第43話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第43話 本命の影

炎の屋敷。

まだ煙が残っていた。

倒れた敵。

傷ついた隊士。

そして――

静まり返った空気。

屋敷の奥から現れた老人。

護衛に囲まれながら、ゆっくりと歩いてくる。

その前に立つのは、

近藤勇。

深く頭を下げた。

「ご無事で何よりです」

低く、落ち着いた声。

老人は小さく頷く。

だが、その表情は硬い。

「……まだ終わっておらん」

静かな声。

その言葉に、周囲が緊張する。

横に立つ

土方歳三が問う。

「どういう意味です」

短く。

鋭く。

老人が息を整えた。

そして。

言った。

「奴らの狙いは……ここではない」

その言葉。

第42話の最後の続きだった。

綾が思わず声を出す。

「ここじゃないって……?」

まだ火の手は上がっている。

ここも十分に危険だった。

だが。

老人は首を横に振る。

「これは……囮だ」

空気が凍った。

沖田が目を細める。

「囮……ですか」

低く呟くのは

沖田総司。

老人が頷く。

「本命は――」

少し間。

そして。

「京の中枢」

その一言。

重かった。

源蔵が問う。

「どこだ」

短い。

だが、核心を突く問い。

老人が答える。

「会合所だ」

空気が変わった。

近藤が目を見開く。

「まさか……!」

土方が低く言う。

「今夜、集まるのか」

老人が頷く。

「幕府の重役……そして」

さらに続ける。

「外国との交渉役」

綾が息を呑む。

「それって……」

言葉が出ない。

意味は分かる。

そこが襲われれば――

京が終わる。

沖田が小さく笑った。

だが、その笑みは冷たい。

「なるほど」

静かに言う。

「火事で混乱させて……」

「護りを薄くする」

土方が続ける。

完全に罠だった。

源蔵が空を見上げる。

炎。

まだ消えない。

囮は成功している。

敵の思惑通り。

「距離は」

源蔵が問う。

老人が答える。

「ここから……遠くない」

その言葉。

近藤が振り向く。

「急ぐぞ」

迷いはない。

隊士たちが動き出す。

だが、そのとき。

一人の隊士が走ってきた。

息を切らしながら。

「報告!!」

声が震えている。

「西の通りで……敵の増援が確認されました!」

空気がさらに重くなる。

土方が舌打ちする。

「道を塞ぐ気か」

完全に計画的だった。

沖田が静かに言う。

「本気ですねぇ」

楽しそうではない。

純粋な警戒だった。

綾が小さく呟く。

「……間に合うの?」

不安。

そのまま声になっていた。

源蔵が竹刀を握る。

そして。

言った。

「間に合わせる」

短い。

だが、重い言葉。

その一言で。

綾の呼吸が少し落ち着く。

そのとき――

遠く。

鐘の音。

ゴォン……。

ゴォン……。

夜に響く音。

嫌な予感が強くなる。

隊士の一人が言った。

「……会合の時間です」

静まり返る。

もう。

始まっている。

近藤が叫ぶ。

「全員、移動!!」

一斉に走り出す。

炎の街を抜けて。

煙の中を。

屋根の上。

路地の奥。

京の中心へ。

源蔵は走りながら、前を見ていた。

その先。

闇の中。

ふと。

影が動いた。

一瞬だけ。

屋根の上に立つ影。

仮面。

あの男。

第42話で現れた――

仮面の男だった。

源蔵の目が細くなる。

仮面の男は、じっと見ていた。

そして。

ゆっくりと。

指を一本、立てた。

挑発。

明らかだった。

次の瞬間。

影は消えた。

源蔵が小さく呟く。

「……来るか」

低い声。

戦いは。

次の段階へ進もうとしていた。

京の運命。

それを巡る戦いが――

今、始まろうとしていた。

(続く)

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