第36話
令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜
第36話 京の裏路地
屯所の一室。
夜。
灯りが一つ、静かに揺れていた。
机の上には、数枚の地図。
印がいくつも付けられている。
「これが、例の場所ぜよ」
低く言ったのは、坂本龍馬だった。
指で地図の一角を示す。
京の裏手。
人通りの少ない区域。
源蔵が腕を組む。
「裏の連中か」
龍馬が頷く。
「最近、妙に動きが活発になっちょる」
その横で、近藤勇が地図を覗き込む。
「例の寺の連中と関係があると見ている」
静かな声。
だが、確信があった。
「だが、証拠がない」
腕を組んだまま言うのは、土方歳三。
「そこで――」
龍馬が続ける。
「ある男に会ってほしい」
綾が眉をひそめる。
「ある男?」
嫌な予感しかしない顔だった。
龍馬が少し笑う。
「京の裏事情に詳しい男ぜよ」
一瞬、間。
そして。
「……情報屋じゃ」
綾が顔をしかめた。
「絶対、危ないやつじゃん」
源蔵が言う。
「行くぞ」
即答だった。
「ですよねー!!」
綾が頭を抱える。
夜。
京の裏路地。
月明かりが、細い道を照らしていた。
狭い。
暗い。
建物同士が近すぎて、空が細くしか見えない。
綾が小声で言う。
「……めちゃくちゃ帰りたい」
源蔵は前を歩く。
足音は一定。
迷いがない。
「ここか」
小さな店の前で止まった。
看板もない。
ただ、古びた扉があるだけ。
源蔵が軽く叩く。
――コン。
――コン。
しばらくして。
内側から声。
「誰だ」
低い声。
警戒している。
源蔵が答える。
「客だ」
短い。
沈黙。
しばらくして――
ギィ……
扉が開いた。
中から顔を出した男。
細い目。
痩せた体。
油断のない視線。
「……見ない顔だな」
綾が少し後ろに下がる。
(怖い怖い怖い)
心の声が顔に出ていた。
源蔵が言う。
「話がある」
男が目を細める。
「誰の差し金だ」
源蔵が答える。
「坂本龍馬」
その瞬間。
男の目が変わった。
一瞬だけ。
明らかに。
反応した。
「……龍馬の」
小さく呟く。
少し間を置いて。
「入れ」
扉が大きく開いた。
中は暗い。
棚には紙束。
巻物。
情報屋の店だった。
男が奥へ歩きながら言う。
「で、何が知りたい」
源蔵が言う。
「最近、動いてる連中だ」
男が止まる。
振り返る。
「……面倒な話だな」
だが、完全には拒まない。
机の上に、紙を広げた。
「最近な」
指で示す。
「見慣れない連中が増えてる」
綾が覗き込む。
「見慣れない?」
男が頷く。
「腕が立つ」
短い言葉。
「しかも……」
少しだけ声を落とす。
「刀が違う」
源蔵が目を細める。
「違う?」
男が言う。
「異国製だ」
空気が変わった。
綾が思わず言う。
「え、ちょっと待って」
嫌な予感しかしない。
「外国絡みってこと?」
男が肩をすくめる。
「そこまでは知らん」
だが。
顔は明らかに警戒していた。
「ただ――」
紙を指す。
「この辺りで動いてる」
地図の一点。
港に近い場所だった。
「倉庫街か」
源蔵が呟く。
男が頷く。
「夜だけ動いてる」
その言葉が終わった瞬間。
外。
足音。
――コツ。
――コツ。
綾が小声で言う。
「ねえ」
源蔵を見る。
「つけられてない?」
源蔵が無言で頷く。
「出るぞ」
扉を開ける。
外。
暗い路地。
誰もいない。
だが――
気配がある。
次の瞬間。
影が動いた。
――ギン!
刃。
飛び出してきた男。
だが。
――バシン!
源蔵の竹刀が弾く。
一撃。
男が倒れる。
さらに。
二人。
三人。
同時に来る。
――バシン!
――バシン!
連続。
無駄なし。
一瞬で制圧。
静寂。
綾が息を吐く。
「……終わった?」
源蔵が倒れた男を調べる。
懐から、何かを取り出す。
小さな金属。
見慣れない形。
綾が覗き込む。
「なにこれ……」
源蔵が言う。
「印だ」
金属の表面。
刻まれていた。
見慣れない紋。
異様な形。
綾が呟く。
「なんか……嫌な予感する」
源蔵が答える。
「当たっている」
短く。
その言葉が、妙に重かった。
源蔵が空を見上げる。
夜はまだ深い。
だが。
何かが動いている。
確実に。
次の戦いへ向けて。
倉庫街。
そこが。
次の場所だった。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます