第21話
令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜
第21話 残り火の中で
京の朝は、静かだった。
焼け跡から煙が細く立ち上る。
崩れた家々の間を、人々が行き交う。
「……なんか、夢みたい」
綾がぽつりと呟く。
「昨日あんなに燃えてたのに……」
「終わったからだ」
源蔵は変わらず言う。
「いや終わってないって言ってたじゃん!」
「そうだな」
「どっちなの!?」
ツッコミが響く。
だが、空気は穏やかだった。
少なくとも、今は。
道場。
木の音が響く。
――ヒュッ。
――ヒュッ。
源蔵の竹刀が、静かに空を切る。
綾がそれを見ている。
「……なんか、いつも通りすぎて逆に怖い」
「そうか」
「そうだよ!」
そのとき。
足音。
「噂通り、ここか」
振り向く。
立っていたのは――
土方歳三。
「げっ」
綾が顔をしかめる。
「げっ、とは何だ」
「だって絶対面倒な話でしょ!」
土方は無視した。
源蔵を見る。
「隊の中でも意見が割れてる」
短く言う。
「お前を斬るか、使うか」
「物騒!!」
綾が叫ぶ。
「で?」
源蔵は変わらない。
土方は少しだけ口元を緩める。
「結論はまだだ」
一歩、近づく。
「だが――」
視線が鋭くなる。
「次は試す」
それだけ言って、背を向ける。
去る。
綾がへたり込む。
「平和どこ行った……」
別の場所。
川辺。
静かな水面。
そこに、一人の男が立っていた。
岡田以蔵。
動かない。
ただ、刀を見ている。
「……斬らなきゃ」
小さく呟く。
「変わらない」
迷いはない。
だが――
一瞬。
止まる。
源蔵の言葉。
「ここは戦う場所じゃない」
脳裏に浮かぶ。
以蔵の眉が、わずかに動く。
「……甘い」
吐き捨てる。
だが、その声は――
ほんの少しだけ、弱かった。
夜。
灯りの少ない路地。
足音。
「来たか」
影の中に立つ男。
坂本龍馬。
その前に、もう一つの影。
顔は見えない。
「京は、まだ揺れる」
低い声。
龍馬が笑う。
「それでええ」
「次の段だ」
影が言う。
「駒は揃いつつある」
龍馬は目を細めた。
「面白うなってきたのう」
風が吹く。
二つの影が、闇に溶ける。
道場へ戻る。
綾が腕を組んで唸っている。
「絶対また何か起きるよねこれ」
「起きるな」
源蔵は即答。
「即答しないで!?」
そのとき。
外から、ざわめき。
「また!?」
綾が飛び出す。
通り。
人が集まっている。
「どうしたの?」
「人が消えたらしい」
「は?」
空気が変わる。
さっきまでの穏やかさが、消える。
源蔵が一言。
「始まったな」
綾が頭を抱える。
「やっぱりかあああ!!」
京は、静かだ。
だが、その奥で。
確実に、何かが動いている。
燃え残った火は、消えていない。
むしろ――
次の炎を、待っている。
暗闇。
声だけが響く。
「駒は揃った」
誰もいないはずの場所。
だが、確かに誰かがいる。
「次は、奪う」
静かに。
確実に。
物語は、次の局面へ。
(続く)
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