第3話 宮中内裏で短期OLアルバイト!?
翌日。
義父の計らいで男装姿となった綾香は、義父と共に牛車に揺られ一路宮中へと向かった。
ガラゴロと牛に引かれた牛車は馬とも比べればなんとものんびり緩やかな進みである。
畳を敷かれた牛車内は思ったより広く、大人の男である父と小柄な体格の綾香が乗っても十分な広さがあった。
ゴロゴロと揺られながら、窓から見える京の都を眺めながめる綾香に、大納言の義父は穏やかに声をかけた。
「外の景色がそんなに珍しいかい?」
義父の言葉に、綾香は一頻り景色を見た後に窓をそっと閉めて向き直った。
「こちらに来て初めて見た風景でしたので……。それでも、思ってたよりきれいな街並みで驚きました」
「そうか」
宮中へと向かう街並みは、路面は当然ながら舗装されておらず土がむき出しになっている。
だが、内裏が近い事もあって、比較的有力者たちが住まう邸宅のあるこの周辺は、歴史の教科書で見ていたよりも美しく景観が整えられていたのだ。
はっきりとした受け答えをする娘の姿に、義父は満足そうにうなずいてみせた。
「姫のその恰好も、随分と似合っておるのう。傍目から見れば十分に男に見える。宮中では姫の事は、私の従兄妹筋から引き取った養子ということにしてある。そうだな……名は……」
うむうむと設定を考える義父は、男の姿の綾香を一通り眺めて開いていた扇子をぱちりと閉じた。
「そうだな。宮中でのそなたの名は、椿としよう」
「つばき……ですか。わかりました」
父に名付けられた新たな名を何度か口ずさみ、綾香は了承したようにうなずいて見せた。
ゆっくりと進んでいた牛車が、がたりと音を立てて静かに停車した。
出入口に降ろされていた御簾がするすると上がると、黒い直衣を身に纏った男たちがわらわらと行き交う宮中に到着したことを知った。
数台の牛車が周りに停車しており、父と同じように黒の直衣を来た官吏や、綾香と同じように水干姿の少年たちの姿も幾人か見かける事ができた。
「おはよう。大納言殿」
綾香が牛車から降り立ち、宮中の入口に足をかけたとき、正面からさわやかな声がかかった。
「これは、お早うございます。中務卿宮(なかつかさきょうのみや)様」
義父がうやうやしく一礼する姿を見て、綾香も慌ててぺこりと頭を下げた。
「おはようございます!」
勢いよく挨拶した綾香に、目の前に立つ青年は微笑まし気に目元を緩めて見せた。
「はい、おはよう。随分と元気のよい少年だね。彼が、昨日報告してくれた新人君かい?」
綾香の事を示す会話におずおずと顔を上げると、優し気な笑みを浮かべた品のよさそうな好青年がそこにいた。
義父と同じく黒の直衣を身に着け、ぱらりと雅な扇子を広げて口元を隠すその姿がとても似合っており、思わず見とれてしまったほどだ。
(うわ!超イケメンじゃん……!宮中ってこんな人ばっかいるとこなの?)
声もなく見とれてしまう綾香の頭を、義父は微笑みを浮かべたまま優しく一撫でした。
「さようでございます。椿。こちらは宮中の中務省を取り仕切ってらっしゃる中務卿宮様だよ」
「中務卿宮様……。初めまして。大納言家にてお世話になっている椿と申します。よろしくお願い致します」
綾香は先ほど義父から与えられた名を口にし、礼儀正しく一礼をしてみせた。
品良く一礼してみせる綾香に、中務卿宮は満足そうにうなずいてみせた。
「とても利発そうな子だね。どうぞよろしくね。今日一日、元気に励むんだよ」
そう言って、中務卿宮は人のよさそうな笑みを浮かべ数人の御付きの者たちを従えて、ゆっくりと歩き去って行った。
上品な所作で歩き去る宮様の横顔を眺めながら、綾香は隣にいた義父に声をかけた。
「ねえ、さっきの宮様って、もしかして今の東宮様と御縁があったりする?」
ひそひそと小声で声をかける娘に、義父軽くうなずいて見せてから靴を脱いで寝殿の中に上がった。
綾香も草履を揃えて脱ぎ、職場へと歩いていく大納言の後ろをついて歩いた。
「よく気が付いたな。中務卿宮様は、現東宮様の弟にあたるお方だよ。御年22歳でいらっしゃる」
「へー……そうなんだ」
「宮様」ということは皇族筋の宮家に当たる人だ。
現世でも同じように「宮様」と呼ばれていた雲の上の人達の事を思い返し、綾香は義父に軽く笑って見せた。
とてとてと板張りの床を歩きながら、広々とした寝殿の中をきょろきょろと見回した。
多くの大人の男たちが朝の挨拶を交わしながら職場として割り当てられた部屋へと入っていく様は、現世でもよく見かけていたOL時代の職場とさほど変わらない。
時代が変わっても、こういう場面は変わらないものなのだと、妙に感心してしまう。
「内裏は広いからなあ。あまりうろうろして迷子にならないようにな」
「はぁい」
大納言の義父は娘を伴い。割り当てられている室内へと入っていった。
義父と共に入った一室は約二十畳ほどの広い床張りの部屋だった。
上座となる場所だけ四畳ほどの畳が置かれ、あとは二列に分かれて長机が六台置かれ、黒直衣を来た年齢豊かな男性たちが席について談笑していた。
その光景は、まるで授業を受ける寺子屋の様を擁していて、綾香はこれが平安の世の職場なのかとまじまじと辺りを見回した。
「おはようございます、大納言殿」
「ああ、みんな、おはよう。今日は昨日話していた我が家で世話している子を連れてきた」
「ほうほう。利発そうなお顔でいらっしゃる」
微笑まし気に出迎えてくれた男性陣達に、綾香は礼儀正しく一礼してみせた。
「おはようございます。大納言家にお世話になっております、椿と申します。よろしくお願い致します!」
威勢よくはきはきと自己紹介をするのは、社会人として当たり前の事だ。
ぴっと背筋を伸ばして前に座る同僚の方々に視線を合わせれば、皆驚いたようにぱちぱちと拍手を贈ってくれたのだ。
「大納言どの、とても良いお子さんを引き取られましたな。これは将来有望ですな~」
わいわいと綾香の事を褒める寮内の同僚たちの様子にほっと肩を落とし、ぺこりと一礼をしてから上座に座る義父の元へと向かった。
隣に座るように促され、今日の職務となる書類を指しながら、さっそく綾香に仕事の指示を行い始めた。
ふんふんと説明を聞きながら、渡された料紙を検分し、内容ごとに仕分けいく。
世界の理が身体に刻み込まれているせいか、筆で文字を書くことは未だに苦手ではあるが、崩し文字でかかれた書類は不思議と読み取ることができた。
てきぱきと書類をさばきながら、綾香はOL時代で培った事務仕事を思い出しながら、午前中いっぱい大納言の仕事の補佐を務めたのだった。
昼休みとなり、部屋に配膳された昼食を父と取り、中休みの間であればと内裏内の中庭での散歩を許可された。
