第56話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

最終後日談 あの日の京を、もう一度

春。

現代。

道場の庭では、桜が咲いていた。

風が吹くたび、花びらが舞う。

朝稽古を終えた門下生たちが、畳に座り込んでいる。

「いやぁ……先生、今日も強すぎますって」

若い門下生が肩で息をする。

「本当に七十前なんですか?」

別の門下生も苦笑した。

道場の中央。

源蔵は竹刀を持ったまま、静かに立っていた。

「まだまだ甘い」

短く言う。

だが、その顔には少し笑みがある。

昔より、柔らかい顔だった。

そのとき。

テレビの音が聞こえた。

休憩所で流れていた観光番組。

『春の京都特集』

画面には、見慣れた町並みが映る。

古い通り。

神社。

石畳。

その瞬間。

源蔵の動きが止まった。

「先生?」

門下生が不思議そうに見る。

源蔵は答えない。

ただ。

静かに画面を見ていた。

京。

あの町。

戦った場所。

笑った場所。

守った場所。

胸の奥が、少しだけ熱くなる。

やがて、門下生の一人が言った。

「先生、京都とか行ったことあるんですか?」

源蔵は少し考えた。

そして。

小さく笑う。

「ああ」

短く。

「昔にな」

門下生たちは笑う。

「またまたぁ」

「昔って江戸時代じゃないんですから」

冗談交じりの声。

だが。

源蔵は何も言わない。

ただ、静かに竹刀を見る。

そのときだった。

道場の外。

風が吹く。

桜が舞う。

一枚の花びらが、源蔵の肩に落ちた。

そして――

一瞬。

聞こえた気がした。

「またやりたいですねぇ」

軽い声。

振り向く。

誰もいない。

だが。

源蔵は、ふっと笑った。

「……やれやれ」

小さく呟く。

脳裏に浮かぶ。

沖田総司の笑顔。

不器用な

土方歳三。

豪快に笑う

近藤勇。

飄々とした

坂本龍馬。

そして。

涙を浮かべながら笑っていた綾。

全部。

消えていない。

源蔵の中に、残っている。

そのとき。

門下生が竹刀を持って駆け寄る。

「先生!」

真っ直ぐな目。

「もう一本、お願いします!」

源蔵は、その顔を見る。

若い。

未来のある目。

しばらく見つめ。

そして。

静かに頷いた。

「ああ」

竹刀を構える。

風が吹く。

桜が舞う。

かつて、幕末の京で振るった竹刀。

その剣は、今も変わらない。

守るために。

人のために。

源蔵は、一歩踏み込む。

――バシン!!

乾いた音が、春空に響いた。

その瞬間。

遠い京の空で。

誰かが、少しだけ笑った気がした。

【令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜 完】

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令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜 ミヤボン @saot

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