第42話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第42話 炎の屋敷

夜の京。

炎が、いくつも空を赤く染めていた。

煙が流れ、空気が熱い。

その中を――

源蔵たちは走っていた。

「急げ!」

前を走るのは

沖田総司。

足取りは軽いが、表情は真剣だった。

その横で、綾が必死に走る。

「はぁ……っ、はぁ……!」

息が荒い。

煙が喉を焼く。

「間に合って……!」

願うような声。

前方。

炎に照らされた屋敷が見えた。

大きな屋敷。

門の前では――

すでに戦闘が始まっていた。

――ギィン!!

刃の音。

怒号。

「押し返せ!!」

叫ぶ声。

そこにいたのは――

新選組隊士たち。

必死に戦っている。

黒装束の男たち。

数が多い。

明らかに普通の刺客ではない。

源蔵が止まる。

目を細める。

「多いな」

短く言う。

沖田が笑う。

だが、冷たい笑みだった。

「ええ……多すぎますねぇ」

次の瞬間。

敵が突っ込んでくる。

刀が振り下ろされる。

――ギィン!!

沖田が受ける。

軽やかに弾く。

「源蔵さん!」

呼びかける。

源蔵が踏み込む。

――バシン!!

竹刀が走る。

一撃。

敵が吹き飛ぶ。

さらに二人。

同時に来る。

――ギィン!

弾く。

間髪入れず。

――バシン!!

二人目、倒れる。

門前の敵が崩れ始める。

だが――

まだ多い。

屋敷の中から声。

「守れ!!」

叫ぶ声。

別の隊士が走り出てくる。

「要人は無事か!?」

沖田が問う。

隊士が答える。

「奥の間にいます!」

まだ生きている。

間に合った。

綾が息を吐く。

「よかった……!」

だが、その瞬間――

ドン。

重い足音。

戦場の空気が変わった。

敵が、左右に分かれる。

道が開く。

その奥から。

一人。

歩いてきた。

大柄。

黒い外套。

顔の半分を覆う仮面。

異様な存在感。

綾が息を呑む。

「……なに、あれ」

誰も答えない。

沖田の笑みが消えた。

「……来ましたね」

小さく呟く。

男が止まる。

仮面の奥から、低い声。

「邪魔だ」

その一言。

次の瞬間――

動いた。

速い。

大柄なのに。

信じられない速さ。

――ギィン!!

沖田が受ける。

だが。

衝撃が重い。

「……っ!」

沖田が一歩下がる。

珍しい。

押された。

周囲の隊士が息を呑む。

敵は止まらない。

二撃目。

三撃目。

重い。

鋭い。

沖田が防ぐ。

だが――

完全には受けきれない。

袖が裂ける。

血が滲む。

綾が叫ぶ。

「沖田さん!」

その瞬間。

前に出る影。

源蔵だった。

一歩。

踏み出す。

竹刀を構える。

仮面の男が止まる。

源蔵を見る。

わずかに首を傾けた。

「……お前か」

低い声。

初めて。

感情が混じった。

源蔵が答える。

「そうだ」

短く。

次の瞬間――

――ギィン!!

激突。

重い音。

竹刀と刀がぶつかる。

火花。

仮面の男の力。

重い。

だが。

源蔵の足は動かない。

一歩も引かない。

仮面の男が目を細める。

「……なるほど」

小さく呟く。

再び打ち込む。

速い。

だが――

源蔵が受ける。

そして。

一瞬の隙。

――バシン!!

竹刀が走る。

仮面の男の肩に当たる。

鈍い音。

仮面の男が、初めて後ろへ下がった。

周囲がざわつく。

「押した……?」

隊士の声。

だが。

仮面の男は、笑った。

低く。

くぐもった笑い。

「面白い」

短く言う。

そして――

腰から何かを取り出した。

小さな筒。

次の瞬間。

――パン!!

煙が広がる。

白い煙。

視界が消える。

「煙だ!」

誰かが叫ぶ。

数秒。

煙が流れる。

そして――

仮面の男の姿は消えていた。

逃げた。

沖田が小さく息を吐く。

「……逃げましたねぇ」

残念そうな声。

だが、どこか楽しそうでもあった。

源蔵は黙って立っていた。

竹刀を握ったまま。

そのとき。

屋敷の奥から、老人が出てきた。

護衛に支えられている。

要人。

無事だった。

近くの隊士が言う。

「ご無事です!」

老人が頷く。

そして。

低く言った。

「……奴らの狙いは」

少し間。

全員が耳を傾ける。

「ここではない」

静まり返る。

綾が呟く。

「……え?」

老人が続ける。

「本命は……別だ」

その言葉。

重かった。

源蔵が顔を上げる。

炎の向こう。

京の空。

まだ、火は消えていない。

戦いは。

まだ終わっていなかった。

むしろ――

これからが、本当の戦いだった。

(続く)

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