第7話『理解できない存在を観察していたら話しかけられた』

コルヴォ博士は、地球のどこかに存在する施設で研究を続けている。


対象は、ユーマ――

そして、自身の興味を惹いたあらゆる存在。


それが生物であろうと、現象であろうと、分類不能の何かであろうと関係ない。

彼にとって重要なのは、ただ一つ。


――それが、満足できていないかどうか。


「興味深い……実に興味深い……」


博士は、胸元のレコーダーに囁く。


視線の先。

草原に寝転ぶユーマ。頭の上には青いリンゴ。


「観察対象……行動原理は不明。再現性なし。規則性なし。

 ――ゆえに、極めて価値が高い」


白髪をかき上げる仕草すら、半ば無意識だ。

眼鏡の奥の視線は、今にもユーマを焼きそうだ。


「この存在は、理論体系の外側にある。

 ならば体系を書き換えるか、あるいは――」


わずかに、口元が歪む。


「分解して理解するしかない」


ユーマは、ただ空を見ている。

風に揺れる草と同じように、そこに“いる”。


博士は一歩、距離を詰めた。


そのとき。


ユーマが、こちらを振り向いた。


にっこりと笑う。


「博士、隠れてないで一緒に寝転んだら?」


「……っ」


コルヴォ博士は動きを止めた。


レコーダーの録音は続いている。

沈黙も、呼吸も、そのまま記録されていく。


やがて、ゆっくりとスイッチを切った。


「……記録終了」


長い間を置いて、小さく呟く。


「……被観察側からの干渉を確認」


ほんのわずかに、声が揺れる。


「……実に、興味深い……」

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