第29話
令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜
第29話 散らばる戦場
京の夜は、もう静かではなかった。
あちこちで火の手。
悲鳴。
刃の音。
「西の通りで交戦中!」
隊士の声が響く。
「北も動いてる!」
報告が飛び交う。
土方歳三が刀を握り直す。
「分かれろ」
短い命令。
「各隊、持ち場を守れ!」
その声に、隊士たちが動く。
京は今――
いくつもの戦場に分かれていた。
西の通り。
敵が五人。
囲むように動く。
「包囲か……」
土方が低く呟く。
「いい度胸だ」
次の瞬間。
――ギンッ!
刀が走る。
一人、倒れる。
二人目が突っ込む。
だが。
――ガン!
弾かれる。
「甘ぇ」
土方の動きは重く、鋭い。
だが敵も弱くない。
連携してくる。
「ただの浪士じゃねぇな……!」
土方が言う。
確実に、鍛えられている。
別の路地。
風のような影。
沖田総司。
笑っている。
だが、その剣は速い。
――ギン!
一瞬。
一人、倒れる。
さらに。
――ギィン!
二人目。
三人目。
「速い……」
敵が思わず後ずさる。
だが。
一人が動く。
沖田の動きを読む。
「……おや?」
沖田が少し驚く。
刃がかすめる。
袖が裂ける。
「慣れてきてますねぇ」
楽しそうに笑う。
だが、目は鋭い。
次の瞬間。
――ギン!!
敵が倒れる。
速さは、まだ上だった。
別の路地。
静か。
足音だけ。
源蔵が歩いていた。
竹刀を肩に。
気配。
右。
一歩。
――バシン!
影から出た男が倒れる。
左。
もう一歩。
――バシン!
二人目。
無駄がない。
だが。
源蔵が止まる。
「……違うな」
低い声。
綾が追いつく。
「何が?」
息を切らしながら聞く。
源蔵が言う。
「囮だ」
短い。
重い言葉。
「え?」
綾が顔をしかめる。
その瞬間。
背後から気配。
「危ない!」
敵が一人。
綾へ向かってくる。
刃が振り下ろされる。
だが――
――バシン!
源蔵の竹刀が間に入る。
敵の刀が弾かれる。
「下がれ」
短い声。
敵がもう一度突っ込む。
だが。
――バシン!
一撃。
倒れる。
静寂。
綾が膝に手をつく。
「今の完全に狙われたよね!?」
源蔵が頷く。
「情報役だからだ」
綾が青ざめる。
「うわ……怖……」
そのとき。
遠くから足音。
速い。
息を切らしている。
現れたのは――
坂本龍馬。
珍しく、焦っていた。
「見つけたぜよ……!」
肩で息をする。
綾が目を丸くする。
「龍馬さんがそんな顔してるの初めて見た……」
龍馬が続ける。
「出入りが多い場所がある」
真剣な声。
「夜だけ動いとる」
源蔵が聞く。
「どこだ」
龍馬が答える。
「京の外れの寺じゃ」
空気が止まる。
「大量の人が出入りしよる」
綾が呟く。
「……本拠地?」
龍馬が頷く。
「可能性は高いぜよ」
別の場所。
暗い室内。
灯りが揺れる。
並ぶ剣士たち。
その前に立つ男。
岡田以蔵。
静かに刀を振る。
――ヒュッ。
空気が裂ける。
「まだ足りん」
低い声。
「もっと集めろ」
命令が落ちる。
剣士たちが震える。
だが、逆らえない。
以蔵の目は、燃えていた。
再び京。
戦いが続く。
だが――
中心が見えてきた。
屯所。
近藤勇が立つ。
その顔は静かだが、強い。
龍馬の話を聞き終えたあと。
一言。
「叩く」
短い。
だが重い。
土方が頷く。
「次は、そこだな」
沖田が笑う。
「楽しみですねぇ」
綾が頭を抱える。
「絶対ヤバいやつじゃん……」
源蔵は静かに言う。
「行くぞ」
迷いはない。
夜。
京の外れ。
古びた寺。
静まり返っている。
だが――
中から、音。
――ギン。
刀の音。
確かに聞こえる。
そこが。
敵の中心。
次の戦場。
本拠地。
静かな寺の中で。
何かが、動いている。
(続く)
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