第4話 ひそひそ話と……?
「ねえ、昼間のあれ。一体なんのつもりだったんです?」
「んー?」
夜の帳が降りる頃。
限られた地位の人間のみが入れる屋敷の中で、周囲の人気もなく静かになった自室に戻って来た東宮は、続けて後ろから入ってきた中務卿宮へと振り返った。
「なんのこと?」
「しらばっくれないでくださいよ?兄上」
視線を反らしてしらばっくれようとする兄に、中務卿宮は不服そうに声を上げた。
頬膨らませる弟宮に、東宮は軽く笑って見せながら答える。
「目印だよ」
「ふうん……?」
すたすたと自室の畳に乗りあがって、とすんと腰を落とし肘置きに腕をのせて楽な体勢を取る東宮を見ながら、同じく部屋に入ってきた中務卿宮は東宮よりも下段の位置にある床張りの場所へと腰を下ろした。
「兄上って、男の子がお好みでしたっけ?」
「何いってるの。あの子と同じ事を言わないでよ」
ふっと笑う東宮に、中務卿宮も扇子をぱらりと広げて口元を隠す。
「随分と気に入った様子ですね。わざわざ内裏まで降りて顔を見に行くなんて」
「だって、とっても美味しかったんだよ。あのお饅頭」
「それは私も同意しますよ。ですが」
中務卿宮はぱちりと扇子を閉じて、厳しい目つきで東宮を見据えた。
「だからって、見ず知らずの人から食べ物もらってほいほい口にしてはダメでしょう!?」
「宮だって食べてたじゃないか。それに、あの子も美味しそうに食べてたんだもの。毒なんてないよ」
眉を吊り上げて怒る弟宮に、東宮はほわほわと微笑みながら扇子をぱたぱたと仰いだ。
「とっても美味しかったから、何かお礼をしたかったんだ。それだけだよ」
「本当ですか?」
ジト目で見やってから、中務卿宮は仰いでいた扇子をぱちりと閉じる。
「大納言家の子供は、たしか一人しかいなかったはずでしたね」
そういう弟宮の言葉に、東宮は顎に手をかけてゆったりと寛いで見せた。
「そう。入内の申し込みも前に受けていたよ。でも、そこの姫君が危篤状態になったといって急遽入内が取り下げられたんだ」
東宮の言葉に、弟宮も扇子をぱちりと閉じた。
「まさか、大納言が連れてきた少年が、件の姫君だというのですか?彼は大納言が引き取った縁者の子供だと聞いていますが」
「姫が亡くなったという報告は聞いていない。でも……とっても可愛い子だったよね。あの子がここに来てくれればいいのに」
そう言って、東宮は自分のひじ掛けをポンポンと叩きながら、面白そうに微笑んで見せた。
「椿……いや、綾って大納言は彼女の事を口にしていたね。綾姫か……。とっても可愛いかったなぁ」
頬を緩ませて笑う兄の姿に辟易としながらも、弟宮は居住まいを正してこほんと咳払いした。
「彼が女子であることを決めつけてしまうのは早計なのでは?それに、もし彼が女子であったとして、何故わざわざ男装してまで内裏までやってきたのか理解できませんよ」
「あの大納言が黙認してくらいだもの。何か理由があるんじゃないのかな」
「また兄上は……」
「世の中色んな人がいるんだもの。宮中にだって働いている女官たちは多くいる。男装して宮中での仕事を学びたいという姿勢は悪くはないと私は思うけどね」
のんびりした相づちを打つ兄に大きくため息をつきながら、弟宮は自身の袂からいくつかの書類を取り出した。
「なんにせよ、椿が本当に姫だとしたとしても。私としては、このまま入内などせず、内裏に留まっていてほしいですね」
「おや、なぜだい?」
「今日、大納言寮から上がってた来た報告によると、彼の寮内で作成された今日の書類の半分は椿が担当していたそうですよ。とても読みやすくてわかりやすいと、うちの子たちが大絶賛していたんですよ。このまま成長すれば、とても有能な官吏になれそうです。うちの省内にでもぜひ抜擢したいものですね」
常に手が足りていない中務省の内情を試みれば、若くて有能な官吏候補は喉から手が出るほど欲しいものだ。
「ちょっと待ってよ!宮にはあげないよ?あの子は私のモノだからね?」
きっぱりと言い切る兄の言葉に、弟宮は驚いて目を見開く。
「珍しく執着しますね。そんなにあの子が気にいったんですか?」
まだ一人も姫を迎え入れていない若き東宮が、生まれて初めて他所の姫君に執着を見せていることに、長年共に付き添っている弟宮は驚きを隠せずにいた。
ひじ掛けに腕をつき頬杖する兄は、昼間の事を思い出しているのか、頬を緩ませて縁側から見える月を眺めていた。
「だって、初めてだったんだもの。私の事を特別視しない、物怖じすることなく話しかけてくれた子……。そんな子、今まで誰一人としていなかった」
黄色く輝く満月を眺めながらほおっとため息をつく兄に、弟宮は手にした書類を床に置いた。
「不思議な子だったよ……。男の子としているはずなのに、面立ちがとても可愛くて……どこかの幼い姫君のようにしか見えなかった」
気丈そうに見上げてきた昼間の綾香の姿を思い出すと、無意識に目元が緩む。
「私を東宮として認識していなかったからこその素の態度なのだけど、それでも、さりげない気遣いとかが優しくてさ」
ほうっと息をついて、東宮はぼんやりと口にする。
「明日も、内裏に来てくれるかなあ……」
ぼんやりと恋を患ったように見える兄の姿に、弟宮は呆れたようにため息をついてみせた。
「どうでしょうね……。大納言からの追加人員分の臨時参内の申請は本日のみとなっていましたが……」
「えー……そうなの?もう会えないのかなぁ?」
「姫が危篤から復活されたのならば、近い内に入内申請も行われるでしょう。入内なさるなら、嫌でもその内にお会いできるでしょうに」
「そんなのんびりした事言ってらんないよ!それに、それだと顔を見る事が出来るのは数か月先にもなるじゃないか!入内の再申請の許可や、輿入れの準備にどれだけ時間かかるか知ってるでしょ。大納言家から正式に再度の入内申請の連絡だってまだ来ていないし。正式に姫がここにくるとも限らないんだよ?」
肩を落として矢継ぎ早にぶーたれる東宮に、弟宮は困った風に眉を下げてみせた。
「随分と我儘をおっしゃられますねぇ……」
「ねぇ、宮。あの子ともっと会って色々話してみたいんだ。どうにかならないかなぁ?」
手を合わせて懇願してくる東宮に、弟宮は扇子を立てて床にこんこんと打ち鳴らした。
「ここに呼び寄せれたとしても、あくまで内裏内では椿とは男の子として振る舞うのが必須なんですよ。あらぬ噂を立てられたらどうするのです!」
「あらぬ噂?」
こてんと首を傾げる東宮に、弟宮は呆れてしまう。
「当代の東宮が、男色家だと誤解されますよ」
「それは困るけど……」
「そうなってしまったら、他家からの姫君たちからの入内申請も来なくなってしまいますよ」
「……それは別に構わないけども」
「兄上っ!」
東宮の言葉を遮るようにぴしゃんと強い言葉を放つ弟宮の剣幕に、東宮はぴゃっと肩を竦めてみせた。
「一目惚れして恋煩いになるのは構いませんが、東宮として世継ぎを確実に残さねばならないことをお忘れなきように!」
扇子の先をドンと突いて戒める弟宮に、東宮は力なく唇を突きだす。
「それはそうだけど……。だけど、私は父上のように多くの姫君を侍らすのは趣味ではないよ?」
父である今上帝は多くの側室を迎えており、目の前にいる弟宮だって、実は母親が異なる異母兄弟だ。
「気持ちは分からなくもありませんがね……。とにかく、しばらくは余り目立った行動は控えてくださいね」
そう言って、弟宮はすっくと立ちあがり、出入り口の御簾まで歩いていった。
そんな彼をおいかけるべく、東宮も立ち上がり宮を見送る為に御簾の近くまでやってきた。
