第20話
令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜
第20話 京、収束す
炎は、まだ消えていなかった。
夜の京が赤く染まる。
崩れる家、逃げ惑う人々。
「まだ終わらないの!?」
綾が叫ぶ。
「終わる」
源蔵は前を見る。
ただそれだけで、なぜか安心できた。
そのとき――
「道を開けろ!!」
怒号。
隊列を組んだ影が突っ込んでくる。
近藤勇率いる新選組。
「押し返せ!」
号令一つで、流れが変わる。
隊士たちが一斉に動き、炎の中で敵を切り崩す。
「遅いぞ!」
前線で刀を振るうのは、土方歳三。
一刀ごとに、敵が崩れる。
「ははっ、いいですねぇ!」
笑いながら斬り込む影。
沖田総司。
軽い。
速い。
だが、確実に仕留める。
「いや怖い怖い怖い!!」
綾が後ずさる。
その横を、源蔵が通り過ぎる。
一歩。
踏み出す。
――バシン!
一人、倒れる。
――バシン!
二人、崩れる。
最小の動き。
だが、確実。
敵の流れが止まる。
「すご……」
綾が呟く。
新選組と源蔵。
別々の動きなのに、噛み合っていた。
戦場が整っていく。
だが――
「……まだだ」
低い声。
炎の奥。
ゆっくりと現れる影。
岡田以蔵。
血に濡れた足元。
だが、その目は澄んでいる。
「終わっていない」
一歩、踏み出す。
空気が変わる。
綾の喉が鳴る。
「また来た……!」
以蔵の視線が、源蔵に向く。
「続きだ」
一瞬で距離を詰める。
――ギンッ!!
重い一撃。
源蔵が受ける。
火花が散る。
押される。
だが、崩れない。
「変えるには――」
以蔵が振り下ろす。
「斬るしかない」
迷いのない剣。
それを――
源蔵が外す。
わずかに。
最小で。
――バシン!
竹刀が弾く。
「……甘いな」
以蔵が言う。
だが、目が変わる。
(外した……?)
一瞬の違和感。
その隙。
源蔵は動かない。
ただ、言う。
「ここは戦う場所じゃない」
炎の向こう。
泣き叫ぶ人々。
崩れる家。
以蔵の視線が、そちらに動く。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
迷い。
「……」
沈黙。
剣が下がる。
「……次だ」
それだけ言って、以蔵は背を向けた。
去る。
戦場から。
綾が息を吐く。
「え、終わり……?」
そのとき。
「火を抑えろ!!」
近藤の声。
一斉に動く新選組。
人を導き、炎を抑え、場を制圧していく。
やがて――
夜が明ける。
煙が薄れ、光が差す。
京は、静かになった。
完全ではない。
だが、終わった。
「……はぁ……」
綾がその場に座り込む。
「生きてる……」
源蔵は空を見上げる。
何も言わない。
その前に、足音。
近藤勇が立つ。
「借りができたな」
静かな声。
源蔵は頷くだけ。
横で、土方が腕を組む。
「次は容赦しねぇ」
その目は鋭い。
だが、どこか認めている。
沖田が笑う。
「またやりましょうね」
軽い。
だが、本気。
綾がツッコむ。
「やりたくないんだけど!?」
三者三様の反応。
だが――
もう敵ではない。
完全な味方でもない。
だが、同じ場に立つ者。
そんな距離だった。
そのとき。
「ようやったのう」
後ろから声。
振り向けば――
坂本龍馬。
いつもの笑み。
だが、その目は鋭い。
「これで一つ、終わりじゃ」
「一つ?」
綾が聞き返す。
龍馬は空を見る。
朝日が昇る。
「まだ終わりじゃないぜよ」
静かな一言。
空気が変わる。
綾が頭を抱える。
「やっぱりかあああ!!」
源蔵はいつも通り。
「そうだろうな」
京の空は、晴れていた。
だが、その下で。
何かが、まだ動いている。
時代は、まだ終わらない。
(続く)
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