第27話『撮影会――写ってはいけないもの』

写真同好会に所属する浅井大悟。

記録好きの彼が、仲間たちと出かけた撮影会で見たものは――。


浅井大悟は、自室でカメラ(一眼レフ)のメンテナンスをしている。

三連休の初日、たまっていた記録の整理をした。


カメラを始めて一年が過ぎた。学校では写真同好会に所属している。

活動はあまり活発ではないが、撮影会と称して学校の許可をもらい、地方に遠征もしている。


写真は記録や観察に向いているので興味がわいた。メモを取るよりも不審がられないからだ。

撮る行為は好きだが、現像した写真にはあまり関心がない。


写真は観たままを写す。だから一瞬で記憶が蘇る。

観察には良いけれど、俺はそれが面白くない。現実を見せられているようで。


現実というのは、写真を見て思い出されるものほど、美化されていると思うからだ。頭の中で……。


メモやボイスレコーダーは、その時感じたことや周りの風景も記録される。

振り返って聞くと、その時の情景が思い出される。


記録が趣味の俺からすれば、情報はわかるが情景が薄れてしまう。


なので、俺はカメラと録音器具を両方持つ。


まあ、自分で撮っていない写真には興味が湧くけれども……。


明日はカメラ同好会、数人で日帰りの撮影旅に出かける。付き添いはOBの方だ。

なんでも、メンバーの一人に目的があるらしく、そこでしか見られない重機があるとのこと。


俺は、ただ出かけたいので参加する。まあ、他のメンバーも目的はそれぞれあるみたいだし。


明日は早いので、もう寝ることにした。

楽しい旅になればいいけど……。


大悟は眠りについた。


日も明けて間もない朝、大悟は集合場所の駅に着いた。

メンバーはすでに集まっていた。


始発の電車に乗り、目指す地方へ向かった。

メンバーは引率のOBを含めても5人だ。女子2名、男子3名。女子にはOBも含まれる。


女子2名は並んで座ったが、男子はそれぞれ別の席に座る。

俺も窓側に座り、景色を眺めている。


始発なのか、連休中日なのか、乗客は見当たらない。

俺たちの貸し切り状態で走っている。


電車で2時間ほど揺られて目的地の駅に着いた。


ここで皆、それぞれ分かれることになった。

女子チームはこのまま街の方へ。重機好きの彼は再び電車に乗って山間部へ。

俺ともう一人の男子は、それぞれ行きたい方へ。


OBが注意事項、連絡先、集合時間を伝えると、解散の号令がかかった。


俺と女子2人はどうやら同じ方向らしく、3人で街の方へ歩いた。


「浅井君は、何撮るの?」同級生の女子が尋ねる。


「俺?まだ決めてないけど……街の様子かな。寺とか神社とか」


「ふーん、そんなのどこにでもあるけどね」


「じゃあお前は何撮るんだよ!」


「私はネコ!」


「それこそ、どこにでもいるじゃん!」


OBの真紀子が笑う。


「真紀子さん、笑わないでくださいよ!男子は何もわかってないんだから。」

「真紀子さんは何撮るんですか?」


「私はこの街の建築物とかかな。せっかく来たんだしね」


同級生の女子は「それ良いアイデア!」と言いながら、都会の猫と地方の猫の違いを語りだした。


俺は少し距離を取って歩いた。

5分ほど歩いて、2人と別れた。


自分の時間だ……。


数週間後、廊下の一画に写真が展示された。


そこには建物やカフェの写真、山や川の風景写真、猫の写真、寺や神社の写真があった。


そして、その中に――


大きく引き伸ばされた、

グラップル付きフォワーダとタワーヤーダの写真があった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る