しょんぼりとうつむいてみせる兄に、弟宮は一つため息をついて、彼の肩に手を置いた。
「大納言には、しばらくの間、椿を出仕させるように命じます。書類裁きが有能なようだから内裏に出仕頂く方がこちらとしても助かりますし」
「本当かい!?」
弟宮の言葉にぱあっと顔を明るくさせる東宮に苦笑しながらも、くれぐれも釘を指すことだけは忘れない。
「ですが。くれぐれも、ふらふらとお一人で内裏に姿を現さないこと。椿を男の子として接すること。お約束くださいね」
「わかったよ。宮のいう通りにする」
そう言って、東宮は神妙な顔をして頷き、弟宮を見送ったのだった。
宮が立ち去ってから、東宮は一人縁側にでて月を見上げた。
「やっぱり、占いって当たるものなんだねえ……」
扇で隠した口元からこぼれた言葉は、静かにたたずむ東宮のみにしか聞こえていなかった。
:::::::::::::::::::::::::::::::::
一日の出仕がようやく終わり、夕暮れを迎える頃。
綾香は大納言と共にようやく自宅に戻る事ができた。
帰りの牛車の中で昼間に起こった出来事を義父に話し、綾香は暮れ行く京の街並みを眺めながらぼんやりとやり過ごした。
自宅となる大納言邸に到着し、軽く湯浴みを済ませてから、母と父と共に夕餉を取った。
今日一日の出来事を母にも報告し、食後のお茶を飲んでいる時に、ぱたぱたと外から騒がしい足音が聞こえてきた。
御簾は開け放されており、そこに飛び込んできたのは一人の水干姿の童だった。
「中務卿宮様より、大納言様、椿様宛に伝令を承っております」
「私に?」
戸口の近くにいた女房が童より文を受け取り、その文を黒い文箱に納め、しずしずと上座にいる大納言へと手渡された。
手紙を受け取った大納言は手紙を広げ一通り読み終えると、驚いた風に目を丸くさせた。
「綾姫。中務卿宮様から、明日以降も内裏に出仕するようにとの仰せだよ」
「え?」
義理父からの言葉に、綾香は驚いて手にしていた湯呑を床に降ろした。
「今日だけではなくて、また男として出勤して仕事しろっていうこと?」
確かに、今日一日内裏で過ごした時間は、ずっと屋敷でごろごろ過ごしているよりも随分と刺激的で。
また、現世にいた時のような事務仕事をするのも嫌いではなかったので、出仕を続けることができるのは別に悪くはないと思った。
だが。
手紙を読み終えた大納言は、腕を組み難しそうな表情を浮かべ「うーむ」と考え込んでいる。
「どうする、綾姫。私としても、今日一日姫が仕事を手伝ってくれたおかげで随分と助かってはいたんだよ。宮様からも、一時的に椿としての正式な席を私の管轄する寮内に設けて下さるそうだ」
「え……?どうしてそこまで……」
今日一日会っただけの中務卿宮様から、なぜそこまで一介の少年を気にかけて下さっているのか。
東宮を迎えに来た時に見せた、いたずらっ子そうな笑顔が今でも脳裏に鮮やかに思い浮かぶ。
宮様と会話をしたのは朝と昼の2回だけだというのに、どうしてわざわざ連絡をよこしてまで好待遇で迎えてくれるのか。
その理由が思いつかなくて、綾香は不思議そうに首を傾げた。
すると、隣にいた母が手にしていた湯呑を床に置いて、綾香の膝元に置かれている水色の香袋を指さした。
「綾ちゃん。もしかして、東宮様から賜ったその香袋に関係するんじゃないかしら」
「え、これ?」
母の指摘に、綾香は膝にのせていた小さな香袋の掌に載せた。
「ここでは、東宮様と言えば今上帝に継ぐ大事なお方なのよ。現世でも天皇家の皇太子さまを直接お目にすることなんて普通はありえなかったでしょう?」
「ああ、まあ確かにねー。そういう人たちって、テレビで見るくらいしか縁がなかったよね」
母の言葉に、確かにもっともだと綾はふんふんと相づちを打った。
