第十四話:好意

 私は先生の話を聞いて胸がモヤモヤするのを感じた。つまり、先生と詠美先生は両思いだという事だ。更に、共依存している。


 先生は言った。私が一緒に居たいと言ったら、無理だって。


「先生、花乃は本当に先生が好きなんだよ。分かってるの?」


「分かってる」


「なのに一緒に居てくれないの?」


「居たくても、無理なんだよ。科が違うから、詠美とも花乃とも離れる事になる。竹中さんとは居れるかもだけど」


「え、詠美先生とも離れるの?」


「詠美、小児科の患者だもんな」


「うん。だから、離れちゃうかな。居たいんだけどな……」


「花乃だって、先生と居たいよ……」


 絞り出す様な声で私は呟いた。胸が苦しくなる。先生と一緒に居れなくなるなんて。お昼や休憩の時間に会うだけじゃ足りない。もっとずっと一緒に居たい。


「気持ちには応えたいけどな……」


「せんせ、良いこと思いついたよ」


 ずっと黙っていた直人君が言った。ぱっと太陽が頭に浮かぶぐらい明るい笑顔で。


「何? 竹中さん」


「約束、すれば良いの」


 自信ありげに言った。私の頭にはクエスチョンマークが浮かんだ。


「約束?」


 直人君以外が同時に言った。約束って、何の約束をすれば良いんだろう。


「花乃ちゃんが、退院したら、せんせが花乃ちゃんと詠美せんせと一緒に居るよって」


「……一緒に居るって、それじゃ同居とかしかないんじゃ……」


 先生が呟いた。それに私ははっとした。


「そうだ、そうだよ! 一緒に住めば良いんだ!」


「何処でだよ」


「先生の家」


「はぁ!?」


「颯哉君、そうしようよ! 良いでしょ?」


 詠美先生の方がノリノリだ。先生は唸りながら腕を組んで考えている。やがて深く息を吐いて言った。


「分かった。住んでも良いよ。退院してからな」


「やった! 直人君も?」


「そうだよ。竹中さんだけ置いてなんていかない」


「先生、約束しよう? 花乃と、直人君が退院したら四人で住むの」


「あぁ、分かった。約束する」


「後もう一つ」


「何だよ」


 先生が不思議そうな顔をした。私は息を吸って言った。


「もう人を傷つけないで」


「……。分かった」


 先生は静かに言った。あの時は破られたから、もう一回。


 星降る夜に、私達は誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る