第39話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第39話 夜を駆ける影

――ダンッ!

瓦が鳴る。

夜の京。

屋根の上を、影が走っていた。

速い。

異様なほどに速い。

その後ろ――

源蔵が追う。

足音は重くない。

一定。

無駄がない。

「速ぇな……!」

低く呟くのは、土方歳三。

屋根の下から叫ぶ。

「左右に回れ! 逃がすな!!」

隊士たちが散る。

別の道へ。

包囲に動く。

その横で、軽やかな影が並ぶ。

「なかなかですねぇ」

笑っているのは

沖田総司。

屋根から屋根へ。

軽く飛ぶ。

まるで風のようだった。

逃げる影が振り返る。

一瞬。

その目が光る。

ただの刺客ではない。

明らかに、覚悟のある目だった。

「止まれ」

源蔵が低く言う。

返事はない。

さらに速度が上がる。

――ダン!

屋根の端。

敵が飛ぶ。

下へ。

路地。

「下だ!」

沖田が声を上げる。

源蔵も続く。

――ドン!

地面に着地。

石畳。

狭い路地。

暗い。

逃げる影が走る。

足音が響く。

――タッ、タッ、タッ!

背後から、別の足音。

「回り込め!!」

土方の声。

左右の路地から、隊士たちが現れる。

包囲が狭まる。

だが――

前に、影が現れた。

三人。

立ちはだかる。

護衛。

刀を抜く。

――シャッ。

音が鋭い。

沖田が笑う。

「護衛付きですか」

楽しそうだった。

だが、目は冷たい。

敵が動く。

――ギィン!!

刃が走る。

沖田が受ける。

――ギィン!

火花。

その間。

源蔵は止まらない。

真っ直ぐ進む。

立ちはだかる一人。

刀が振り下ろされる。

――ギン!

竹刀が弾く。

即座に――

――バシン!!

一撃。

敵が吹き飛ぶ。

倒れる。

動かない。

次。

二人目。

横から斬り込む。

――ギィン!

受ける。

踏み込む。

最小の動き。

――バシン!!

喉元寸前。

止まる。

敵の体が崩れた。

最後の一人。

沖田が相手していた。

数合。

――ギィン!

――ギィン!

鋭い攻防。

そして。

「終わりです」

静かな声。

――シュッ!

沖田の一閃。

敵の刀が弾き飛ぶ。

倒れる。

護衛、全滅。

その先。

逃げていた男が振り返った。

袋小路。

行き止まり。

左右は壁。

逃げ場なし。

男がゆっくり振り向く。

顔が見えた。

見たことのない男。

だが。

ただ者ではない。

空気が違う。

服装も違う。

装備も違う。

格が違う。

「……ここまでか」

低く言う。

息は乱れていない。

まだ余裕がある。

源蔵が歩み寄る。

一歩。

また一歩。

男が刀を抜く。

――シャッ。

静かな音。

構えが美しい。

熟練者。

沖田が小さく呟く。

「強そうですねぇ」

少し楽しそう。

だが。

源蔵が前に出る。

「任せろ」

短く言う。

沖田が後ろへ下がる。

男が踏み込む。

――ギィン!!

最初の衝突。

重い。

竹刀が揺れる。

普通の相手ではない。

二撃。

三撃。

速い。

鋭い。

だが――

源蔵の目が静かになる。

呼吸が整う。

一瞬。

男の動きが、見えた。

次の瞬間。

――バシン!!

竹刀が走る。

男の刀が弾かれる。

体勢が崩れる。

そのまま。

――ドン!

男が壁に叩きつけられた。

刀が落ちる。

――カラン。

静寂。

源蔵が竹刀を向ける。

喉元。

動けない。

土方が追いつく。

「……捕まえたな」

低く言う。

隊士たちが男を押さえる。

縄をかける。

男が笑った。

小さく。

かすかに。

「……遅い」

低い声。

綾が息を呑む。

「何が……?」

男が顔を上げる。

目が光る。

冷たい。

「もう……動き出している」

その言葉。

重かった。

源蔵が問う。

「何がだ」

男が笑う。

「京が……燃える」

静かな声だった。

だが――

確実に。

何かが始まっていた。

夜風が吹いた。

冷たい風だった。

(続く)

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