第23話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第23話 奪われた剣

夜の京。

ざわめきが、また広がっていた。

「……また、ですか」

震える声。

小さな道場の前で、若い弟子が膝をついていた。

「師範が……いきなり……」

綾が顔をしかめる。

「消えたの?」

弟子が何度も頷く。

「一瞬で……」

中に入る。

道場は荒れていない。

木刀も並んだまま。

床もきれい。

だが――

人だけがいない。

「完全に同じ……」

綾が呟く。

源蔵は静かに周囲を見回す。

「数が増えている」

低い声。

そのとき。

「もう五件目だ」

背後から声。

振り向くと――

土方歳三。

腕を組んで立っている。

「全部、腕の立つ剣士ばかりだ」

「やっぱり狙ってる……」

綾が顔を青くする。

その横で、軽い声。

「面白いですねぇ」

沖田総司。

笑っている。

「完全に選んでます」

「面白くないって!」

綾がツッコむ。

土方が続ける。

「屯所で話がある」

短い一言。

源蔵は頷く。

屯所。

重い空気。

机を囲む面々。

中心に立つ男。

近藤勇。

「守るだけでは足りん」

静かな声。

「追うしかない」

綾が小さく呟く。

「攻めるってこと……?」

土方が頷く。

「そういうことだ」

沈黙。

源蔵が一言。

「剣を奪っている」

視線が集まる。

沖田が興味深そうに見る。

「剣?」

綾が首を傾げる。

源蔵は続ける。

「人ごとだ」

短い説明。

だが、意味は重い。

近藤がゆっくり頷く。

「……兵を作ろうとしているか」

空気が張り詰める。

その夜。

細い路地。

足音。

新選組と源蔵が進む。

「来る気がする……」

綾が小声で言う。

その瞬間。

――影。

屋根から、地面から。

黒布の集団。

無言。

一斉に動く。

「やっぱり来た!!」

綾が叫ぶ。

「捕らえろ!」

土方の号令。

戦闘が始まる。

――ギン!

沖田が飛び込む。

速い。

一瞬で二人を倒す。

「遅いですね」

笑っている。

だが目は鋭い。

土方が真正面から叩き込む。

――ガンッ!

重い一撃。

敵が吹き飛ぶ。

源蔵が前へ。

一歩。

――バシン!

一人。

――バシン!

二人。

無駄がない。

最小の動き。

敵が崩れる。

だが――

数が多い。

囲まれる。

「うわ、多いって!!」

綾が必死に構える。

そのとき。

敵の一人が荷を落とす。

布がほどける。

中から――

人。

縛られている。

「生きてる!!」

綾が駆け寄る。

「大丈夫!?」

男がかすかに目を開く。

息が荒い。

「……地下……」

途切れ途切れの声。

「地下に……連れて……」

それだけ言って、気を失う。

空気が凍る。

土方が低く呟く。

「地下……か」

沖田が笑う。

「面白い場所に連れて行ってくれそうですね」

「楽しそうに言うな!!」

綾が叫ぶ。

戦いは終わった。

敵は撤退。

だが、何かを残した。

確実に。

別の場所。

暗い空間。

灯りが揺れる。

そこには――

複数の剣士。

縛られ、並べられている。

その前に立つ男。

岡田以蔵。

静かに刀を振る。

――ヒュッ。

空気が裂ける。

一人の剣士を見る。

「立て」

低い声。

恐る恐る立ち上がる男。

震えている。

以蔵が構える。

「来い」

短い命令。

男が突っ込む。

だが――

一瞬。

――ギン。

男の刀が弾かれる。

倒れる。

「……弱い」

静かな声。

だが冷酷ではない。

ただ、見極めている。

「まだ足りん」

呟く。

その目は、遠くを見ていた。

夜。

橋の上。

風が吹く。

そこに立つ影。

坂本龍馬。

背後から足音。

振り向かない。

「選別しよる」

小さく呟く。

「兵を作る気じゃのう」

夜の闇が深くなる。

屯所。

再び集まる面々。

助け出した男が横たわっている。

近藤が立ち上がる。

静かな声。

だが、力強い。

「次は攻める」

近藤勇の宣言。

空気が変わる。

戦いは、守りから攻めへ。

綾が小さく呟く。

「……地下、行くの?」

源蔵が言う。

「行く」

即答。

「やっぱりそうなるよねええ!!」

京の地下。

見えない場所で。

何かが、育っている。

剣が、集められている。

そして――

次は、踏み込む。

(続く)

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