バトルフィールドコンビニエンス
白川津 中々
■
コンビニは戦場なのである。
「俺はお弁当温めますかと聞いているんだ!」
入店早々
「イートインコーナーでの飲酒はおやめくださいつってんだろハゲ!」
今度は
「私の国貧しい。けどトイレみんなできる。日本人豊かなのになぜトイレ下手なのか。親も先生も勉強しか教えてくれないのか。馬鹿だね」
留学生のアウン・チョウ・トゥ・ナイン・ウィンくんもトイレ清掃で大激怒。余程理解できない用便をされたに違いない。本当にトイレは綺麗に使ってほしい。
さて、一瞬も気が抜けないこの修羅場では物品を購入するのも一苦労だ。特に彼らはバイトである。店の売上なんざ知ったこっちゃない。好き嫌いで売る売らないを決めることだって可能。故に、買い物の流儀作法を守る必要がある。
まずはチョイス。購入は五品以内で嵩張るものを入れない。四角いカップやきそばなど言語道断。特殊包装が施されている菓子など死刑である。素早くポテチとコーラ、それとサラダチキンをカゴに入れるのが俺の正解だ。
次に動線。品出し中のスタッフは勿論、他の客の邪魔をするような行動も御法度。購入する意思が固まったらウロウロせず所定の位置にて人一人分を開け一時停止。レジカウンターが開いているからといって自分で突っ込んでいってはいけない。会計はバイトのタイミング一つ。焦らずに声が掛かるまで待つ。
「こちらにどうぞ!」
この一言でようやく前に進む事が許される。焦らず、迅速に前へ踏み出してカゴを渡す。
「袋とチキンのプレーンください」
レジ袋とホットスナックを求める際は相手がバーコードを読み取る前にはっきりとした声でお願いしなければならない。蚊の鳴くような注文では無視されてしまうため注意が必要である。ちなみにホットスナックは一見嫌がられそうだがそれも仕事のうち。業務の範疇であれば彼らもしっかりと対応してくれる。
「合計583円です!」
「支払いはクレジットカードでお願いします」
「はい!」
タッチ決済後レシートを貰い、それを自ら廃棄箱に入れて完了。我ながら完璧なるコンビニ仕草。これで気持ちよく帰れるというもの。さぁ、自動ドアをくぐろう。
「お客さん!」
呼び止められた!
何かしくじったか……!
「こちらのレシート! クーポンになっていますが捨てられますか!?」
「あ、いえ、いただきます……どうもありがとうございます」
「ありやっす!」
……退店。
最後の最後で少しだけ不覚を取ったが、鏑木くんの心遣いに感謝である。そうとも、確かに口は悪いし自分達の匙加減一つで商品売買の可不可を決めてくるような連中だが、彼らとて人の子。粗相さえしなければ真心のままにしっかりと対応してくれる。親しき中にも礼儀あり。親しくない仲ならなおの事。仁義忠孝礼を尽くす事が人道なり。今日はいい日だ。さて、クーポンは何が安くなるのかなと。しっかり確認。
カップ焼きそば(大盛)無料引換券。
……これは使わず、しっかりしまっておこう。
バトルフィールドコンビニエンス 白川津 中々 @taka1212384
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます