第2話 異世界召喚

「ねえ、しずく。放課後どこ遊びに行くー?」

「ごめんね。先生に呼ばれてるから今日は遊べないの」

「ええ〜。これだから委員長は〜。だったら用事が終わるまで待ってるー」

莉世りせちゃん……毎日のように私と遊ぼうとするの、少しはやめない?」


 授業が終わり、放課後になった現在。

 高校一年生のこのクラスでは、ガヤガヤと友人たちとの会話を弾ませたり、部活に向かったり、帰宅しようとしている人もいた。


 その中で一人、自分の席でぼーっと教室を眺めていた男子生徒がいた。

 この春、高校生になったばかりの少年――瀬古遊志せこゆうし、十五歳だ。


「皆友達がいるのに、俺だけ一人……やっぱり中学でもぼっちだった俺は、高校でも一人か……」


 今の現状を静かにつぶやき、これからの未来を憂う。

 長くぼっち生活を続けてきた遊志だが、趣味はアニメ漫画ラノベとオタク全開。

 中学の時から続けて友達ができていなかった。


(ここが異世界だったら、一人や二人、テンプレで友達ができたりするかもしれないのにな……)


 あり得ないことを想像することで、遊志は現実から目を背けた。

 そんな時だった。


 突如教室の床に青白い光が走り、出現した線が徐々に形を無していく。

 その光の線は遊志の記憶の中にあったものと似ていて、次第にそれが現実だと目が釘付けになった。


「えっ、なに!?」

「これなんだ!?」

「皆、落ち着いて!」

「こんなの落ち着いていられるわけ……っ」


 クラスメイトたちから声がどよめきが起こる間に、床に現れた光の線――魔法陣が完成してしまう。

 そして、一瞬のうちに遊志たちは、その場から姿を消した。



 ◇◇◇



「ん……ここは…………」


 気づけば遊志たちは見知らぬ森のど真ん中にいた。


 近くには教室にいたクラスメイト十数名が遊志と同じようにいて、今の状況に困惑していた。

 クラスの全員がいるわけではない。放課後、教室に残っていた生徒だけがこの場所に飛ばされたらしい。


『――異界の勇者たちよ』


 そんな時、透き通るような美麗な声が耳に響いた。

 それは、遊志だけに聞こえたわけではなく、全員に聞こえた声らしい。


「あ、あなたは誰なんですか! この状況は――!」


 このクラスの委員長である篠坂雫しのさかしずくが先んじて声を上げた。


 昔から正義感が強く真面目で、そして優しい性格の美人。遊志の幼馴染でもあった子だ。――だが、高校生になった今はあまり会話をすることもなくなった。

 いや、何度も話しかけられてはいたのだが、自分は彼女に見合わないと思い、いつも逃げてしまっていた。

 彼女は友達も多く、カーストで言うと上位の人物。一人ぼっちの遊志とは正反対のポジションに位置しているのだから。


『私はミスティ……あるところでは女神と呼ばれている存在です』

「女神様……? 」


 女神ミスティの言葉に雫は続けて質問する。


『この世界は、あなた方がいた地球とは全く異なる世界『アルスフィア』。あなた方は、この剣と魔法の世界で魔物や人の悪意から平和に過ごす人々を守る勇者となるため、呼ばれたようです』


(魔物だって? まさか、俺たちは異世界召喚されたっていうのか?)


 ラノベ知識があった遊志は、即座に今の状況を理解した。


 ただ、気になるのは『呼ばれたようです』といった言い方。

 ミスティが呼んだというわけではないらしい。


「いきなりそんなことを言われても……」


 雫を筆頭に、他のクラスメイトたちも未だに驚きを隠せない。


『あなた方には既に特別な力が宿っています。その力を使い、この世界を救ってください』


 魔物、特別な力……これも遊志の知識からすれば、理解してしまうキーワード。

 つまりこの先、死ぬかもしれない可能性だってあるということになる。


『ステータス、と唱えてください。あなた方の現在のジョブや能力値が表示されるでしょう。まずはその力を使いながら、この森から一番近い街を目指してください。――それでは、あなた方の幸運を祈っています』


 そう言い終えたあと、ミスティの声がぱったりと消えてしまった。


「ま、待って! どうすれば私たちは元の世界へ帰れるの!」

『――――――』


 雫は最後に、誰しも聞きたいことを叫んだ。

 だが、ミスティからの返事はなかった。


 雫たちは沈黙ののち、騒ぎ出すこととなった。

 ほとんど、説明のないまま異世界へと放り出されたのだ、そうなるに決まっている。


「こ、これから俺たちどうするってんだよ!」

「うそでしょ……私たち何も持ってないよ!?」

「まだ実感が湧かない……ここって本当に日本じゃないの?」

「帰りたいよぉ……」


 だが雫は、これからすべきことを声を大きくして伝えた。


「みんな! まずは、女神様が言っていたことを振り返ってみよう! とにかく私たちは一番近い街に行かなきゃいけない! だから『ステータス』というのを使って、自分の力を確認してみよう!」


 入学当初からこのクラスを引っ張ってきた存在なだけある。

 自分も混乱しているはずなのに、雫は皆のためを思って行動していた。


「そ、そうね! 何かしないとはじまらないっ」

「みんな、委員長の指示通りにしてみよう!」


 そして、クラスメイトたちはこぞって『ステータス』と唱えはじめた。

 遊志も同じように唱えてみる。


「ステータス!」


 言った瞬間、少し恥ずかしくなったが、そんな気持ちになったのは遊志だけらしい。


 すると突然、半透明なホログラムボードが目の前に表示された。

 ただ、周囲を見てみても何も浮かんでおらず、自分だけに見える仕組みのようだ。


 遊志はステータスの内容を確認してみた。


「…………なんだ、これ」


 ラノベを読み漁っていた遊志が想像していたのは戦闘に使えるようなジョブ。

 例えば、【聖騎士】とか【賢者】とか【アサシン】とか……そういったものがラノベではテンプレで、授かるはずのジョブだった。


 なのに、遊志のジョブは――


「――【美容魔法使い】ってなんなんだよ……」


 意味のわからないジョブ名に混乱することとなった。








――――――


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美容魔法で異世界を生き抜く〜綺麗にした分強くなる《美容魔法》で悩みを解決していたら美少女達から追いかけられるようになった件〜 藤白ぺるか @yumiyax

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