第十一話:病みと残り時間
私が産まれたことで、家族は壊れた。その事実に私は絶望していた。朝起きてから私はずっと布団にこもっている。
「花乃、点滴だけでもさせてくれよ」
「どうせしたって変わらないよ」
私は布団に篭ったまま言う。
「変わるだろ。してりゃ治るんだから」
「花乃は居ちゃ駄目なの。だからこのまま死ぬの」
「いや、死なせない」
「何で」
「患者だからだ」
先生は布団を剥ぎ取った。私が声を上げる隙も作らずに私の手を取って針を刺した。
「……痛い」
「こうしなきゃやらないだろ」
「患者だからって治すの?」
「それが医者の仕事だ。患者第一なんだから」
意味が分からない。患者第一? 人を傷つける様な医者ばかりの癖に。
「花乃なんて、産まれた意味無いのに」
そう、私に産まれた意味はない。家族を壊して不幸しか齎さなかった私には。きっと死んだ方がいいんだ。
そんな私の言葉に先生は息を吐いていった。
「……花乃、良いこと教えてやる」
「何?」
「お前が産まれたからって罪がある訳じゃない。悪いのは親だ。後先考えずに産んだ親の責任だ。自分を責めるくらいなら親を責めろ」
「何でそんなこと言えるの? 先生に何も分からないでしょ」
「分かるさ。俺だって必要とされてなかったんだから」
先生はそう言って上を向いた。数分そうして思い出した様に言った。
「お前、後三週間で退院だ」
「え? 本当?」
「そう。このまま症状が悪化しなけりゃな」
「……そっか」
私は素直に喜べなかった。お母さんにあんな事を言われたからだ。その様子を感じ取ったのか先生は私の頭に手を置いて言った。
「あんな親の事なんか忘れろ。その方が楽になる。お前の存在は俺の存在意義を作ってるって事を忘れるな」
「花乃が、先生の存在意義?」
「そう。俺は医者。お前は患者。医者は患者を助けるもんだ。患者がいなけりゃ医者は何も出来ない。救うべき人がいなくなるんだから。それと、お前は気づいてないかもしれないけど、竹中さんな、お前に会ってから笑顔増えてるんだよ」
その言葉に、私に乗っていた肩の荷物がふっと消えた気がした。
「お前は居ていい。で、お前は医者にとって、大事な存在であり、お前のお陰で幸せを感じる人もいる。それを忘れるな」
私はその言葉に胸が熱くなった。
「……何泣いてんだよ」
先生は少し穏やかな声で言った。私は大粒の涙を拭って先生に抱きついた。それを嫌がる事なく、先生は受け入れた。
「本当、ガキだな」
そう言って先生は私の背を撫でた。
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