休みが終わると鐘が鳴る旨を聞き、本来ここに来た目的を思い出して、綾香は一人内裏の中庭を少し歩くことにした。
自宅である大納言邸と同じように、大きな池やら美しい生垣が配置され、どこか座れそうなところが無いか探しながらぽてぽてと歩いていく。
そして、池のほとりにやってきて、綺麗な芝生を見つけてよっこらせと腰を下ろした。
今日はすこぶる良い天気だ。
辺りを見回せば人気は無く、空を飛び回るトンビの鳴き声と時折池で撥ねる魚の水音くらいしか耳に聞こえなかった。
懐に忍ばせていたオヤツのお饅頭と竹筒の水筒を取り出して、綾はのんびりとお饅頭を口にした。
母が手作りしたお饅頭は薄皮仕立ての茶色いもので、中の小豆の味も好み通りの甘さだった。
「やっぱりお母さんの手作りオヤツは美味しいな・・・。懐かしいや・・・」
幼い頃に良く作ってくれたホットケーキやプリンの味を思い出しながら、のんびりとした景色を眺めつつ綾香は気を緩めてまったりする。
膝に置いた料紙に残ったお饅頭は残り三個。
一つを食べ終わってから、次に手を伸ばそうとしたとき、ふいに後ろから声がかかった。
「美味しそうなものを食べてるね」
「え?」
涼やかな声音のそれは、大納言の義父でも朝に会った中務卿宮のものでもなかった。
無意識に振り向くと、そこには淡い水色の直衣に薄いグレーの烏帽子をかぶった青年が柔らかく微笑みながら立っていた。
「ねえ、よければ私にも一つくれないかな?」
口元に扇子を当てながら。にこにこと笑う青年は、腰を下ろしている綾香の隣に遠慮なく座り込んだ。
自然な雰囲気ですぐ隣にきた青年に、綾香は不審げな表情を見せながらも膝に置いた料紙を両手で掲げて見せた。
「ただのお饅頭ですよ?」
「わあ!本当にくれるの?ありがとう!」
そう言って、青年は扇子を畳んで嬉しそうに一つ饅頭を取り上げた。
茶色い温泉饅頭のような菓子を疑いもなく口に運び、もぐもぐと咀嚼する様を眺めながら、綾香も釣られて饅頭を摘まみ口にした。
「もぐもぐ……ごっくん……。ああ……!とても美味しいね!これ、どこのお饅頭なんだい?」
「自家製ですよ。うちの母の手作りなんです」
「母君が作られるのかい!?凄いね!」
そう言って驚く青年に、綾香は手元にあった竹筒を渡した。
「お茶入ります?まだ口付けてないんで、どうぞ」
「わ、気が利くねえ。頂くよ」
そう言って、竹筒を受け取り喉を潤す青年をよくよく観察してみた。
切れ長で涼やかな目元に、整った鼻梁に薄い唇。端正な顔立ちは、なんとなく朝見かけた中務卿宮を思い出した。
そして、この内裏で色付きの直衣を着ている人物が、なんとなくここで仕事している官吏ではないのかと思い始めた。
おずおずと目の前の青年に視線を合わせると、彼は手にした竹筒を綾香に返却した。
「お茶ありがとう。とても美味しかったよ」
「それはどうも……」
今の自分よりも明らかに大人と思える青年が、まるで少年のように屈託なく笑うものだから、綾香は気を張らなくても大丈夫なのかと警戒心を解いた。
「まだお饅頭食べますか?」
「いや、もういいよ。さっき、お昼をたくさん食べたし、今もらったお饅頭でもう満足だよ。ありがとうね」
そう言って、青年は体育座りのように両足を抱えてにっこりと笑った。
「お兄さんは……ここの官吏の人ではないんですか?」
「なんでそう思うの?」
「だって、着ている服の色が違うもの」
綾香は残ったお饅頭を料紙で包んで懐にしまおうとする。
「君の名前は?」
青年がふんわりと笑いかけながら問うものだから、綾香は父から与えられた名を口にした。
「椿です。大納言家でお世話になっています」
「椿……。大納言の家の子なんだ。へー……」
そう言って、青年は綾香の瞳をじっと見つめてくる。
「良い名だね。でも、君の雰囲気ってなんだかちょっと変わってるね」
