第四章:青春スクラップ&ビルド
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2月13日15時―――
センターのエージェントとはいえ、一応モブ学生の1人でもある俺は、今日も今日とて学校へと通う。
「モブでも学校に通う必要があるんですか?」と前に一度疑問を投げかけたことがあった。
それを聞いたセンパイからは「学校に空席を作るモブが何処の世界にいるか!?」と一蹴され、以来『エージェント』と『モブ学生』の二足の草鞋で生活している。
その帰り道、最寄りのスーパーやコンビニなどを経由してありったけのチョコを買い占めていく。
断っておくが、別にバレンタインにチョコが貰えないからと、八つ当たりしているわけではない。
【2月7日〜14日にかけて、チョコを買い占めろ】という『任務』なのだ。
金に関してはセンターから潤沢な資金が出ているらしく、何処ぞのブランドのブラックカードを用意する大盤振る舞いよう。
おかげで何処に行っても『ここ数日ブラックカードを使ってチョコを買い占める、謎の非モテ学生』という目で見られる羽目になっている。
そのような経緯で集まった今日のチョコは、最終的に大袋10袋分にも及んだ。
もちろん俺1人で食べ切れる量ではないので、帰宅前にセンパイ宅に寄って買った半分を置いていくことになっていた。
センパイの自宅は駅から急行で一駅分南下したところにある住宅街の2階建ての一軒家だ。
家のまえに着くと、スマートグラスを介して連絡を試みる。
「センパイお疲れ様です。家の前まで来ました。今日買ってきたチョコの分を届けに来ました。」
少して骨伝導越しに少し疲れたような声で『疲れているところ悪いね。鍵は開いているから、いつも通りリビングに置いておいてくれ。』と返答があった。
(モブの家だからって、不用心すぎないか……?)
俺はそう思いながら、門扉を開けた。
玄関には、センパイがシーンによって使い分ける、数種類の靴が整然と並べられている。
その隊列を崩さないように、靴を脱ぎスリッパへと履き替える。
廊下は薄暗く、シンと静まり返っている。
少し変な歩き方をして、場を賑やかしたくなる気分にさせるほどに寂しい。
この家全体に対して言えることだが、人の気配があまり感じられない。
家具や飾りこそあれど、薄く埃が積もっているあたり、センパイはこの家の中でも必要最低限の部屋だけを使って生活しているようだった。
リビングに入るとここ数日で買い込んだままのチョコが、ほぼそのまま残されていた。
ただ一つの大袋が開封されており、何かしらのチョコ菓子を取り出したような形跡だけは確認できた。
テーブルには、幅広な付箋に『お疲れさま 少し休んでいけ』と書かれたメッセージと共に、お茶やジュースなどのペットボトルが用意されていた。
お言葉に甘え、コーヒーを選ぶと板チョコを茶請けがわりにして、随分と遅いティータイムを始めることにする。
20分ほど優雅に(俺基準で)堪能していると、ドッドッドと二階から誰かが降りてくる音が聞こえてきた。
ここ数日で初めての現象に思わず、リビングのドアに向かって身構えていると、女っ気のない灰色の部屋着を身に纏うセンパイが現れた。
そして一言「……人ん家で何やってんだ?」と、チョコを片手にコーヒーを飲み、コタツに入りながら往年の名作ドラマの再放送を視聴していた俺に対して声をかけた。
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