1−4−5
16時47分―――
外はすでに暗くなっており、夜風は一層冷たく、部屋着のまま出た身は切り裂かれるようだった。
(『直接渡そうだなんて思うなよ』)
直前にかけられた、センパイの声が不意に蘇る。
(……これでも1年近くやってきたんだ、今さら『直接渡そう』なんて手段とらねぇよ。)
頭の中で反抗しながら、手に取ったチョコ菓子一つの封を開け、一口かじる。
ザクりとした食感と香り高いチョコの香りが、脳天を突き抜けた。
1年近く……そう、『青春保全センター』などという未だに全貌が見えない謎の組織に入ってから1年が経つのだ。
元は課金を主とした生活費の為だった。
少しずつセンターでのやり方を覚え、この世界の大まかな仕組みを覚え、その上で何だかんだ楽しんでやってきた。
もちろん嫌な事はごまんとあった。
傷与係の仕事に限らず、他部署への応援としてあたった任務も滅茶苦茶なモノばかりだった。
不満は覚えつつも、それでも正当な報酬は出たからなんとかここでのやり方に従って頑張ってきた。
(いくら頭に血が昇っているとはいえ、『直接渡すな』は無いだろ……もう少し部下を信頼……)
センパイへの不満を改めてぶつけた瞬間、脳裏に一つの閃きが舞い降りた。
『直接渡しては行けない』
……そうだ、コチラが彼女に直接渡してはいけないのであれば、『コチラから直接渡さなければいい』
なんなら俺なんかより『最高の適任』がいる。
早速俺は通信を試みる。
16時50分―――
『おうバイト君、頭は冷めたか?』
すぐに繋がったものの、先ほどのやり取りも相まって、いつもにも増して『気怠けな声』が返ってくる。
自らが生んだ罪に恐れながら、会話を繋いでいく。
「センパイ、先ほどはすみませんでした……」
『……それで、何をするつもりだ?』
「……良いんですか?」
『良いも何も、君がこういう時に声をかける時は、何か思いついた時だ。ただ、謝るためだけに通話を試みたわけではあるまい?』
「……っ!ありがとうございます!それで、一つ作戦を思いついたんですけど……」
この3分で思いついた、大まかな作戦概要を口頭で伝えていく……
拙い俺の説明に、センパイは時折確認の質問を加えながら、理解を深めていく。
一通り作戦の概要を理解したセンパイは、一言俺に確認を求める。
『……君の考えた作戦は分かった……だが、もう日が落ちかけている……今からやれると思うか?』
その質問に俺は、ほぼ間髪入れずに答えた。
「『価値ある青春を送らせる』ことが『センターの指名』ということなのであれば。」
『……たく、生意気言うようになったな。だが、任せておけ!なんとかしてやる!』
そう言ってセンパイは『……こちら傷与係のセンパイ。グリーンパーク決戦のよしみで、一つ頼みがあるんだが……』とこれまでのキャリアで培ってきたのであろう人脈と話術で、僅か10分程度で、人員や各役割などの詳細が詰められていく。
17時15分―――
こうして、俺に端を発した作戦『紅白リカバリー作戦』は決行の刻を迎えるのである……
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