第37話『サボテンを置いたら、ユーマがじっと見ていた』

ユーマはことあるごとにサボテンを観る。


ボンッとした形に、トゲトゲが並んでいる。


サボテンは、最初からそこにあったみたいな顔をしていた。


ユーマの顔はニヤニヤしている。本人は気付いていないが…。


どこで手に入れたのかというと――それは、ついさっきのこと。


ハンバーグ定食を食べ終え、マスターに一声かけてレジへ向かう。


レジの横に、小さなサボテンが置かれていた。


ユーマは足を止める。


観る、というより、見られている気がした。


「かわいいでしょ?」


声を掛けたのはバイト君だ。


なんでもサボテンや多肉植物が好きらしく、たくさん育てているそうだ。


熱の入った解説が、遠くの方に聞こえた。


その間も、ユーマはサボテンを見ていた。


「わたし、サボテン好きかも?」


ユーマはポツリと呟いた。


「白リン……いやユーマさん!よかったら貰ってくれます?」


「くれるの?」


「はい!どうぞ。たくさんあるんで……増やすの楽しいんですよー」


新聞紙で包まれ、袋に入れられた。持ち帰りやすいようにしてくれたらしい。


「ありがとう」


ユーマはお礼を言うと店を出た。


帰り道でも、ユーマは袋の中を何度も覗いた。


ユーマはサボテンを観ている。


指をさすりながら、ユーマはサボテンを見ていた。


さっき刺さった場所は、まだ少しだけ痛かった。


それでも、ユーマはまたサボテンを観た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る