第19話『春パフェの席』
カフェ『ポレポレ』に、
今年も春の味覚パフェが帰ってきた。
桜をイメージした、
淡いピンクのソース。
ガラス越しの陽ざしに、
春色のパフェがきらめいている。
――――――
毎年この季節になると、
ユーマは決まった席に座る。
入口から三番目の窓際、
木のテーブル。
そこがユーマの、
“春の指定席”だった。
――――――
けれど今年は違った。
開店前から若い客たちが並び、
あの席にも先客がいた。
ユーマは少し困ったように立ち止まる。
「……わたし、席空く?」
少しだけ、
タイミングがずれていた。
「すみません。今日は混み合っていて……」
店員が言いかけた、そのとき。
その席にいた若い女性が、
にこっと笑って立ち上がった。
「どうぞ、この席。
毎年いらっしゃるんですよね?」
ユーマは目を丸くする。
「……見てた?」
「去年、隣で食べてたんです。
すごく美味しそうにしてたから」
二人は顔を見合わせて笑った。
――――――
席に座り、
ユーマはパフェを注文する。
ひとくちめをすくうと、
桜の香りがふわりと広がった。
やっぱり、この味!
得意げに、
さも自分が作ったかのような顔をする。
口に運ぶたび、
頬が少し緩んだ。
窓の外では、
風が桜を揺らしている。
カフェに、
小さな春の音色が流れ込んだ。
――――――
帰り際、
ユーマは店員を呼び止めた。
「シェフに伝えてください。
ありがとう。おいしい春を分けてもらいました。
絶品だった、って」
ユーマは静かにすまし顔で伝える。
ピンクのクリームが唇に付いていたが…。
――――――
翌日。
その言葉が届いたのか、
レジの横に小さなイラストが飾られていた。
微笑む桜の花。
ユーマは思わず、
微笑み返す。
店員もまた、見慣れたその様子にそっと笑っていた。
街もまた、やわらかな春に染まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます