第4話 変態襲来
「頼もーーーーうっっ!!」
今時あまり聞かない訪問の挨拶に、祖父が玄関へ向かう
摺りガラスの引き戸の向こうに、網代傘を被り、袈裟を着た僧侶らしき姿が透けて見える
はて?
地元のお寺らしからぬ旅装の坊主に知り合いは居ない
「どちらさんで?」
「拙僧はしがなき旅の托鉢僧に御座います、申し訳ありませぬが、水を一杯頂けぬでしょうか」
今時珍しい旅の修行僧か
玄関前で般若心経を唱える声が聞こえる
「そりゃあご苦労さまです、今開けますので、お待ちを …… 」
カチャカチャ …
祖父が鍵を開けるや否や、ガラッと引き戸を開け放った坊主は、祖父を突き飛ばし草鞋のまま踏み込むと、一目散に風呂場へと駆ける
ドスドスドスドス
「コラッ待たんか!あ痛たた …… 」
坊主は気配を頼りに、迷い無く風呂場の扉を開け放つ
ガラッ!
そこにはスッポンポンでシャワー中のモモが、突然の闖入者に驚いて固まっていた
「きゃああぁーーーーっっ!!!」
「なんとっ!?うわっぷ!」
モモにシャワーを掛けられた坊主は、慌てて逃げようとするが、玄関前には祖父が立ち塞がる
咄嗟にキッチンへ向かった坊主は、そのまま勝手口から飛び出して行った
「何なんだあの野郎?モモ、大丈夫か?」
「こっち見んなエロジジイ!!」
モモの方を見た祖父にもシャワーをかける
「じいじっ、警察!警察呼んで!!」
「お、おう!」
どういう理屈か、シャワーを浴びたモモはいつも通りの人間の姿に戻っていた
ついでに、脱衣籠に放り込んだボロボロの鬼の装束も、モモの普段着に戻っていた
暫くしてパトカーで警察官が、やって来る
アタシは見事にガングロな婦人警官に、犯人の特徴を伝えたが、何しろ袈裟を着て傘を被っていたから、顔も良く分からない
年齢すら不明だけど、今時修験僧なんて珍しいだろうから、直ぐ捕まるんじゃ無いかな?
罪状は家宅不法侵入と猥褻未遂との事だが、裸を見られたんだから未遂は納得いかない
「痴漢よ、押し込み痴漢!変態坊主は早く捕まえて死刑にしてっ!!」
「いやー、死刑はちょっと … 」
「じゃお姉さん、ピストル貸して!アタシが自分で撃ち殺してやるっ!」
「それは駄目」
「ケチ」
「日本の法律はね、私刑は禁止してるのよ」
「そんな事言って、お姉さん自分が被害者だったらどうすんの?」
「ブッ殺す!!」
「でしょ?」
「其れはそれ、これはこれ」
「えぇ〜、何かズルい」
「日本はね、法治国家なの。捕まえて裁判に掛けるのよ、学校で習ってない?」
「放置国家?」
「法律で治める国って事」
「ふ〜ん …… 」
その割にはテレビじゃ連日、碌でもない話題が垂れ流しな気もするけど
確かに、責任感の欠片も見えない政治家を気に入らないからと殺し捲ってたら、幾ら大勢居るからってその内誰も居なく為るかぁ
それじゃ困る
…… 誰が?誰が困るんだろ
学校じゃ皆、将来に夢も希望も持てなく為ってる
自分達の親を見ていると、何のために働かなくちゃ為らないのか分からないと言う
少し前に「親ガチャ」とか言う言葉が流行ったけど、聞いてる限りじゃ生きる為に最低保証賃金で幾つも仕事を掛け持ちしないと生活出来ない家庭が多い
何だっけ
国民の8割近くが非正規雇用のせい?
祖父に言わせると、昔はこんな世の中じゃ無かったらしい
夫婦共働きなんてしなくても、真面目に働けば皆、クルマも家も買えたんだって
信じられない
アタシの両親はアタシが赤ちゃんの頃に事故で死んだ
写真を見ても、顔も覚えて無いけど
飲酒運転で事故死と聞いてるけど、祖父は酔っ払うとそれは嘘だと言う
両親とも、お酒は一切飲まなかったらしい
まぁアタシは知らないから何も言えないけど
誰かが嘘を付いてるんだろうか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます