第11話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第11話 斬らずに潰す

「――どけぇ!!」

怒号。

町の通りで、浪人が刀を振り回していた。

「近寄るな! 斬るぞ!」

町人たちが悲鳴を上げて逃げる。

「やばっ……!」

綾が駆け出した。

「止める!」

「無理するな」

後ろから源蔵の声。

だが、綾は止まらない。

(1人なら……!)

竹刀を構える。

浪人が振り向く。

「なんだ小娘――」

踏み込む。

――バシン!

腕に当たる。

「ぐっ!?」

刀がぶれる。

(いける!)

だが――

横からもう一人。

「甘ぇ!」

「っ!?」

死角。

間に合わない――

その瞬間。

コツ。

音がした。

「終わりだ」

――バシン、バシン。

二つの音。

気づけば、二人とも地面に転がっていた。

「……え?」

綾が固まる。

源蔵が竹刀を肩に担いで立っている。

「今の……何?」

「打っただけだ」

「見えなかったんだけど!?」

浪人たちはうめき声を上げるだけで、立ち上がれない。

町人たちがざわつく。

「助かった……」

「すげえ……」

綾が振り返る。

「ねえ、なんで斬らないの?」

短い問い。

源蔵は一言。

「必要ない」

「それだけ!?」

「止めればいい」

それだけだった。

だが、妙に納得してしまう。

そのとき。

「いやあ、相変わらず派手じゃのう」

聞き慣れた声。

振り向くと、男が立っていた。

「また来たの!?」

綾が叫ぶ。

男――坂本龍馬は笑う。

「この時代で“斬らん剣”とは、珍しいのう」

「関係ない」

源蔵は即答。

龍馬が肩をすくめる。

「ま、そういうと思うた」

そのとき。

町人の一人が駆け寄ってくる。

「大変だ! 新選組がまた動いてる!」

空気が変わる。

綾が固まる。

「え……もう!?」

源蔵は気にした様子もなく言った。

「来るだろうな」

「軽いってば!」

場面が変わる。

静かな屯所。

無言の空間。

その中心に立つ男。

土方歳三。

鋭い目が、前を見据える。

「……厄介だな」

短く呟く。

その横で、隊士が報告する。

「複数を同時に制圧。負傷者多数です」

沈黙。

やがて。

土方が口を開く。

「次は――」

一拍。

「潰す」

空気が張り詰める。

決定だった。

場面が戻る。

道場へ戻る道。

綾が頭を抱える。

「え、ちょっと待って……」

「何だ」

「完全に狙われてるよね、これ!?」

「そうだな」

「で、どうするの!?」

源蔵は肩をすくめた。

「どうもしない」

「いや何かして!?」

龍馬が笑う。

「普通は逃げるぜよ」

「逃げないの!?」

源蔵は一言。

「面倒だ」

「その理由で残るのやめて!?」

夕日が沈む。

京の町が赤く染まる。

新選組。

本気の“潰し”。

それが、すぐそこまで来ていた。

だが――

老人は、変わらない。

竹刀一本。

ただ、それだけ。

(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る