「どういう意味です?」
男らしくなく、なよっちいっていう意味なのか?と綾香は不審げに眉をひそめてみせた。
「あ、怒った?違うよ、けなしてるんじゃない。可愛いなって思っただけ」
「は?」
男としてここに来てるのに、同姓からそんな事を言われてしまうと複雑な気持ちになる。
「お兄さん、男の子が好きなの?」
「まさか!」
不審げな顔をしながら言う綾香の言葉に、青年はびっくりしたように瞳を丸くさせた。
「違うよ!」
慌てて居住まいを正す青年に、綾香はおかしくなって笑みを零した。
「お兄さん面白いね。くすくすくす」
「……そんな事言われたの、君が初めてだよ」
そう言って軽く頬を膨らませる青年に、綾香はもう一度微笑んで見せた。
すると、遠くで鐘の音がカーンカーンと鳴り響いた。
「あ、お昼休み終わりだ」
綾香はすくっと立ち上がって尻についた草をぱぱぱっと取り払った。
そして、まだ芝生に座っている青年に、竹筒のお茶と残っていたお饅頭を包みごと押し付けた。
「お兄さんにあげる。またね!」
そう言って、くるりと駆けだした綾香を、青年は手元に押し付けられた饅頭と竹筒を抱えつつ、和やかに微笑みながら見送った。
「物怖じしない子だったな……。大納言家由縁の子……か。ふぅん……」
青年は口元で扇子で隠しながらも、綾香が走り去った方向を微笑まし気ながらいつまでも見つめ続けた。
午後からの執務が始まり、朝と同じように大納言の義父の隣で仕事をしていると、部屋の外から何やらがやがやと騒がしさが聞こえてきた。
部屋の仕切りとして御簾が下ろされていたが、壁ではないので周りの声とかは案外筒抜けだったりする。
「なんでしょう……?なんだか騒がしいですね」
そう言って、手元に集めていた書類を父に手渡すと、義父も顔を上げて御簾の方へと顔を向けた。
室内にいた官吏が御簾を開けて外を確認すると、慌てふためき大納言と綾香へと視線を投げた。
「だ、大納言様!」
「どうした?」
慌てる同僚の姿に、父は眉をひそめて筆を止める。
御簾の傍にいた官吏も、御簾を上げて外の様子を伺うと、慌てて立ち上がり、するすると御簾を巻き上げたのだ。
そして、ひょこりと部屋に顔をだした来客人の顔を見て、綾香は驚いて「あ!」と声を上げた。
「やあ。お邪魔するよ、大納言」
口元に扇子を当ててにっこりと笑って見せたのは、先ほど庭で会った青年だった。
水色の直衣に薄グレーの烏帽子。そして雅な扇子はさっきまで見かけた青年の井出立ちそのままなのだ。
「とっ!東宮様!」
「は?」
慌てて平伏する父や周りの官吏たちの姿に、綾香は心底面食らってしまう。
だって、見渡せば御簾の隙間から見える隣の官吏たちも驚いた様子でこちらの寮を平伏しつつも伺っていたのだ。
「ふふっ。皆楽にしてもらってよいよ。ただ単に見回りにきただけだからね」
そうして愉快そうに笑う青年は、大納言の隣で面食らっている綾香に視線を移した。
「ああ、見つけた。やっぱりここにいたんだね」
そう言って、部屋に入ってきた彼は、とてとてと綾香の目の前までやってきた。
「これを返しに来たんだ。ちゃんと洗ってきたからね」
と、ぽかんと座ったまま見上げている綾香に、先程の竹筒を手渡した。
「え……。あ……はい……」
ぽんと手渡された竹筒と、目の前にいる青年を見上げて、綾香はぼんやりと口にする。
「東宮……様?」
「あ、綾……、いや、椿!」
恐れ多くも東宮に声をかける娘に、大納言は慌てて顔を上げて綾香の肩に手を置いた。
「構わないよ大納言。楽にしてくれないか」
やんわりと綾香への叱責を回避する東宮に、大納言も居住まいを正して綾香から手を引いた。
未だに座っって竹筒を抱えたまま、驚いた表情で見上げる綾香に、東宮はにっこりと微笑みかけた。