「そんな雲の上のようなお方から、直接贈り物を頂くっていうことは、この世界でも本当に凄い事なのよ」
「だから、宮様のような上の人に目をつけられたってことなの?」
綾香の言葉に、上座にいた義父も手元にある文を眺めながら一考する。
「まあ、確かに……。今日の出来事は内裏内でも直ぐに噂になってしまうだろうなあ……。だが、今回の件は、今日の姫の働きぶりが省内でも有能だと認めて頂いた上での判断のように思えるよ」
「そんな……。私、大した仕事してないのに……」
大袈裟に褒め称える義父に、綾香は唖然と声を漏らすしかなかった。
今日の仕事は、現世でOL経験のあった綾香にとっては取るに足らない仕事だった。
ただの書類整理や他所の部署との取次ぎや、日程管理を行ったくらいだ。
だが、16歳という今の年齢からすると、周りからすれば大人以上の働きぶりを見せた事が功を奏したようだ。
「ときに姫……。今日、実際に東宮様のお顔を拝見出来たわけだったが……。入内の件は、どうする?」
「え……。あー……」
本来の目的を今になって思い出す。
内裏に潜入したのは、将来の結婚相手である東宮の顔を拝見することだった。
運良く、今日一日だけで実際に会って話することもできたわけだけども、正直言うと、たった1回ほど会ったくらいで即結婚を決めるのは早計だと思うのだ。
「ぶっちゃけいうと、今すぐにOK出すのは難しいですね……はい……」
「そうか……」
大納言としては、今すぐにでも入内申請の連絡を宮中に入れたいところでもある。
だが、今日の綾香の仕事ぶりを見ていると、入内させずに暫くの間は手元に置いて共に仕事をしたいという欲も出てきてしまっているのも本音だ。
大納言は平安の世で生まれ育った事もあり、この世界での常識は身についてはいる。が、異世界から来た型破りな妻と娘が近くにいる事で、物事の考え方も随分と柔軟になってきたものだと、大納言は内心苦笑してみせた。
「まあ良い……。昨日言ったように、入内に関しては姫がしっかり納得した上で申請を行う事にしよう」
「すみません……お義父様……」
苦笑しながら答える大納言の義父に、綾香も申し訳なさそうに頭を下げた。
「よいよい。結婚する相手の事を良く知るのは悪い事ではないしのう。それに、入内できたとしても、姫が必ず幸せになれるとも限らんしな……」
「そうなのですか?」
義父は手にしていた文を丁寧に畳んで文箱に戻し、膳に置いてある湯呑を手にした。
「入内し宮中に入れたとしても、東宮からの寵愛を必ず受けられるという保証は無いのだ。東宮様が迎える妃は、姫以外にも数あまたいるからのう」
「ああ……確かにそうでしたね。後宮があるくらいですから……。後宮……ハーレムかあ……」
「はーれむとやらはよくわからんが、まあ多くの姫君の中から東宮に見初められ寵愛を受ける事ができて、そこから運良く御子が生まれても、他の姫が御子を生んでしまえば最終的には御子同士で皇位継承権を争う事になるしのう」
殺伐とした宮中での内情を語りながら、大納言の義父はしょっぱい顔を浮かべつつ熱いお茶をずずっと飲んだ。
「現東宮が立太子として決まった時は、さほど大きな権力争いも起こる事はなかったが……。先代の立太子の際にはもめ事が多くてなあ。あの時は大変だったものだよ」
「どこの世界にでもある、お世継ぎ問題ってやつですね」
しみじみと過去の話をする大納言に、綾香も物語やらなんやらでよく聞く世継ぎ問題を思い浮かべ、うんうんと相づちを打って見せた。
「どの時代でも、そういう権力争いって起こるもんなんですねえ」
「人の世は戦乱と和平の繰り返しですからねえ……」
そう言いながら、母も急須に湯を入れながら、大納言の湯呑にお茶を継ぎ足した。
