第25話『何もしない人間の時代――コルヴォ博士の記録』

コルヴォ博士は研究所のデスクで依頼書を眺め、眉間にしわを寄せていた。

財団からの案件だ。名前は伏せておくが、代表者とは個人的な繋がりがある。


依頼の内容はこうだ。

――「近い将来、家事支援ロボットが実用化される。現代と近未来をつなぐものを開発してほしい」


博士は考える。

財団の見方は妥当だろう。私もモーヴァを創った。いずれロボットが一家に一台、いや、一人に一台の時代が来るはずだ。


頭の中で現状を整理してみる。

料理はインスタントや冷凍食品、デリバリーでかなり時短できる。

洗濯や掃除も便利グッズがあふれている。


正直なところ、私は生活のすべてをモーヴァに任せている。以前は財団がやってくれていた。

――私は研究しかしない。無駄な時間をつくりたくないのだ。


台所ではモーヴァが忙しなく動いている。食事の準備らしい。


人は、基本的に動くのを嫌う生き物だ。特に、好きでもないことなら。

もちろん例外はある。だが私は、面倒くさいのだ。


そう思ったら、ますます面倒くさくなってきた。

私が手を動かさなくても、世界は勝手に進んでいく……。


ユーマの顔が浮かんだ。


博士は依頼書を伏せ、静かに研究へと戻っていった。

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