「さっきのお饅頭、全部食べたよ。とっても美味しかったから、もう一度ちゃんとお礼を言いたいなって、会いに来たんだ」
「え……」
そう言って、東宮は手首のたもとからごそごそと何かを掴み取り出した。
(なんでみんな袖口からモノを出すんだろ……。あそこは四次元ポケットなのか……)
とかぼんやり綾香は脳裏に思い浮かぶが、まさか、ここに来た本来の目的である人を信じられないような表情で見上げることしかできなかった。
だって、自分の結婚相手となる人が、こんなにもイケメンで、しかも人のよさそうな顔をして目の前にいるのだ。
帝の息子という最高位の地位にいる人が、こんなところで簡単に会えてしまうのかと、びっくり驚く事しかできない。
驚いたまま声の出せない綾香に、東宮はにっこりと笑ってみせながら、綾香の目の前でそっと膝を折り屈みこんだ。
「ね、手を出して」
「え……」
優しい声音に釣られて、綾香は空いていた方の腕を上げ、おずおずと片手を差し出した。
綾香の小さく白い掌に、東宮は両手でその手を静かに包み込んだ。
すると、綾香の掌に何か小さな物が乗せられたことに気づいた。
東宮の手がゆっくりと離れていくと、綾香の掌に残されたのは淡い水色の生地で作られた小さな袋と金色の鈴だった。
その生地は、目の前にいる東宮の直衣の色と同じもので、綾香はわけもわからず掌のモノと東宮を見比べた。
「お饅頭のお礼だよ。お守りに使ってね」
そう言って、ぽんぽんと頭を撫でられて、目の前の東宮はするりと立ち上がった。
「ご用件はお済になられましたか?」
と、別の声音が聞こえて、綾香はその方向に顔を向けた。すると、綾香のすぐ傍の通路に佇む黒の直衣姿の青年が東宮に声をかけたのだ。
「中務卿宮……さま?」
「やあ、椿。こんにちわ」
巻き上がった御簾の柱に寄り掛かる青年は朝出会った中務卿宮その人だった。
「東宮が珍しく内裏を回りたいっていうから付き添ってたんだ。まさか、君が目的だったとはね」
そう言って、扇子を口元に当てて片目でぱちりとウインクしてみせるその姿に、綾香は「はぁ……」と気の抜けた声で返す事しかできなかった。
「東宮、そろそろ戻りますよ」
「わかったよ宮」
中務卿宮の声かけに、綾香の目の前にいた東宮は腰を上げて綾香の横をすりぬけた。
すると、綾の横を通ったときにふわりと香る薫りに気づいて、手にした袋からも同じ匂いを放っている事に気づいた。
「またね」
そういって、東宮は中務卿宮と共に寮内から立ち去っていった。
まるで嵐が去ったかのように静まり返った寮内だったが、やがて我を取り戻した大納言が綾香の両肩を掴んで揺さぶった。
「あ……綾……!じゃなかった、椿!と、東宮様に一体何をしたんだ!?」
ゆさゆさと揺さぶられて目が回りそうになるものの、綾香自身も一体何が起きたのかよくわかっていないのだ。
そして、揺さぶりから解放されたのちに、手にしてた竹筒と手渡された鈴がチリリとなってようやく言葉を発した。
「さっきお昼休みに、中庭で会ったんです……さっきの……人と……」
掌に残る水色の袋からは、今もなお、あの青年の香りが漂っている。
「あの人が、東宮様……」
神妙な顔つきで答える大納言は、綾香の手に載せられた小袋を見つめて、ふっと微笑んだ。
「それは香袋といって、袋の中に香のついた香料を忍ばせてあるんだよ」
物珍しそうに眺める綾香に、大納言の義父は肩を下ろして大きくため息をついた。
「何があったかよくわからないが、とにかく東宮様に気に入って頂けたようだな……よかったな」
「そう……なんだ……」
ほっとした表情の大納言の言葉をどこか遠くで聞きながら、綾香は暫しの間、東宮が残していった香袋をずっと見つめ続けていた。
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