第4話 璃奈の思惑

「うぅ……頭がパンクしそう……」


 高校の授業を受けるのは前世も含めて二度目だが、流石は名門校。授業の内容もかなりハイレベルなものがほとんどで、本来なら大学でやるような内容も多い。


 よってボクの脳はもう限界だ。


 よし、ようやく昼休みだ……お腹空いた……お昼食べよ。


 そこでふと前の席の星那が何やらこちらにチラチラと視線を向けていることに気がついた。


 あーなるほど……そういうことか。

 

 つまり星那はボクと一緒にお昼が食べたくて声を掛けるタイミングを伺っているのか……主人公なのに妙に可愛いところがあるな……


 仕方ないなぁ……ここはまんまと乗ってあげよう!


 ボクは朝登校中にコンビニで買ったパンなどが入った袋を持ち、徐ろに立ち上がる。


「さてと……お昼ご飯食べよっかな〜!」


 すると星那がわかりやすく、目をキラキラと輝かせる。


「凪、一緒にお昼を——」


「凪さん、お時間空いてますか?」


 とその時、もう一つの声が星那の声を無慈悲に掻き消した。


 その声の主、水無月璃奈はニコッと上品に微笑む。


「え? 水無月さん……も、もちろん空いてるけど……」


 チラリ星那の方を見てみると明らかにショックを受けたような表情をしていた。


「でしたら、私と一緒にお昼を食べましょう」


 なんで璃奈が……で、でも璃奈の誘いを断ると後が怖いし……ごめん、星那……


「うん、もちろんだよ」


 ボクは申し訳ないと思いつつ、星那を裏切ることにした。


「……では」


 その直後、璃奈がボクの腕に自信の腕を絡ませる。


「「!?」」


 突然のその行動に僕だけでなく、星那も目を丸くして驚いていた。


 何これ何これ!? なんでいきなり璃奈はこんなことしてくるの??


 だけど、一番大きな問題は——


「どうしました? 凪さん」


 璃奈が再びギュッと力を強めると二の腕にものすごく柔らかい感触が密着する。


 まずいまずいまずいって!! 璃奈はボクが女の子だと思ってるから、こんな密着してるけど……ボク男の娘なんだよぉ……


 何よりヒロインである璃奈を騙しているようで罪悪感がすごい。


 星那に対する罪悪感はあんまりないんだけどな……やっぱり男だからかな。


「う、ううん、なんでもない」


「でしたら、お昼休みの時間も限られていますし参りましょう」


 そしてボクはポカンと呆気なら取られてしまっている星那を尻目に、璃奈によって連行された。


 

 ◇



 璃奈によって連れて来られたのは噴水のある広場のベンチだった。


 普通の学校ならお昼のスポットとして人気そうだけどこの学校の敷地の広大さや、カフェや食堂があることも関係して今は僕達以外に人はにいない貸し切り状態だ。


「……」


「……」


 うぅ……気まずい……


 ベンチに座ったボク達は先程から特にこれといった会話もなく、ただただお昼を食べる。というまずい時間が続いている。しかも人が全くいないというのも相まって余計に気まずさが増している。


 なんか話した方が絶対にいいよね……なんか話題……えーっと……

 

「ここ、すごくいい場所だね」


「この時間帯はあまり人が集まらない秘匿スポットです。夜桜星那を手に入れる為に事前にリサーチしておきました」

 

「へ、へぇ……ところで水無月さん、なんでその星那じゃなくて、ボクをお昼に誘ってくれたの?」


 ボクは気になっていたことを聞いてみる。


 ゲームでは璃奈は星那をお昼に誘っていたけど、今回は何故かボクが選ばれた。


 一体どういうことなんだろ……?


「そちらの方が夜桜星那を手に入れるのに役にたつと思ったのです。これも作戦のうちの一つです」


「なる、ほど?」


 うーん、やっぱりどういう思惑なのかわかんない……


「よくわからないけど……今日はお昼に誘ってくれてありがとね!」


「……作戦ですから」


 そう言って璃奈は顔を背ける。


 もしかして照れてるのかな? やっぱり璃奈は可愛いな〜!


「それにまさか璃奈があんな大胆なことしてくれるなんて——」


「〜ッ!!」


 その瞬間、璃奈の顔がほんのり朱色に染まる。


「あ、あれはただのスキンシップの一環です。勘違いしないでください」


「いや、スキンシップは普通あそこまでしないと思うけど……あれも作戦?」


「……あ、あれはアドリブですけど……かなり勇気を振り絞ったんです……あなたが女性だからしましたけど、男性相手には絶対にしませんから」


 そう断言する璃奈。


 うんうん……そっか……でもボク男の娘なんだけどなぁ……


 つまり璃奈は大嫌いな男に大胆なスキンシップをしてしまったことになる。


 うっ……罪悪感が……


「とにかく……あれは忘れてください」


「でも、すっごく可愛かったと思うけど?」


「……忘れてください」


 璃奈は恥ずかしそうに俯きながらそうな呟いた。


 璃奈にはやっぱりちゃんと幸せになってもらいたいな……


 ボクは璃奈を見て改めてそう思い直した。



  【あとがき】


 最後までお読みいただきありがとうございます!


 璃奈と凪……尊いですよね……


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貞操逆転ゲーム世界で性別を隠している男の娘に転生したら、速攻でヒロイン達に性別がバレたけどなんとかなる! ぷらぷら @1473690623

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