔から知られる観光地だ。


ガイドブックには、地上1300メートルから流れ落ちる巨大な滝が見ものだとある。


広大な運河が標高1300メートルから続いており、その落差によるスケールは桁違い――そう記されていた。


さらに滝に関する博物館も併設しているらしい。


「まだ存在してれば良いけど……」


ピップにとってマビノスのある宇宙領域は初めてだ。


惑星マビノスに到着。自然豊かな星だ。


ピップは観光ジェットに乗り、目的地を目指す。直通で行けるらしい。


滝の名は「ゴートナルリデイオン滝」。地名から来ている。


窓の外の景色を楽しみながら、もちろん録音記録も忘れない。


目的の滝は心配をよそに大盛況で、人気の観光スポットとして賑わっていた。


ゲートには「ようこそゴートナルリデイオンの滝へ」の看板。


おしゃれな土産屋やカフェ、レストランが立ち並び、避暑地の町のようだ。


「避暑地みたいだなぁ」


ピップが呟く。横を団体旅行客が騒がしく通り過ぎていく。


そして到着するなり耳に響く轟音。


ゴゴゴゴゴ――。


「みんな気にならないのかな、この音……」


ピップは耳当ての調整をしながら歩いた。


人の流れに乗って進むと、川岸に展望デッキが見えてきた。


どうやらそこから滝が望めるらしい。


観光客の間をすり抜け、柵の前に出たピップは目を見開いた。


そこに広がる景色は――まさに圧倒的。


ガイドブックの言葉を裏切らない、今までに見たこともない雄大な滝だった。


上流の方までかすかに見える。しかし、あまりにも遠い。


まるでジオラマの模型を眺めているようだった。


観光客の会話が耳に入る。


「遊覧船も出てるみたい! ただ滝から50キロ地点で折り返しだけど」


「音はすごいけど、船の中ならシールドで快適よ」


「じゃあ乗ってみようか」


ピップは滝を眺めながら首をかしげる。


――どうして近くまで行けないんだろう?


近くの係員に尋ねてみた。


「滝の近くなんてダメダメ、危険すぎる。轟音で耳はやられるし、地響きもすごい。


水しぶきで視界もゼロだし、そもそも接近は不可能さ。


昔、この滝の近くに探検隊が入ったことがあるが、消息を絶ったんだ。


何があったのかは誰にもわからない――それ以来、立ち入りは禁止されている」


「なるほど……」


ピップは納得しつつも、あまり残念そうではなかった。


むしろレコーダーを確かめながら、足早に「ゴートナルリデイオン滝の歴史博物館」へ向かう。


展望デッキを後にすると、ピップの表情にはわずかな期待と好奇心の光が戻ってきた。


滝の姿は遠く、少し拍子抜けした気持ちもあったが、それでも今度は館内でどんな発見が待っているか――胸の奥でわくわくが膨らんでいた。


本命はそちらだったのかもしれない。

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