第13話
令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜
第13話 決戦前夜、動く影
「……もう無理……」
道場の床に大の字になって、綾が動かない。
「腕上がらない……足も無理……全部無理……」
壁は少し壊れ、床には傷。
さっきまでの戦いの跡が、はっきり残っていた。
源蔵は気にせず竹刀を振っている。
ヒュッ、ヒュッ。
「まだだ」
「何が!?」
綾が叫ぶ。
「もう終わったでしょあれ!?」
「終わってない」
即答。
そのとき。
「終わっとらんぜよ」
声。
振り向くと、男が柱にもたれていた。
「だからいつの間にいるの!?」
綾がツッコむ。
男――坂本龍馬は肩をすくめる。
「ここでやるのは悪手じゃ」
「え?」
珍しく、少し真面目な声。
「次に来るのは“潰し”じゃき。ここでやったら道場ごと消し飛ぶぜよ」
綾が青ざめる。
「え、やだそれ」
「じゃろ?」
龍馬が笑う。
「場所、変えろ」
一言。
源蔵は興味なさそうに言う。
「どこでもいい」
「よくない!!」
綾が即ツッコミ。
「私は生きたいの!」
新兵衛が静かに口を開いた。
「……河原だな」
「河原?」
「広い。邪魔が入らん」
源蔵がうなずく。
「それでいい」
「決定早っ!?」
綾が頭を抱える。
場面が変わる。
夜。
静まり返った屯所。
灯りの中、男が立っている。
土方歳三。
無言。
空気が張り詰める。
やがて。
「明日、終わらせる」
短い一言。
隊士たちが緊張する。
その横で、軽い声。
「楽しみですね」
沖田総司が微笑む。
土方は答えない。
ただ、静かに前を見ていた。
場面が戻る。
夜の町。
「――いたぞ!」
物陰から飛び出す影。
新選組の小隊。
「まだ来るの!?」
綾が叫ぶ。
「様子見だ」
源蔵が前に出る。
三人。
四人。
同時に来る。
だが――
――バシン。
――バシン。
――バシン。
一瞬で終わる。
「なっ……」
隊士が崩れ落ちる。
「はい終了!」
綾が即ツッコミ。
「もうちょっと粘ってよ!?」
「必要ない」
源蔵は竹刀を肩に担ぐ。
静かになる町。
綾が息を整える。
「……明日、なんだよね」
ぽつりと呟く。
「終わるの」
源蔵は答えない。
ただ立っている。
少しの沈黙。
綾が顔を上げた。
「私も戦う」
真っ直ぐな目。
「逃げない」
源蔵は一言。
「好きにしろ」
「軽い!」
だが、その言葉に、綾は少しだけ笑う。
後ろで、新兵衛が静かに呟いた。
「……“間を消す剣”か」
誰にも聞こえないほど小さく。
夜が深まる。
風が吹く。
静かな京。
だが、その裏で、すべてが動いている。
綾が空を見上げる。
(明日――)
拳を握る。
(全部、決まる)
源蔵は竹刀を置き、座る。
目を閉じる。
ただ、それだけ。
だが――
その静けさの中に、すべてがある。
決戦前夜。
嵐の前の静寂。
そして――
明日。
すべてがぶつかる。
(続く)
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