第24話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第24話 地下への道

屯所の空気は、重かった。

机の上に広げられた地図。

その一点に、全員の視線が集まっている。

「ここだ」

低い声で指したのは、土方歳三。

「古い蔵の下に、妙な出入りがある」

「地下……」

綾が顔をしかめる。

「絶対ロクな場所じゃないやつ……」

その横で、静かに立つのは近藤勇。

「だが、踏み込まねばならん」

迷いのない声。

沖田が軽く笑う。

沖田総司。

「楽しみですねぇ」

「楽しみじゃないって!!」

綾がすぐにツッコむ。

その間、源蔵は何も言わない。

ただ、地図を見ていた。

「いるな」

ぽつりと呟く。

「何が!?」

「強いのが」

短い答え。

空気が少しだけ冷える。

夜。

古びた蔵の前。

風が静かに吹く。

人の気配は――ある。

「見張りが二人」

土方が小声で言う。

「俺が行く」

一歩前へ。

だが、その横を源蔵が通り過ぎた。

「任せろ」

静かな一言。

一歩。

――バシン!

一人、崩れる。

音も最小。

もう一歩。

――バシン!

二人目も倒れる。

綾が目を丸くする。

「静かすぎて逆に怖い!」

沖田が笑う。

「さすがですねぇ」

近藤が頷く。

「入るぞ」

戸が開く。

中は暗い。

そして――

床の一部。

わずかな隙間。

土方が足で押す。

ギギギ……

板が開く。

下へ続く階段。

暗い。

深い。

冷たい空気が流れ出す。

「うわ……」

綾が顔を引きつらせる。

「戻りたい……」

「無理だ」

源蔵の即答。

「だと思ったよ!!」

たいまつが灯される。

光が揺れる。

一歩ずつ、降りていく。

足音が響く。

――コツ。

――コツ。

湿った空気。

嫌な静けさ。

「……広いな」

土方が呟く。

やがて――

地下の広間。

そこにあったのは。

人。

何人も。

縛られている。

剣士たち。

意識はある。

だが、動けない。

「こんなに……!」

綾が息を呑む。

「ひどい……」

近藤の顔が険しくなる。

「解け!」

隊士が駆け寄る。

縄を解いていく。

そのとき。

奥から――音。

――カン。

――カン。

金属音。

全員が顔を向ける。

さらに奥。

広い空間。

そこでは――

剣士同士が戦っていた。

無理やり。

逃げ場もない。

ただ、斬り合わされている。

「何これ……!」

綾の声が震える。

「訓練場か」

土方が低く言う。

源蔵が呟く。

「兵を作っている」

そのとき。

奥の影が動いた。

ゆっくりと現れる男。

長身。

鋭い目。

「……侵入者か」

低い声。

知らない顔。

だが、ただ者ではない。

「ここは、貴様らの来る場所ではない」

刀を抜く。

空気が張り詰める。

「敵幹部か……」

土方が構える。

沖田が笑う。

「やっと出てきましたね」

男が言う。

「ここは“選別の場”」

ゆっくりと歩く。

「弱き者は落ちる」

刃が光る。

「強き者だけが残る」

源蔵が前に出る。

竹刀を持つ。

静かに。

男が笑う。

「木の棒で来るか」

一歩。

踏み込む。

戦いが――始まる。

だが。

その瞬間。

源蔵が止まる。

奥を見る。

さらに奥。

厚い扉。

閉ざされたまま。

だが――

感じる。

明らかに違う気配。

重い。

鋭い。

深い。

「……いる」

源蔵の声。

綾が震える。

「なにが……?」

源蔵が答える。

「本命だ」

そのとき。

扉の向こう。

――ヒュッ。

刀の風切り音。

静かに。

確かに。

聞こえた。

誰かが、いる。

その剣は――

ただ者ではない。

まだ姿は見えない。

だが。

そこにいる。

確実に。

次の戦いが、始まる。

(続く)

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