「今の東宮様には、同世代の御兄弟として弟宮である中務卿宮様がおられるのだが……。東宮様が東宮候補として挙がった時に、宮様は早々に立太子から手を引きなさったからな。大きな混乱もなく今は平和そのものなんじゃが……な」
そこで義父が腕組をしてううむとうなり始める。
「東宮様は、良いお年になられているというのに、未だ一人も姫君を後宮に迎えておられないんじゃ。それで、お偉方がやきもきしてのう。内裏内がちとピリピリしているのが最近の悩みの種なんじゃ」
「そうなんですか……」
大きくため息をつく大納言に、綾香は今日の内裏で出会った人たちを思い浮かべた。
大納言の務める部署は、国務の中枢を司る太政大臣が率いる太政官内に位置している。
政治の中枢を握る太政大臣を始め、左大臣、右大臣、内大臣たちは、太政官という内裏でもトップ4とも言える高官位の大臣だ。
大納言という官位をもつ義父は、4大臣に継いで5位相当の位置に当たるが、特に上位の大臣らの姫たちの入内問題に関しては最近ナーバスになってピリピリしているという。
「最近は、右大臣と左大臣との仲もあまりよくなくてのう。入内の申請を行ったが東宮府側からの申請許可の返事がおりないとやきもきされておる」
「でも、そんなピリピリした中で、私を後宮に入れちゃおうっていう父様も、なかなかのものですが」
「いや……以前は、姫の方から後宮に入りたいと強く言ってきておったからのう。それで、仕方なく入内申し込みをしていたんじゃ」
「あ……」
苦笑してみせる義父に、綾香は自分の失言を自覚した。
入内予定だった綾香の身体の持ち主は、流行り病で亡くなっているのだった。
綾香は申し訳なさそうに視線を伏せて、大納言への失言を詫びるべく頭を下げた。
「すみません、失言でした……」
「いや、大丈夫じゃ。私も、今の姫には無理して入内を押し付けようとも思ってもおらん。今後、入内が無理ならば婿養子を取ってこの家を継いでくれればそれいい」
「……そうですか……」
大納言家の血だけは絶やさないで欲しいと、強く願われてしまえば後には引けない。
綾香は、最終的には必ず結婚して子を成さねばならないということについて、腹をくくる事にした。
夜更け過ぎになり、綾香は自室の寝室で寝つけずごろごろ過ごしていた。
気候も良いこともあって、寝付けずにいた綾香はかけ布としてつかってた内着を肩に羽織りながら自室の縁側まで出た。
空はまあるいお月さまがでており、真夜中だというのに月明りが随分と明るい。
縁側の柱によりかかりながら、綾香はぼんやりと夜空に浮かぶ月を見上げた。
「どっちにしろ、近いうちに結婚はしなきゃいけないんだなあ……。この時代だと16歳で直ぐにお嫁にいかなきゃならないなんて……。展開が早すぎるよ」
「16歳なんて高校1年生じゃんね~」と呟きながら、はーっと大きくため息ついて綾香は手にした扇を開いたり閉じたりしている。
ぼんやりしながらも、昼間に会った東宮の事を思い返し始めた。
「東宮様かー……。顔はそこそこイケメンだったよなー。でも、なんかぽやんぽやんしてて大丈夫なんか?って感じもしてたけど」
整った顔立ちの東宮が、たまに幼げな顔を見せながら饅頭を頬張る姿を思い出すと自然の頬が緩む。
「甘いものが好きなのかな。あの人と話しするの結構楽しかったなー」
明日から、また男の子として宮中に出勤することになるのだ。
身分の高い東宮ともう一度話できるなんて思ってもいないけれども。
もしかすると、また運良く顔を合わせる事ができるかもしれない。
「ま、しばらくはこの世界に慣れることを優先で考えよ。宮中での仕事もなかなか面白いしね」
そう言って、綾香は立ち上がり寝室へと戻る事にした。
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